生まれた日に雨が降ったから、というだけの理由で龍神に捧げられる定めとなり、十五の歳まで社に押し込められて育った娘、幸(ゆき)。
短いエピソードがいくつも折り重なるようにして、彼女が捧げられた龍神だけでなく、小さな風神や他の神々まで、いろいろなものに見守られ、大切にされて少しずつその名の通り幸せに、ゆっくりと絆を深めていく様子がとても素敵でした。
龍神様が、待つ覚悟を決めながらも少しもだもだしているところも大変好きです。
そして、「その名前」で名を明らかにしてくれた小さな風神との親交も、人とは違う存在であることを改めて感じ、少し切なくて——。
可愛い娘さんと優しい龍神の心温まる異類婚姻譚、和風ファンタジーやほのぼのなお話がお好きな方に、とってもおすすめです。