6枚目【約束しちゃった!!】
日曜日の午後。
外はあいにくの雨。
別に休日だからといって出かける予定もなく、家で一日漫画――読書をする予定だった俺に、
『これから明日のお弁当の食材を買い出しに行くから、あんたもついてきなさい』
基本的にパンツ契約は学校がある日のみのはずなんですが......なんて弁当を作って
もらっている身としては言えず、ベッドから気だるい体を起こし、軽く身支度を始めた。
「やっと来たわね。雨の中、レディを待たせるなんていい根性してるじゃない」
玄関を開けた先には、渚が黒のTシャツにデニムのショーパンという、活発な彼女らしいラフな私服姿で文句ついでに出迎えた。
主の急な休日の呼び出しにも
「それじゃあ行きましょうか」
そう言って渚は、俺の横にピタリとくっついた。
ところでこいつ、なんで傘持ってないんだ?
「ほら、いくらショーパン履いてるとはいっても、何かの拍子で見えちゃうかもしれないでしょ? 両手が塞がってると不安なのよ。だからあんたの傘に入れなさい」
いや、だったらロングパンツ履いて来れば事済むのでは? と当然な突っ込めをすれば――
「うっさいバカ! 早く行かないと特売の玉子が売り切れちゃうでしょうが!」
頬の赤い渚は俺の右腕を思いきりひっぱたいた。
こうして恋人同士でもない俺と渚は、何故か相合傘をしながら近所のスーパーまで行くことに。
***
「......どうしてスーパーの店内って、あんなに一年中冷蔵庫の中みたい寒いのよ」
買い物を終え店内から出てきた渚は、寒さで体を震わせていた。
「そんなの食品を腐らせないためだってことくらい知ってるわよ。料理女子を舐めないでよね」
わかってるんだったら、俺の言うこと聞いて防寒対策してくればいいのに。
何を意地になって近所のスーパーに行くのに気合を入れているんだか。
女子は理解できん。
「え? ちょっと何よ?」
俺は一旦傘と食材が入ったビニール袋を渚に持つように言うと、羽織っていた上着のシャツを渚の肩にかけてやった。
「.........ありがとう」
雨音でかき消されそうなくらいの小さな声が渚が呟いた。
まぁ、夏物で生地が薄いからあまり防寒の意味はないかもしれないが、無いよりかはマシだろう。
これに懲りたら次からはちゃんと防寒対策してから行くんだな。
「あんた、夏休みの予定はもう決まってるの?」
お互い数分間の無言のあと、信号待ちをしているタイミングで渚が訊ねてきた。
陰キャの夏休みのなんて漫画やアニメにゲーム三昧だと、昔から相場は決まっているではないか。
「ハァ、聞いた私が愚かだったわ」
呆れた様子で大きくため息をつき、隣の俺に視線を向けてこう言った。
「――終業式が終わった次の日にある花火大会、二人で一緒に行かない?」
俺の予想では、終業式の日におそらく渚のパンツを履けない呪いは解ける。
なので花火大会の日には俺と渚の関係はパンツと主ではなく、もとの疎遠だった幼馴染に戻っているはずだ。
契約も切れ、それ以上無理に付き合うことはないというのに俺は――
「本当!? いま言った言葉、証拠代わりに録音するからもう一回言いなさい」
渚は嬉々とポニーテールを揺らしながらスマホを取り出し、俺の顔に近づけて認知を録ろうとする。
そこまでしなくても絶対バックレたりしないから落ち着け。
「花火大会の日までに梅雨明けるといいわね。仮に雨で中止になったとしても、あんたの部屋で花火大会するから、そのつもりで」
にへらと笑って、青になった信号を渡り始める渚に、俺は暑さとは別の嫌な汗をかきつつ隣をついていった。
......ところで、渚が前チャック無しのショーパン履いてる理由って、やっぱり毛
を挟まないための安全策なんだろうか?
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