吐き出されるのは愚痴かUFOか
長月瓦礫
吐き出されるのは愚痴かUFOか
流星が穿たれた。
巨大円盤から飛び出てすぐに粉々に砕け散り、地上へ降り注ぐ。
潜むべき場所にいる魔物がついに人類に牙を向いた。
空を覆う銀色は円盤の一部分でしかない。
「予定が狂いに狂ったもんだから、ついにブチ切れ遊ばせたか?」
「カインさん、意味分かんないです」
城砦に設置された大砲へ弾を装填し、小型の円盤を狙い打つ。
奴らはもっと早めに地球へ侵攻する予定だった。
宇宙はかなり広大で観測しきれない部分が多い。
観測している宇宙がすべてではない。
銀河系のはるか遠くにある惑星からコイツらはずっと見ていた。
地球外知的生命体とでもいえばいいのだろうか。
地球よりも発展した文明を持ち、星野科学力をもってすれば不可能という言葉は消し飛んでしまう。
しかし、とんでもない力を持ったこいつらでも新しく発見されたものには弱い。
それが例の感染症だ。
地球で猛威を振るった感染症は落ち着きを見せているが、地球を調べつくした奴らにとっては予想外だったようだ。ウイルスは円盤内に侵入し、猛威を振るった。
最も、地球より医療技術は進歩しており、対応はかなり早かったらしい。
宇宙人にも効果がある感染症ってただのバイオテロじゃねえかよ。
感染症自体は偶然の産物だったとはいえ、バカなんじゃねえの。
カインは散々毒づいた上で、この飛行物体と対峙している。
文句を言っている暇があるならどうにかしろと言われてしまった。
円盤から宇宙人が吐き出され、城砦に取り付けられた大砲で迎撃する。
追尾機能がついた矢を放ち、確実に撃ち落とす。
あの円盤は巨大すぎてどうにもならない。
核ミサイルでも撃たない限り、宇宙人はどうにもできない。
国同士でもめているもんだから、永久に解決しないだろう。
「あの中に動物なんかもいるんかね?」
「動物ですか?」
「まあ、家畜的な存在だよ。食事するために飼われている動物」
カインは空を見上げた。
巨大円盤が襲来してから数か月が経った。
円盤内に貯蔵庫があり、持久戦に持ち込んでいるとのことだ。
空を覆いつくさんばかりの巨大な円盤の中に牧場があってもおかしくはない。
居住区もあるという話だ。併設されていてもおかしくはない。
流れ星が落ちた。細かい雑魚を相手にしていてもしょうがない。
本体へ乗り込んだほうが早いんじゃないかと思う。
「……骨と内臓と肉を分別するシステムってあっちにはないのかね?」
「宇宙人を食べるんですか?」
「アイツら食べられるの?」
「知りませんよ。ていうか、来る前に撃ち落としちゃってますし」
円盤がいなくなれば、この人の雑談に付き合うこともなくなるのだろうか。
口は止まらない。筒に弾を詰めて撃ち抜いていく。
「魚を捌くときとかそういうのを綺麗に分けられれば、こっちの手間が減るよなーと思っただけ」
「食べるつもりなんですか?」
「別に」
「……料理人としてその発想はどうなんでしょうね?」
「俺は効率を求めたいだけなんだけどな」
おしゃべりは止まらない。
文句を垂れ続けながら、UFOは犠牲になっていく。
またひとつ、流れ星がきらめいた。
吐き出されるのは愚痴かUFOか 長月瓦礫 @debrisbottle00
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