第6話

「ふっ、鬼か……そう言われてるのか、お前は。ふふ……」


 着物の袖で口元を隠しながら笑う璃兵衛を少女は幼い顔で不思議そうに見ていた。

 レンににらまれた璃兵衛は笑うのをやめ、少女に問いかけた。


「……それで、お嬢さんはどんな用でここへ?」


 そうたずねる璃兵衛に先程までの笑いはなく、そこにあるのは祝久屋蓬莱堂の店主の顔だった。


「この店がどんなものを扱っているか知った上で、ここに来たのか?」

「うん、知ってる。そやから持ってきてん」


 少女は胸元から赤い櫛を取り出すと、璃兵衛に差し出した。


 その櫛は庶民の間によく出回っているつげでできたもので、赤い花模様がいびつに咲いている。


「どうして蓬莱堂に?」

「……うちは茜。ここに来たんは、からっぽになったお母ちゃんを、ちゃんとあの世に送ってもらいたいから」

「からっぽというのはどういうことだ?」

「お母ちゃんは、ひと月前に病で死んだ……お父ちゃんは最初からおらん……」


 茜は悲しみに耐えるように小さな手をぎゅっと胸元で握ると、言葉を続けた。


「せやから悲しかったけど、うちがお母ちゃんを送ったげなって。ほんで、親切な坊さんに供養してもらえるようになって……けどな、うち、見たんや」

「お前は何を見たんだ?」

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