第5話 寝床の行方

「母様、ちょっと待ちなよ。」


 沈黙に包まれた部屋の中を張りのある声が響く。澱んでいた部屋の空気が少しだけ変わった。

 長髪を後ろで一つにまとめた快活そうな女性が手を挙げると、老婦人をなだめるように話し始めた。


「母様の言い分は分かるけど、さっきも言ったけれどさ、森に放り出したらこの子は死んでしまうわよ。」


「その可能性は高いでしょうね。

 しかし、得体のしれない者を、村にとどめ置くわけにはいきません。」


「そうは言うけれど、ねえ。その子を見てみなよ。」


 皆の目線が、拘束されている少年へと向かう。


「…?」


 皆の目線が集まり緊張しているのだろうか、少年は居心地悪そうに身体を硬直させた。

 森の中をずっと歩かされていた影響か、目に力はなく、若干ふらついているように見えた。


「死ぬと分かっていて叩きだすっていうは、あんまりじゃないのかい。」


 女性の言葉は部屋にいる人間たちの良心に訴えかけたが、老婦人は表情も変えずにべもなかった。


「おかしな動きをしなければ、一晩だけ逗留とうりゅうするぐらいであれば認めましょう。

 ですが、明日には村行きの馬車で、憲兵へと突き出します。」


「母さん…それでも血が通っているのかい?」


「まあまあ、ヴィリディス、ばあ様。そうひりつくこともなかろう。」


 老人が仲裁に入って、熱くなりそうな二人をなだめた。


「ワシとしても、この状態の子供をすぐさま追放する気はないよ。

 だがしかし、この村に素性のしれない居候を、置いておく余裕がないのも確かだ。」


 老婦人が放つ無言の圧に冷や汗をかいていたガタイの良い男も、おずおずと意見を話し始めた。


「少しの間、泊めおくなら、作業場なり倉庫を使ってもらって構わない。

 俺も子供1人ぐらいと思うが、言葉が通じないとなるとな…。」


 屈強な身体をしているが気は弱いのだろうか、老婦人にぎろりと睨まれると再び黙ってしまった。


「僕たちは、村長の決定に従うかな。ね、兄さん。」

「まあ、異論はない。」


 少年を連行していた青年たちからも反対はなく、一通り話を聞いた村長は結論を出した。


「では、決まりじゃな。

 一晩休ませた後に準備ができ次第、村を出る商隊に頼んで、ふもとの町まで連行してもらおう。

 越冬を考えると長くは置いておけん。彼には気の毒じゃがな。」


 村長の一言で少年の追放は決まり、

 椅子に座っている女性も何か言いたげではあったが、

 部屋の中にいた者達に反論するものは居なかった。


「村長、ちょっと、待ってくれないか。」


 そこにいたポエラ、1人を除いて。


「どうかしたかの。」


「祖父様たちが言わんとすることはわかる。

 しかし、こいつはこちらの言葉もろくに分かってない。

 そんな状態で憲兵に突き出しても、町から放り出されて似たような結果になるだけだろう。」


「そうなる可能性も、あるじゃろうな。」


「どうやらこいつは言語は違うが、何かしら喋れはするらしい。

 何処か住んでいた国があるなら、そこに帰す手伝いぐらいはしてやってもいいんじゃないか。」


 ポエラが言おうとしていることを察した老婦人が、ポエラを止めようとした。


「変な考えはやめなさい。」


「祖母様、こいつをここに連れてくると決めたのは私だ。

 連れて来ておいて邪魔だから、何処へでも行けというのは無責任だ。

 それに森の異変と同時期に、子供が一人で山深くに居たのは不自然だ。

 もしかしたら、こいつが何かしらの原因を知っているかもしれない。」


 ポエラは少年の擁護する側へと立った。

 予想だにしていなかったのか、ほとんどの者達は驚きを隠せないようだった。


 ポエラの言葉が途切れたころ、間を見計らって静観していた小柄な壮年の男が手を上げた。


「ゴメンねポエラ。意地の悪いことを聞くようだけど、ヴェント家以外の村の代表として聞くよ。

 もし、その子が村に何かしらの危害を加えようとした時、君はどうするつもりだい?」


 男はポエラをまっすぐと見据えて、その覚悟を確かめるように問いかけた。


「その時は、」


 ポエラは表情を変えずに、少年を一瞥すると男の方を向き直った。


「私が始末する。」


 言葉の意味をわかったのか、わかっていないのか、隣の少年は寒気に身を震わせた。


 二人は無言で互いに見つめ合っていたが、男の方が深く息を吐くと、後ろに背伸びをした。


斥候長スカウトリーダーとしては特に問題ないと考え、あとはポエラに一任します。それでいいかなカリアト、ヴィリディス?」


「もちろんよポラゥル。元より肩を持った以上、私も協力するつもりよ。大切な姪に全部押し付けるわけにはいかないわ。それでいいわねアナタ?」


「まあ、俺は構わんが…な。」


 ガタイの良い男は、風貌に似合わずおずおずと上座の方を見やった。

 老婦人の表情を変えず、少し不機嫌そうな気配を漂わせていたが、やがて静かに口を開いた。


「ポエラ。」


「はい。」


「あなたが決めたならそれでいいでしょう。

 ただ、その責任は全うしなさい。」


「分かった、ありがとう祖母様おばあさま。」


 老婦人が強く反対をしなかったことに、一同は驚いたようだった。

 しかし、村長は特別驚いた様子もなく、孫娘に向き直ると再び問いかけた。


「ポエラ、念のため一度聞くよ。

 相手は家畜や、愛玩動物ではない。

 この村に何かしらの危害を加えるかもしれない。

 それでも任せてもいいんだね。」


「ああ、承った。」


「そうか。」


 まっすぐと見据えて答えた孫娘に、満足そうにうなずくと部屋にいる全員に伝えた。


「この少年の処遇はポエラに任せる。

 村の衆には私からも伝えておこう。

 他に異存があるものは居るかの?」


 釈然としてなさそうな者達もいたが、その場では特に反論もなく、部屋にいる全員は了承の意を無言で答えた。


 取りあえず、少年はこの村で保護されることになった。


 しかし、その少年は、聞こえているのかいないのか、

 胡乱な表情のまま立っているままだった。


 -----------


 (身体が軋む…ひどく眠い。)


 一日中歩き続けたせいだろうか、疲労がたまり眠気となって、目の前がぼやけていた。


 さっきまで熱を持っていた身体は冷え切り、代わりに首元や体の節々が燃えるように熱く、四肢におもりが付いたかのように倦怠感がひどい。


 話の内容は分からなかったが、どうやら彼らは、自分の今後について話しているようだった。

 声を荒げる人は居なかったが、こちらを見る皆の目線にどこか憐れみを感じた。


 切り抜ける方法について考えようにも、

 頭が重く思考がうまくまとまらない。

 空腹と疲労で今にも崩れ落ちそうだった。


(どうなるかなぁ)


 しばらくすると、会話が終わったのか皆が席を立ち、

 思い思いの方へと散っていった。


 (どうなったのだろう。寝床は恵んでいただけないのだろうか。)


 神妙な面持ちで、自らに下った判決を待っていると、縄を握っていた白髪の女性が、後ろに回ると拘束をほどいてくれた。


 身体をあまり圧迫せずに結んでくれていたのか、軽くうっ血していた部分に血が通るとじんわりとした痺れがあったものの、動きづらさは不思議と感じなかった。


 女性は巻かれていた縄をまとめると、こちらに手を差し出してきた。

 理解するのに少し間が開いたが、恐る恐るこちらの右腕で握り返すと、軽くブンブンと揺らされた。

 先ほどまで、強張った面持ちだった彼女が、顔をほころばせ初めて笑顔をこちらに向けてくれた。


 どうやら握手は、友好的な意志表現として通用するらしく、察するに彼女が今日の寝床を確保してくれたらしい。


 緊張から解放された安堵から、自然と拝むように両手で握り返し、伝わるか分からない感謝の意を伝える。


「助けてくれて、ありがとう。」


『ポクィ コーネクフ』


 伝わったかは怪しいが、空いた左手で肩を軽く叩かれたときに、なんとなく「気にするな」と言ってくれたような気がした。


 …まあ気がしただけで、「残念。お前、今から追放な。」って言われてる可能性もまだ全然あるけど。

 そうだったら、勘違いして喜んでるみたいでなんか恥ずかしくなってきたな。


 嬉しさと恥ずかしさが混じった複雑な表情をしていると、

 先ほどまで長机に並んで座っていた、快活そうな女性がこちらへ歩いてきた。

 肩まで伸びた栗色の髪を後ろで結んでおり、ところどころが汚れた長袖の上に丈夫そうな革製のつなぎを着込んでいる。


「ディポース、ブンジャホゥ」


「え?どうも。」


「ファハハハハハ!!」


 彼女は満面の笑みでこちらに話しかけてきたが、やはり言葉は分からなかった。

 それとなく返事をすると、朗らかに笑ってこちらの肩をバンバン叩いてきた。

 叩く力はめちゃくちゃに強く、疲れて薄れている意識がどこかへ飛んでいきそうだったが、彼女もどうやら敵意はないらしい。


 こちらも敵意はないってことを示した方がいいんだろうけど、握手でもした方がいいのかな。


 どうやって意志の疎通を図ろうかと考えていると、

 彼女の後ろの方から、先ほどまで長机に座っていた背高い屈強な男も、のしのしとこちらに歩いてきた。


 男が傍まで来ると、部屋の明かりが、ちょうど大きな身体に遮られる形になった。

 こちらを見下ろす表情は、影になっておりどんな感情なのか伺えない。

 

 (いや、この位置だと怒ってるのか、笑っているのか感情がわからん。)


 暗く影を落とした男の顔が、こちらを見据えてニヤリと笑った。


 「ひっ。」  


 本能的な恐怖で後ずさると、何か硬質なものが背中にあたり身体が止まる。

 部屋の壁までは距離があったはずだった。

 恐る恐る振り向くと、そちら側にも外套を着た屈強そうな男がいた。

 後ろの男も表情は伺えなかったが、こちらを見てニヤリとほほ笑んだような気がした。

 

 前に向き直ると、前にいた大男も距離を詰めてきており、頑強な男二人に前後を挟まれる形になった。

 

 (やだ、無理怖い。)


 圧迫感と疲労が限界に達したところで、身体をふわりとした浮遊感が再び包んだ。

 つなぎ留められていた意識は、そのまま何処かへ飛んで行ってしまった。


 まさか、1日に2回も気絶する経験をするとは思わなかった。


-------------


「あら、気絶しちゃった。」


 驚いたというよりは呆れた風の女性は、前後男達からすんでのとこで支えられた少年を見て呟いた。


「この子、今、俺の顔をみて気絶しなかった?」


「俺の顔も、だな。

 親父殿といい、どうにも威圧感だけはあるからな、俺らは。」


 少年を咄嗟に両側から抱きかかえたマグニフと、その父親のカリアトは、力なく崩れ落ちたその姿を見て、やや落ち込んだ様子だった。


「血色も悪い感じはしなかったから、病弱というわけではなく、ただ鍛え方が足りないんだろうな。どこかの都市の商人の子だろうか。」


「そうかもしれないわね。今、来てる商隊の中に、別の言葉が使える人を探してみましょうか。」


「ああ、起きたらそうしよう。」


 しょんぼりした様子の男二人を放って会話を始めた女性陣に、部屋の奥で立っていたひょろりと背が高いもう一人の従兄弟が、こちらに近づいてきた。


「ねぇ、二人はこいつを泊めるのに賛成みたいだったけど、ちなみにどこに泊めるつもりだったの。まさかウチじゃないよね?」


「え?お母さんはそのつもりだったわよ?どうせ、部屋も余ってるし。」


「いや…流石に得体のしれない奴を、村長の家に泊めるのはまずいんじゃないの?

 もし、村長がいいって言っても、祖母様が怒ると思うけど。」


「俺も鍵がかかる部屋でいいと思ったが、まあ、お義母様は怒(いか)るだろうな。」


 何か良くないことでも思い出したのか、

 カリアトは髭をさすりながら、屈強な身体をぶるぶると震えさせた。


「夏と言っても、作業場は夜も冷えるからねぇ。やっぱうちでしょ。」


「いや、おばあ様に僕たちが叩き出されちゃうって。」


 気絶した少年をよそ目に、やんややんやと話し合う叔父一家を見ながら、ポエラは何だそんなことかと事も無げに答えた。


「私の家でいいだろう。」


 ポエラから放たれた言葉を聞いた叔父一家は少し硬直した。叔父のカリアトが、語気強めに反対した。


「嫁入り前の娘が、得体のしれない男と二人はまずいだろう。それなら、作業場に私が泊まって監視する。」


 反対する叔父を手で制して、毅然とした様子でポエラは反論した。


「いや、どちらにしても祖母様は許さないだろう。

 私が面倒を見るようにと言ったんだ。 

 作業場を借りるにしても、倉庫を使うにしても、私が監視する必要があると思う。

 どうせ、父の部屋が余っている。外から鍵をかけていれば問題ないんじゃないか。」


「いやだが…」


「というかだ。疲れ切って伸びている子供に、何かできると思うか?」


 マグニフに両脇を抱えられた少年は、目を回し脱力したように気絶している。

 そのひ弱そうな身なりで、何かしらの脅威になりえるようには到底思えなかった。


「うーん。少し心配だけど、ポエラの言うことも一理あるかしらねぇ。

でも、私としても1人にしておくのは怖いから、あなたたちもポエラに協力してあげなさいな。」


「「「え。」」」


 事も無げにいうヴィリディスの言葉に、驚いた様子の男衆3人が一斉に振り向いた。


「叔母さん、お構いなくだぞ。こんな子供に遅れを取る私ではないぞ。」


「ほら、ポエラもこう言ってることだし。僕らは別に家で寝ていいんじゃない?」


「だまらっしゃい!

 ここに連れてきた責任ならあんたら二人にもあるんじゃないの!

 ポエラ1人に尻拭いをさせるつもりかい!!」


 息子ふたりを一喝すると、萎れた二人は、それ以上は何も言おうとはしなかった。そんな中、機嫌を伺うようにカリアトは妻に尋ねた。


「いや、母さん…?なぜ俺もなんだ。」


「アナタ今日、仕事に夢中になって、取引先との打ち合わせすっぽかしたでしょ。」


「…」


「お母様に言いつけるわよ。」


「それだけは許してくれ。」


 屈強な叔父の身体が、見る間に肩身が狭そうに縮こまってしまった。


 かなり身長差がある二人だが、力関係はヴィリディスの方にあり、カリアトはいつも尻に敷かれていた。


「え~僕は嫌だなぁ…」


「なに、別に大丈夫だ。私一人で面倒を見れる。」


 仲が良いのかあれやこれやと騒ぎ始めた所で、少年を抱えていたマグニフが会話を遮るように叔母に呼びかけた。


「母様よ。」


「何よ。」


「こいつ熱あるぞ。」


 少年の意識は戻っておらず気絶したままだが、その息はどこか荒い。

 慣れない山道を一日中歩き通しだったため、溜まった疲労が限界を超えて出てきてしまったようだった。


「とりあえず、寝かせた方がいいんじゃないか。」


 先ほどまで言い争っていた一同は顔を見合わせると、協力して少年を担ぎ上げ、ポエラの家まで運び始めた。


 -------------



 娘夫婦たちが崩れ落ちた少年を担ぎ上げて、慌ただしく部屋から出ていった。

 斥候隊長スカウトリーダーのポラゥルもとうに去っており、先ほどの喧噪とは打って変わった静寂が部屋を包んだ。


「正直な話、驚かされた。」


 長年連れ添った妻の心境が気になり、冷えてしまったお茶を片手には話しかけた。


「一体、何がですか?」


「いやの、ばぁ様であればもっと反対するものかと思ったのじゃがな。」


 村を治める一族として、強い責任感を持った妻は、村の利益にはならない少年の滞在に対して、頑なに反対するだろうと思っていた。

 しかし、その妻が、孫娘の我が儘に対して、珍しく寛容な態度を取って見せた。

 今までの妻であればしないであろう態度に驚き、その理由が気になっていた。


「私は、なにも気に食わないから反対しているわけではありませんよ。

 一見非力な少年といえども、得体のしれない者を村に置いておくことに反対しているのです。」


「であれば、なぜ許したんじゃ?」


「それは、ポエラあの子が責任をもって世話をすると言ったからです。」


 マレッタはさも当然と言ったように返すと、入れ直したお茶に口を付けた。


「あの子も将来、村を率いる立場になるのであれば、自らが決めた行いに責任を持つべきでしょう。」


「なるほどの。」


「聞きたいのは私もです。

 貴方こそ、何も言いませんでしたね。」


 ふと横を見ると、陶器製の茶器を静かに置いた妻が、こちらに向けて非難するような目をしていることに気付いた。


「昔の貴方こそ、あのような余所者を村に入れることに反対したはずです。

 企んでいますね?」


「いやいや、何か考えがあるわけではない。」


 手を振りながら滅相もないという素振りを見せる。


「ならば、なぜですか?」


 口調こそ強いが、こちらを怒り糾弾するような雰囲気はあまり感じられず、妻としては何故という疑問の方が強いようだった。


「ワシももう年だ。いずれ退しりぞく立場なら、

 若い者が決めたことに口出しをし続けるのは控えようと思ってな。」


「…そうですか、なら何も言いません。」


 先ほどの自分の答えと似た回答を返されて、はぐらかされたと感じたのか妻はプイと顔を背けてしまった。


「やや、別にごまかしている訳じゃないよ。

 あれだけ壮健そうだったマレトロでさえ、ワシよりも先に大地に還ってしまったのだ。いつまでも、ワシが村長としている訳にはいかんと、思っておることは本心じゃ。」


 妻はその言葉を聞き、一瞬だけ表情を曇らせた。

 おそらく自分も同じような表情をしたのだろう。

 本来であればポエラの父マレトロが、村を率いる長としてこの件も裁量していたはずだった。


「そうですか。」


 妻も、それ以上は何も言ってはこなかった。


「それにな…」


 窓辺から少年が居たという〈聖森〉の方面を眺める。


「もしかしたらあの子は、かのうたわれし女神の使徒やもしれんぞ。」


 〈聖森〉への信仰は、偉大なる自然の恵みに対してというだけではない。この村が開墾される前、光の女神が荒れた世を憂い、世界を救うために自らの使徒を遣わせた場所だとという言い伝え古くより存在しているためでもあった。


「あの非力そうな子供がですか。」


 妻はこちらの言葉を悪い冗談と思ったのか、ジトーっとした目をしてこちらを睨んできた。


「まあ…違うじゃろうな。」


 言い伝えでは、その女神の使徒は、女神より幾重もの祝福と加護を受け、様々な困難を仲間たちと共に解決し、最後はその身と引き換えにこの世界を救ったといわれる。


 窓の外で、娘一家に担ぎあげられて運ばれる少年を見る。

 流石に違うだろうなと思いながら、冷えた茶に口を付けた。

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