「運雨」
低迷アクション
第1話
ボ、ボタッ、ボタ、ボタボタボタ、ボタ!ビチャッ、ビチャッ、ビチャ、ビチャチャ…
雨が屋根を叩く音に混じり、異質な音が混ざる。
田舎でのスローライフを始めたばかりの友人“K”は、強い雨が降る度に聞こえる
“音の正体”を
今日こそ暴いてやろうと窓を開けた。
薄もやのかかった夕刻の風景の中、強い雨音の中で聞こえる音…
ボタボタボタボタ…ビチャッ、ビチャチャチャ
“移動している”
そう思ったと言う。動物か?山に近い、この地ならではの話だ。自分の知識にない習性を持つ生き物がいるのかもしれない。
どっちにしろ、正体を確かめたい。庭に出ると、傘と懐中電灯を両手に持ち、屋根を照らす。
(見えないな…)
納屋に向かい、梯子を持ってくる。屋根の縁に架けると、懐中電灯を咥えて、滑りやすい足下に注意しながら、登った。
そして、屋根に頭を突き出すKを待っていたかのように、今までとは違う音が
響く。
「う~~~」
それが人の声だと認識した時、Kは梯子を急いで下り始める。
だが、間に合わなかった…
“ズルルッ”
と言う音と共に自身の眼前に、水に塗れたというより、グズグズに腐乱した逆さまの女性の顔が突き出される。
Kが悲鳴を上げる前に、女の口が歪み、汚水のようなモノが吹き出す。それを避けようと逸らした体がバランスを失い、彼は庭に落下し、意識を失った…
次に気が付いた時、女の姿は消え、雨も止んでいた。
「俺が見ちゃったせいか、あの日以来、雨が降っても、音は聞こえなくなった。海外のニュースとかで、ハリケーンがあった翌日とかに、魚とかあり得ないモノが飛ばされてくるって
話があるけど、アレもそうなのかもしれない。だとしたら、要注意だ。
強い雨が降ったら、何処の家にも、あの女が降ってくる。その可能性があるって事だ。
雨が降った時は、耳を済ませろ。屋根を叩く音に重なる異音に注意するんだ」
まだ梅雨の明けない、我が地元でそれをやる予定は、今の所無い…(終)
「運雨」 低迷アクション @0516001a
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます