第4話

「ひどい物言いだな。一体どこでそんな言葉を覚えたんだ。船の中か?」

「そうだが、お前のおかげで言葉の種類は随分と増えたな」


 まさかレンが皮肉まで言えるようになるとは思っておらず、璃兵衛は素直に感心した。


「それで何を考えていたんだ、お前は」

「せっかくなら、お前のことも噂に足してもらおうと考えていただけだ」

「……世話になってひと月近くたつが、どうもお前の考えはわからない」

「所詮は他人同士、それが当たり前だ。むしろわかると言う方が傲慢だ」

「お前の場合はそういうことではないとわかって言っているだろう?」

「そんなことは最初に会った時からわかっていたことだ……それに噂と言っても当たらずしも遠からずだからな」


 璃兵衛は棚に置かれた鏡に映り込んだ誰かに向かって話しかけた。


「客か? なら、入ってくればいい」


 入り口を見ることもなくレンは告げるが、一向に客は中に入って来ようとしない。


「……大丈夫だ、俺もこいつもお前をとって食ったり、あの世に送ったりはしない」


 再度レンが告げ、少しして店の中に入ってきたのは七歳ぐらいの少女だった。ここのあたりでは珍しい真っ赤な着物に身を包み、肌は璃兵衛と同じか、それ以上に白く、小さな唇も紅をひいたように赤い。


 思いがけない客に璃兵衛はほんの一瞬、青い目を見張った。

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