第6話


 仮にそうであるならばと、僕も普段通りのゲスさを晒しながらでもプレイに集中すべきではないか、そう思った。小麦色に焼けたコギャルのような褐色の肌さながらに、ブラックライトに照らされた綾の小ぶりな乳房の先端の片方にだけ意地悪く歯を立てた。痛みを捉えてか、一瞬驚いたような表情を返したが、僕も本来の冷静さを失い必死なのだとその仕草に構わずにいると、それを受け入れるように後頭部を強く抱き寄せるように声を上げた。

 僕はもう一度身を離し、綾に後ろを向きに四つ這いにさせた。両足の間に僕も膝を付き、そっとまた体の中心深くへとアレを潜り込ませる。綾の張りの良い尻を両手で掴み、腰を寄せては離す動作を反復させる。堪らず片方の尻を掌で張ると綾が両肩を窄めるような仕草で、顎を前に突き出した。

 コギャルのように大胆だと思うのは偏見かも知れない。だが明るい場所で服を着ていた時の綾からは想像もつかなかったほどに狂喜乱舞している様は、僕のアレの先の敏感な部分と脳裏を激しく刺激した。

 寄せては離す腰の反復運動が徐々に小刻みになる。微動になればなるほど腰を強く寄せたくなり綾の腰を掴んでは強く引き寄せ、奥へ奥へと押し付けるように跳ねながら僕は果てた。綾もそのまま前に倒れる。


 コンドームを外してたっぷりと出した白い液体を綾の顔の前に差し出すと、恥ずかしそうに我に返ったような表情をする。もう少し余韻をといった僕は綾の顔の横に座り直し、まだまだ反り勃ったままの状態のアレを綾の顔の前に突き出した。

 綾の手を取りそこへ導くとそっと握り返し、おもむろに竿の部分を横から咥えた。そしてまた喉の奥を突くように頭を前後させる。綾の髪を耳にかけ表情を窺うと涙目になりながらもその前後運動を止めようとする気配はない。僕も根元を自分の手で扱いて加担した。


 帰りの車の中では駅までの道中、ブラックライトに照らされていた時の話は互いに触れなかった。だからか余計に、あの部屋の青い空間には不思議な力が秘められていたのかも知れないと、幻覚をみていたかのような、錯覚のようにも思う。

 駅まで迎えに来てくれる母親に取り繕うために、送った先は最寄りの駅の一つ手前の駅だった。そこから電車に乗り、あたかも電車で出掛けでもしていたように母親に迎えられて帰宅するのだと言う。それについてはしっかりしているなと思いながらも、先ほどまであれだけ乱れていた余韻を抑えきれるのだろうかと、自分のことでは無いながらも心配になる。綾も普段のモードに切り替えよう取り繕う様が窺える。


 流石に無かった事にするのもと思い、意を決して僕の方から切り出した。

「ってかさっきさ、何かごめんね」

「何がですか?」

「いや、何がって言われると…。カラオケするって言っててしなかったし」

「あぁ…」

「ってか、凄かった!」

「あぁ…(笑)」


 言い出しておいて取り繕い辛くなった僕は、綾のプレイが良かったのだと絶賛して誤魔化すしかなかったのだが、綾がそんなつもりじゃなかったと不本意そうに思っていたらどうしようかとまでは考えが及んでいなかったのだが、「何が凄かったんですか?」とは流石に返しては来ない。表情が崩れたのでここでもまた安堵した。

「彼はいつもしてもらえるんだな…」

 また余計なことを言ったと思った。彼を裏切る行為でもあったことを実感させたら元も子もないではないか。

「遠距離になりますからいつもは出来ないですよ?」

「確かにそうか…」

 綾の方が冷静だった。駅の方から、そろそろ電車が間もなく到着する旨を知らせる表示がチラつくのが眼に入る。2人でそう認識したと思った時、今度は綾が切り出した。

「ぶっちゃけて良いですか?」

「ぶっちゃけ?」

 何を言い出すのだろうと身構える。

「本当は、もっと出来たと思います(笑)」

「もっとって?」

「もっと色んなことをです(笑)」

「エッチなことって意味?」

「そうです。そういうのも含めて色んなことをです(笑)」

 僕は上手く意図を読み取れなかったが、そう言い張る綾から今日のプレイについて2人で振り返る余地もあることを認識した。

 ホームが遠くから近付いてくる電車の灯りで照らされる。助手席の綾の後頭部に手を添えて一瞬強く舌を絡めるようにキスをして見送った。もちろん片方の手を小振りな乳房に添えながら。


 自宅のリビングで夕食を済ませてゴロゴロしていると綾からメールが届いた。正直僕の方は余韻に浸っていた。

「今日は有難う御座いました。私も凄く楽しかったです。色んな意味で!」

「彼の相談乗ってたつもりだったのに何かごめん!」

「それ言わなくて良いです!(笑)」

「何かごめん!(笑)」

「私東京行っちゃうじゃないですか?やっぱり彼とここでお別れしておこうと思います!」

「決心がついたなら良かった!」

「次会えたとしたらお互い彼氏彼女無しですね(笑)」

「じゃぁもっと色々してもらうヤツじゃん!」

「あぁ…、そうですね確かに(笑)」

「凄そう!」

「でも、会ってSEXだけする関係で、その後への発展ってしそうですか?」

「東京行っちゃうし遠距離になるじゃん?」

「ですよねー(笑)」


 綾の意図が何となく伝わったようなそうでもないような気がしたが、とぼけたフリをした。

 僕に取ってもまだまだ数年はこちらで学生生活を送らなければならないので、東京の彼女と遠距離恋愛をここで始める考えは毛頭なかったのだが、それはそもそも綾のような女性と知り合うことが想定外であっただけで、想像にも及ばなかったという方が正確なところかも知れない。

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電車ナンパ男 城西腐 @josephhvision

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