第12話 内にあるもの

【〇月2日 月】


 今日は本当にしんどかった

 やっと一日が終わった。

 明日は女王の機嫌どうかな?


【〇月3日 火】


 今日も何とか一日が終わった。よかった。

 明日は機嫌どうかな?


【〇月4日 水】


 しんどい。休んでいいかな。

 無理か。仕事へ行きます。

 今日は女王どうかな?


【〇月5日 木】


 もうむり。つかれた


【〇月6日 金】


 今日行けば明日は休み。

 女王の機嫌がましでありますよに。

 しんどい・・・


【〇月7日 土】


 やっと休みだ。今日は休もう。

 何も考えず、ただ休もう。

 明日も女王にあう必要はない。やったぁ


【〇月8日 日】


 休み終わった・・・

 明日の女王はどんなかな・・・

 行きたくないな。




 カウンセリングの為に付けていた一言日記をパラパラとめくってみる。

 どのページも似たような感じで、その日をどう乗り切るか、佐倉女王の機嫌はいかがなものか、明日はどうなのか。

 後はただただ、しんどい、つらい、悲しいと書き連ねてあった。


 これが、自分の中にある感情のすべてだと思うと、つまらない人生だなと思ってしまう。

 そういえば、最近は好きなアーティストの曲を聴くことも無くなった。

 新しい服を見ることも、切ることも無くなった。

 何に対しても、ときめかない。

 それはそうだ。だって、これだけ心が疲弊しているんだから。


 そんなことに、ようやく持って気づかされる。

 それは、自分が病気であることをようやく受け入れられた瞬間だったのかもしれない。


 思い返せば、本当に、どうしてこの職場に執着していたのだろうか。

 私と佐倉女王が合わないという事は、明確な事実なのに。

 目覚めようとすればいつだって起きられたはずなのに、私は必要に悪夢の中に居ることを選んでいた。

 そうまでして、守りたかったものはなんだったんだろう?

 私は、何を恐れていたんだろうか。と考える。


 考え出した答えは、失敗だった。

 私は、人生の選択肢を「失敗した」という事実を叩きつけられることを恐れていたのだと思う。


「あー!! 失敗失敗。次こそはいいところに就職するぞー!!」


 だからこそ、あえて大きな声で、そんな自分をあざ笑う。


「失敗したって大丈夫。だって私生きてるし。でも、あそこにいたら死ぬかもしれない! それこそ、取り返しのつかない失敗だよ―――っ!!」


 馬鹿馬鹿しいかもしれないが、声に出してみると、なんだかスッキリした気持ちになった。


「あの人が居れば私はいじめられない? 矛先が私じゃないから今は大丈夫? 私はまだ玩具じゃない? 結局、そうやって低俗なマウントに乗っかったのは私自身だったじゃん。やめよう、やめよう。そんな小さい人間になり下がりたくないや!!!」


 私は大きな独り言を吐くだけはいて、退職届を書き始めた。

 ずいぶん前に購入して、閉まったままの退職届に、スラスラと文字を書き進めて丁寧に封筒に入れた。

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