エピローグ(三枚起請)
「ぐっ、ぐっ、ぐっ、ぐっ!」
ダンゴは苦しみ始めた!
「ぐっ、ぐわっー、はっ、はっ、はっ」
かと思うと、腹を抱えて笑い出した!
「くっ、苦しい、苦しい!おかし過ぎて苦しい!わーっ、はっ、はっ、はっ。こりゃたまらん、面白過ぎる!」
制約のヘアバンドが眩い光を放った!
「う、眩しい!」
白い光に包まれ、何も見えなくなった。光が収まった後、一人の若者が力なくうずくまっていた。
「やったのか!?」
「うむ、良くやったぞ、与太郎!」
「エンチョ師匠!」
エンチョがやって来た。
「見事である。後は私に任せておきなさい」
エンチョは若者の肩に優しく手を置いた。
「し、師匠…」
「ダンゴよ。これで分かっただろう。上には上がいるものだ」
「くっ、俺の芸はこんなものでは!」
「そなたの芸は間違いなく超一流じゃよ。じゃが、芸とは掴んだと思った瞬間、すり抜けていくもの。いつまでも人の手の届かない、遥か彼方に燦然と輝いているものなのじゃ」
ダンゴは人目も憚らずに、おいおいと泣き出した。
「ダンゴよ。思えばそなたを思い上がらせてしまったのは、この私のせい。また一緒に修行し直そう」
「…は、はい」
「与太郎、キセガワ。今回のことは、心から礼を言う。二人とも幸せにな」
一度、深々とお辞儀をして、エンチョはダンゴを連れてどこかへ去って行った。
「見て。空に座布団がいっぱい飛んでるわ。きっとダンゴが取り上げたものよ。元の持ち主の所に帰って行くんだわ」
「これで一件落着ですね」
あべ川ダンゴをやっつけた!
旅の目的を達成し、ラクゴ国に平和を取り戻した!
そして与太郎は決意を込めた瞳で、愛する女を見つめた。
「キセガワさん…」
「与太郎…」
「キセガワさん、お、俺と、結婚…」
そのとき、ドタドタと大勢の男達が走ってやって来た。
「あ、見つけたぞ〜!」
「キセガワさ〜ん!」
「俺と夫婦になるって約束だろ〜!」
みんな手に手に、起請文を持っている。
「あっ、いっけな〜い。もうこんな時間。家に帰って笑点見なきゃ」
キセガワはペロリと舌を出し、一目散に逃げ出した。
「あ、キセガワさん、待ってくれ!」
慌てて追いかけて行く与太郎。その後ろを大勢の男達が付いて行く。
「キセガワさ〜ん!待ってくれ〜!」
与太郎が幸せになるのは、この世界では、はたして。(完)
※三枚起請…古典落語の演目。
あやかし妖喜利物語〜転生したら笑点だった!?妖怪笑わせて座布団100枚目指します〜 いもタルト @warabizenzai
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