第10話 エピローグ

 ルシアは特に彼女を眼中に入れていないのでまだ良しとできる。問題はライラであり、ぶつぶつと呟きながら短剣を腰に忍ばせているではないか。


「あの、ライラさん?」

「私はレストが行くのを止められなかった。レストを守らなきゃいけないのに変な女に襲わせちゃった。大丈夫、まだ取り返せる。そのためにはもっともっとレストと繋がらなきゃ! 肉親にならなきゃ!」


 ライラは目から光を失っており、焦点が定まっていない。


「ねぇ、ライラっていつもあんな感じなの?」

「ほんとルシアはオレ以外に関心が無いな」

「もうそいつと話さないでレスト。私が今日からあなたの妹になるんだから!」

「こんな奴じゃなかったことくらい分かれ」


 ライラは生真面目ながら努力家で、オレのために強くなろうと頑張ってきた子である。そんな彼女がここまで壊れてしまった原因は間違いなくオレにある。


「その勇者がレストの人生を狂わせたの! でも安心して。お兄ちゃんと同じ勇者パーティであるこの私、ライラが偽物の妹を殺してお兄ちゃんを取り戻すんだから!」


 ライラは短剣を腰に据え、ルシアを殺そうと突撃する。その殺意は本物であり、ルシアが少しでも動けば命は無いだろう。


「いい加減にしてよ」


 しかし、ルシアはそんなライラを片手で止めた。


「離せ!」

「ライラ、どうしてそこまでしてレストさんを欲するの?」

「うるさい! 私のお兄ちゃんの妹を騙る偽物め!」

「私が? ふーん」


 ルシアは無表情のままライラを見つめると、そのまま蹴り飛ばす。ライラは吹き飛びながら短剣を手放し、地面を転がっていく。


「ライラ、ちょっと落ち着けって」

「お兄ちゃんがそう言うなら」


 ライラはオレの言うことを聞くと、不気味にも直前までの怒りが無くなり、短剣を腰に納めた。これはルシアの殺害から手を引いたと見ていいのだろうか。


「レスト、優しい」

「ライラも大切な家族だからな」

「ありがとうお兄ちゃん、好き!」


 ライラは嬉しそうな笑みを浮かべ、こちらに手を伸ばしてくる。もう自分に暗示を掛けているかのごとく、彼女は自分のことをオレの妹だと言って譲らない。

 ここで否定するとまたルシアを襲いかねないので、やんわりと病んだライラの妄言を受け止めつつ、彼女の手を優しく握った。


「えへ、お兄ちゃんの手あったかい」

「それなら良かったよ」

オレは苦笑いしながら頭を撫でてやる。

「お兄ちゃん、もっと撫でてほしいなぁ」

「仕方ない妹だな」


 オレは半ば諦めながら甘えた声を出すライラをあやすように撫で続ける。


「あ、ずるい! 私も撫でて!」

「はいはい」


 ルシアも同じように撫でてやると、二人は幸せそうな顔を浮かべた。


「お兄ちゃん、大好き!」

「お兄ちゃん、愛しています」


 今日、オレに二人目の妹ができるのだった。それからはヤンデレたちに囲まれながら、楽しくも暑苦しい生活が待っているのであった。

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勇者パーティから追放されたステータスオールFのオレ、実はヤンデレ妹勇者のストッパーだった ヤンデレ好きさん @yandese-love

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