第19話 名付ける
- カモミール -
コズミックとの関係を伝えた後は、特にこれといってなく、わたし達はまた旅路に戻った。
ルルーに関しては、コズミックが彼女を嫌ってるので、ギスギスとした旅路は遠慮したいので、そのまま残って貰った。
悪いとは思ったけど、わたしとしては、コズミックが優先だし、新しいお嬢様と仲良くしてるみたいだし、わざわざわたしの元に来る必要はないかな、って。
……もし、わたしを助けるためにと口にしたことを理由に今のお屋敷をクビになったら、その時は侯爵様にお願いして、他のお屋敷で働けないかお願いしようと考えた。
北に進むと、山の色が秋色が強くなり、風が冷たくなってきた。
もっともわたしは、魔法があるからもっと寒くなっても大丈夫だけど。
最初の頃とは違って、楽しい移動の日々。
そして、明日はいよいよ、わたしの領地となった場所へと到着するという時、コズミックがとんでもない事を言い出した。
「カモミール様。どうせならあの町の名前、変更しません?」
「へ!?」
「持ち主が変わるだけでなく、あの町は間違い無く生まれ変わります。なので、それを記念して名前を変えましょう」
にこにことコズミックはご機嫌な顔で提案してくる。
「カモミール様のお名前から取ってミールなんてどうでしょう」
「絶対やだあ! 恥ずかしい! それならコズミックのミックをとってもいいでしょ!?」
最近イジメる方向性変えてきてない!?
「では、わたくしとカモミール様のお名前を取って、ミールミック、もしくはミックミールではいかがでしょう?」
「うん! それなら」
こくこくと頷いて、ハッとした。
目の前に旦那様となるカルヴァーン侯爵がいらっしゃるというのに、彼の名前を一切考慮しなかった!
「え、えっと……」
「カモミール様。あと、山の名前も変えちゃいませんか?」
「え!? 山の名前!? 山の名前も変えちゃって良いの?」
「多少手続きは面倒ですが、可能だと思われます。ねぇ侯爵様」
「……確かに、可能だし、良い記念になる」
えっと、でも手続き、面倒なんですよね? とは思ったけど、二人がそういうって事は変えた方が良いのだろう。
「では、カモミール。私と貴方の名前を混ぜて、新しい山の名前を考えてくださいますね?」
わたしの手を取って、にこやかーな。圧のある笑みを浮かべて侯爵様はおっしゃるので、わたしはコクコクっと頷くしかなかった。
一生懸命頑張って、頑張って考えた結果。
町の名前はミックミール。山の名前はイスカルにした。
私的にはそれだけでへとへとだったけど、代官の館で必要な書類とかをチェックしてサインして、となにげに忙しかった。
でもでも、新しい領主となるわたしへのプレゼントとして子供達が選んでくれた綺麗な石の贈り物は嬉しかった。だって、コズミックが綺麗に磨いて装飾品にしてくれるっていってくれたから。
侯爵夫人としては宝石とかそういうのを身につけた方がいいんだろうけど、わたしはそういうのを身につけてきた経験がほとんどない。
正直言えばそんなものを身に纏えば、緊張して大変だと思う。
だから、気軽に出来るお洒落の方が嬉しい。
「わたくしのために一生懸命選んでくれてありがとう」
子供達にお礼を言うと子供達も嬉しそうに、いや、誇らしげに笑った。
コズミックと侯爵様が今後の採掘の事で話をしている。
……そういえば、結局、侯爵様はここの何が欲しくてわたしと結婚したんだろうか。
そんな疑問を覚えたが、そのうち話してくれるだろうと、わたしは子供達を労う事を優先した。
町の名前と山の名前を変える事は、結構すんなり通ったそうだ。
時折、あるんだって。
街とか橋とか、通りとかに妻や子供達の名前をつけることが。
おかげで、わたしが侯爵と共に社交界に出る時には『侯爵の愛妻』という噂話が出ていて、とてもびっくりした。
名前が決まった流れが流れなので! まさかすぎる、と。
なんか、ごめんなさい。
わたしはよく分からないまま、そう心の中で謝った。
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