第三章
第34話
三、
「ん……」
意識を取り戻した璃兵衛が感じたのは、カビなどが混ざりあった嫌な臭いだった。
蓬莱堂でもカビが生えたものや蔵の奥などに仕舞い込まれていたものを扱いはするが、この空間を満たす臭いはそれらとはあきらかにちがう。
(カビの他に湿った土に、何かが腐った臭い……この暗さからして、ここは地下か?)
暗い場所で過ごすことが長かったため、あかりがなくとも大体の状況は把握できる。
起き上がろうとするが、手足に枷がはめられているせいでそれはかなわなかった。
こうした枷があるということは、ここに璃兵衛より前に入れられた者がいるということだ。
唯一自由な首を動かしてみると、頑丈な格子が目に入ってきた。
(なるほど、地下牢か……)
この場所がいつからあるのかはわからないが、おそらくは拷問か他言できないような趣味にでも使われていたのだろう。
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