第5話

「……さすがに、こんな客は初めてだ」

「いいのか?」

「いいもなにも客に変わりはない。こんにちは、お嬢さん」


 少女は土で汚れた小さな手で赤い着物をつかみ、なにかに耐えるようにしながら、じっと璃兵衛の目を見ていた。


「青い目……玻璃の鏡に跳ね返されて閻魔さんに追い返されたんは、ほんまやったんや……」

「……玻璃の鏡?」

「地獄にある亡者の生前の罪を映すと言われる鏡のことだ。そうか、また新しい噂が生まれていたか」


 なぜか楽しそうに呟く璃兵衛にレンが隣でため息をつくと、少女は小さく肩を揺らした。そんな少女に璃兵衛は楽しげに話しかけた。


「俺のこの目にはもうひとつ秘密がある」

「秘密……?」

「ああ、実はそこにいるやつとの対価……指切りした証でもあるんだ」

「おい、子供をからかうな」


 横から会話に入ったレンを少女は驚いたように見上げた。


「じゃあ、この人は鬼さん?」

「鬼だと……?」

「うん、この世に戻ってきたお兄ちゃんがあかんことしんように、一緒についてきた鬼がずっとそばで見張ってるって」

「いや、俺は鬼では」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る