第40話

「たしかにお前の言うことは一理ある。地獄と呼ばれる場所や日本神話に登場する根の国、異国に伝わる神話の中でも地獄と同じ類いの場所があるのは地底とされ、逆に浄土、天国とされる場所があるのは天上とされていることが多い」

「なんと……話のわかる方と出会えたのは、あなたが初めてです」


 安楽は先程までとは打って変わって喜びを隠しきれない様子で、璃兵衛を見た。


「あなたがよければ、私と手を組みませんか?」

「手を組む?」

「ええ、そうです。共に浄土を作るのです。あなたの知識があれば、私の理想を、浄土を広げていくことができる……あなたにとっても素晴らしいことではありませんか?」

「勘違いしてもらっては困る。俺はお前の考えを認めたわけでもなければ、お前に共感したわけでもない。ただ神話としての共通点を認めただけだ」

「そうですか。それは残念ですね」


 安楽は棚から短刀を手にした。

 その柄は赤黒い染みがあり、刃は怪しく光っていた。


「あなたは木乃伊にするよりも、剥製にした方が高く売れそうですね」

「木乃伊も作れるとは随分と器用なんだな」


 璃兵衛に言われた安楽は、まるで手伝いをほめられた子供のように笑ってみせた。


「以前は手伝ってくれる者もいましたが、途中で逃げ出そうとしまして……長く生きるコツは知りすぎず、他人を信じすぎないことですよ」

「適当なやつを金で雇い、必要がなくなれば口封じとは、とんだ輪廻もあったものだ」

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