8
町はひっそりと静まりかえっている。車もほとんど通らない。昨夜の内に出されたゴミに群がるカラスだけが忙しそうに飛び跳ねている。この街にこんなゆったりと流れる時間があるとは思わなかった。空は抜けるように青い。よく考えてみると、この街に来てこうして空を見上げることなんてあっただろうか。僕はこの時が永遠に続くように思えた。でも、この街に限ってそんなことなんてあるはずがなかった。急にルナに会いたくなった。二人でこの静かな街を歩いてみたくなった。僕が望めばそんなこともできたのだろうか。僕は自販機の前に立ち止まって、ポケットを探った。コーラを買った。タバコを買おうと思ったのに。道端にすわり込んで、ルナはよくコーラを飲んでいた。いつも途中まで飲んで残りを僕にくれた。僕が飲み終わると、空になった缶を取り返してその中に吸いかけのタバコを放り込んだ。僕はコーラを飲みながら人気のない街をふらふらと歩いた。見覚えのある景色が見えた。うす暗い建物に入って、ぽつりと置かれた長椅子に空っぽのコーラの缶を握りしめたまますわった。しばらくすると、眠い目をこすりながら僕を送り出してくれた刑事が僕の前にあらわれた。僕は立ち上がってその刑事に言った。「僕がやりました」刑事はしばらく黙っていた。
ルナは眠っているようだった。僕に笑いかけていた。コーラの缶は吸いかけのタバコを放り込まれたまま長椅子の下に置かれていた。
ルナ 阿紋 @amon-1968
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