娘が美少女なら母親は美人である②

「は〜い。2人ともお待たせ〜」

「おお!」


 弘香ちゃんのお母さん……じゃなくて。香織さんが出来上がった料理をテーブルに運ぶ。


 牛もも肉、玉ねぎ、にんじん、ブロッコリー、バター……買い出しを頼まれた材料的にシチューかと思っていたけど……。


「香織ママ特製のビーフシチューよ〜」

「ビーフシチュー!」


 シチューと言っても、ビーフシチューの方だった。

 むしろいい! 味が染み込んでいそうな、ソースの色。食欲を掻き立てられる香り……。うん、これは食べなくても分かる。絶対美味しいやつだ!!


「うふふ、ハルくんは可愛いわね〜」


 僕のリアクションが顔に出ていたのか、香織さんは微笑みながら弘香ちゃんの隣に座った。


 それから3人で手を合わせて食べる。


 味は言わずもがな、絶品。超美味しい!! お肉が柔らかくソースも美味しい。お店で出せるレベルである。

 ビーフシチューの他にもサラダやスープもあり、大満足。


「美味しいです!」

「ふふ、ありがとう〜。ハルくんへのお礼ってことで、本当はステーキでも良かったんだけどね〜」

「ステーキはダメ。もっと食べやすいものでいいから」

「って、ヒロちゃんが言うから〜。ヒロちゃんが1番好きな料理にしたの」

「弘香ちゃんは香織さんのビーフシチューが1番好きなんだね」

「ま、まあ美味しいから。……お母さんの料理はいつもどれも美味しいけど」

「あらあら〜。嬉しいわ〜」


 普段は恥ずかしくて面と向かって言わないのか、弘香ちゃんの頬が少し赤くなっている。

 香織さんは嬉しそうに微笑んでいた。


 弘香ちゃんと香織さん。相変わらず仲が良さそうでこちらも微笑ましい。


「ハルくん。お母さんとナツちゃんは呼ばなくていいのかしら? もし良かったらふたりもうちで食べていってもいいのよ?」

「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫ですよ。姉ちゃんは今日は友達の家に泊まるって言ってました。なんか課題が終わらないとかでピンチらしいです。母さんは、今日は仕事の人とご飯だとか」

「あらあら。それじゃあタイミングが良かったみたいね〜」

「ですね」


 今日の夕食が僕、1人なのを弘香ちゃんからお誘いを受けた時に気づいたけど。1人だけだとカップ麺で済ましてしまいそうだったから、こうして香織さんの美味しい料理が食べれて良かった、良かった。

 

「本当に良かったわ〜。ハルくんが1人寂しく夕食を食べることにならないで」


 香織さんが優しい瞳で僕を見る。


「1人で食べることなんて慣れっこですよ?」

「でもみんなで食べた方が楽しいでしょ?」

「そうですね」


 笑みを浮かべる香織さんに僕はすぐに頷いた。

 香織さんに弘香ちゃん。3人で囲んで食べる夕食は楽しいし、より味も美味しく感じる。


「ふふ。いつでもうちで食べていいからね〜。ハルくんなら大歓迎だから」


 香織さんの言葉には、気遣いだけではなく、僕を家族の一員のように接してくれている感じがする。温かくてなんだがいいよね。


 それと。


 ぷるんぷるん。


 笑うという動作だけでなにかと揺れる巨乳……。さすが弘香ちゃんのお母さん。性格も胸も美人なんて。


「むしろハルくん。うちの息子になる〜?」

「え」

「お母さん?」


 僕の戸惑いの声と同時に、先ほどから静かだった弘香ちゃんが短く言葉を発する。

 弘香ちゃんは……なんだがむすっとしてそうで、ちょっと頬が赤いようにも見える。


「ふふ。ごめんね、ヒロちゃん。それはヒロちゃんの役目よね〜」

「お母さん……?」

「あっ」


 2人の会話の内容はよくわからなかったが……弘香ちゃんがにっこりした笑顔に変わった。

 これは……弘香ちゃんが機嫌が悪くなったことを表す。


「あらあら〜。ヒロちゃん可愛いお顔が怖いわよ〜。じゃあママはビーフシチューのおかわりしてこようかなぁ〜」

「僕も一緒におかわりします!」


 美味しいからぺろっと食べ切ってしまった。


「じゃあハルくんの分まで持っていくわね〜」


 おほほほほ、と香織さんはキッチンの方へ向かった。

 

「今日の香織さん。凄く機嫌が良さそうだね。何かいいことあったのかな?」

「旭晴はあとで正座ね」

「なんで!?」


 僕今回は弘香ちゃんの胸については一言も言ってないよ!?






 


「ご馳走でした。美味しかったです!」


 膨れたお腹をさする。

 これ以上、長居するわけにもいかないので皿洗いをした後は玄関に直行した。


「もう、ハルくん。ついでにうちに泊まっていけばいいのに〜」

「それは……またの機会にしますね」


 香織さんは名残惜しそうだったが……後ろの弘香ちゃんが怖い顔をしているから、首を縦に振れないんだよね。


「じゃあ、おやすみなさいでーす!」


 笑顔の香織さんとちょっと機嫌が戻った弘香ちゃんに見送られ、ドアを開ければもうすっかり外は暗くなっていた。

 







「ちょっと旭晴」

「ん? 弘香ちゃん!」

 

 後ろを向けば、先ほど別れたはずの弘香ちゃんがいた。


 すると、弘香ちゃんがスッと近づいてきて、


「先に話しておきたいことがあったと思って。林間学校の班のことなんだけど……」

「……あっ、もしかしてやっぱり班は組めない——あいたたっ」


 軽く耳を引っ張られた。


「話は最後まで聞きなさい。私が旭晴の班に入ることは変わらないわ」


 おっ、良かった。弘香ちゃんがやっぱり班に入れないとなると、斗樹と純矢を

慰めるのが大変である。あと、本気で男の娘を探しにいきそうで怖い。


 弘香ちゃんがこほんっと咳をしたので、僕は聞く姿勢に入る。


「問題はそれじゃなくて……。旭晴の班に私ともう1人、女子が入るじゃない?」

「そうだね」


 林間学校の班決め。担任の先生が男子と女子はいい感じに混合の班にしろ、と言ったから弘香ちゃんの他に、もう1人女子が入る予定だ。

 その女子は弘香ちゃんが決める、みたいなことを学園で軽く話していた。


「私から誘って了承は得たけど……。ちょっとその子、

「え………?」





次回、林間学校編

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『まな板ランキング1位』の幼馴染の胸を揉み続けたら彼女も僕も成長したので高校デビューしてみた。 悠/陽波ゆうい @yuberu123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ