第3話


ただただ長い廊下には装飾品が掛けてあるということもなく

窓もなければ扉もない、そのせいで悠馬はこの空間が異様に長く感じられた。

「どこまで行くんだ......」

その言葉を聞いたメイド長は振り向くことなく答えた。

「もうすぐ着きますよ」

そうしてまたもやしばらく歩いているとようやく一つの大きな扉の前に着いた。

「この先に我が主がいらっしゃいます」

「わ、わかった」

「それでは行きましょう」

その言葉を合図に二人は部屋の中に入った。部屋の中には大きな椅子が一つだけあり、そこには一人の男性が座っていた。

「ようこそ、私が生き死にの神、アーネスト・シェン・アイデンだ」

「は、初めまして、神崎悠馬といいます」

「そんなにかしこまらんでも大丈夫だ、楽にしていい」

「わかりました」

悠馬は緊張しながらも、目の前の男性に目を向けた。

もうすでに自分のことを覚えていないであろう認知症の爺ちゃんと同じくらいの年齢に見えるほど顔はしわはがれているが

爺ちゃんには感じられないほどの生気が目の前の人物からは感じられた。

「まずは謝ろう」

「はい?」

「本当にすまなかった」

「えっと.....なんのことでしょうか?」

いきなりの謝罪の言葉に疑問を浮かべるしかない悠馬は疑問をそのまま口に出した。

「私のミスで君を殺してしまった、君は本来死ぬことはなかったが、なんの因果か、君の魂はこちらに来てしまった」

「....」

「正式の謝罪する....申し訳ない」

悠馬はその真剣な態度を見て、少し考え、そして口を開いた。

「俺が今ここで生きているのはあなたのおかげなんですよね?」

「そうだ、しかし私のせいで君は死んでしまったのだ」

「俺がこうして生きているのはあなたのおかげですよね?」

「ああ、だがそれは....」

「それでも俺の命を救ってくれたのはあなたなんです。だから俺が生きていることを責めるのは筋違いではないですか?」

「....」

悠馬はその男性にこれ以上自分を責めさせないために、自分が思ったことを言うことにした。

「君がそういうのならば、それでいい」

「はい」

「だが、すまないが君を元の世界には戻すことは残念ながら条約上不可能だ。この世界は修復機能を持っている、空いた穴を元の状態にする修復機能がね、それは紙ですら変えることのできない不変な機能だ。またそれは人が不確定な状況で死んでしまっても修復されてしまう。つまり...」

「もう自分が入る隙間がないってことですか?」

「理解が速くて助かるよ、しかしな、その理から外れた世界も少なからず存在するのだよ、そこはこの世界のように安定した世界ではない」

「は、はあ」

「つまり統治するものがいないんじゃよ、地球上でもっとも数が多いのは虫だ、ただし地球上でもっとも賢く、もっとも地球を知ることができているのは人間である。がしかし、その世界にはそれがない、それはなぜか...答えは魔族。人間と同じように、またそれに台頭するように魔族というジュ族がいるその世界は理のしくみが緩い、だからその場所ならば君を生き返らせることができる」

悠馬はそんな話をされながらもどこか現実味を感じられなかった、だが

「そこには武器はありますか?」

「君が納得するようなものは置いていると自負しているよ」

「分かりました....行くことにします」

「ありがとう、すまないね」

「いえ、その世界で何をやらねばいけないということはりますか?

「その世界に個々を縛る法律などはない、自由奔放に生きてくれれば良い、どんな生き方をしてもよい、理による多大な力を抑制させる歪んだ力はほぼないであろう」

「...」

「君の人生がよりよくなるように微力ながら願っているよ...最後に何か、あるかい?」

「いえ、何も」

「そうか、では....」


~悠馬がいなくなった真っ白な世界~

「本当のことを伝えなくてよろしいので?」

メイド長の女性が神に問いかけた。

「ああ、彼はまだ子供だ、こんな残酷なことを伝えるべきではない」

「しかし彼ならきっと」

「わかっておる、しかしわしにも責任がある、だからこそ今は伝えずにおこうと思うのじゃ」

「....わかりました、失礼しました」


メイド長がいなくなった部屋で神が一人つぶやく


「理というものはどこまでも厄介なものよ...」

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ミリタリーな俺が華麗に世界征服~武器(美少女)とイチャイチャしながら進める異世界攻略~ @ten-P

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