第2話
「ここは....どこだ?」
現状の把握能力は戦場で最も大事にされる能力の一つだがそんな余裕は俺にはなかった。
そんな立ち尽くす俺の前には全てが白で覆われた建物がそびえたっており、
降り立った場所からその建物の門に深紅の絨毯がその存在感を存分にきかせていた。
それはまるで俺をその建物の中に導かせるように...
「何なんだよこれ....」
あまりにも突然のことで、悠馬の頭の中ではラノベの主人公はこんな未知な場所に連れてこられてよくその感情を表に出さないなと至極、どうでもいいことを考えていた。そんな悠馬にさらに追い打ちをかけるように目の前の建物の門が軋みながらゆっくりと開いていった。
「早く入れと?」
軋みながら開いた門はまるで悠馬に早くこの建物に入れと急かすかのように無風状態にも関わらず嫌な音を立てていた。
悠馬はその門に吸い込まれるようにして中に入って行った。
中に入るとそこはまるで白一色ののような外観のイメージ通り、とても質素な作りになっていた。
そして、なぜかそこには人っ子一人いなかった。
「なんだってんだ一体」
するとその時、背後から声をかけられた。
「ようこそ、小泉悠馬さん」
悠馬は驚きのあまり一瞬、硬直してしまったがすぐに平静を取り戻し振り返った。
そこに立っていたのはメイド服をきた銀髪の女性であった。
その女性はとてもきれいでどこか懐かしい雰囲気を出していた。
「貴方は誰だ?そしてなぜ俺の名前を知っているんだ?」
「申し遅れました。私の名前はクレア・レイスと言います。よろしくお願いします。」
「よろしく...」
「私はわが主である、この世界の生死を司る神 アーネスト・シェン・アイデン様に仕える、メイド長でございます」
「えっ!?」
悠馬はあまりの情報量の多さについていけず思考停止に陥り大量の情報を前に悠馬の頭にあった質問はすぐに掻き消えてしまっていた。
そんな悠馬を気にすることなくメイド長は話を続けた。
「最初にお伝えしときたいことがあります」
「な、なんだ?」
「貴方の死はまだ完全なものではありません」
「どういうことだ?」
「まだあなたには生きてもらう必要があるのです」
「えっ?死んでいるのに生きているのか?」
「はい、ですがまだ完全に死んでいないので生き返ることもできます」
「本当か?」
「本当ですよ」
「じゃあ俺は死んだんじゃないのか?」
「はい、確かに死にましたよ」
「ならどうして俺はここにいるんだ?」
「簡単に言えば魂だけがこちらの世界に来てしまった状態です」
「じゃあ元の世界に戻れるのか?」
「いえ、貴方の身体はすでに元の世界では死んだ扱いになります、しかしある事情を持った方はすぐに天界に行くことはなく、一回こちらで魂のみあずかることになっています」
「...」
目の前の女性がする、淡々とした説明は悠馬にとって容易に受け取れるようなものではなかった。
「ご納得されたようで安心しました」
悠馬がずっと沈黙している姿をみて勝手に勘違いしたその女性はさらに付け足した。
「奥で我が主がお待ちです、こちらへどうぞ」
「あ、ああ」
悠馬は何が何だかわからないままその女性の後を追った。
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