第19話 砂辺:某所
それからしばらくは大変な騒ぎだった。
数日のうちに三人も死んだクラスから、さらに二人も死人がでたのだ。当然、警察に連絡することになる。捜索願いの出ていた根塚のことも含め、山の中であった事を話す。
警察がその話を信じてくれたかどうかは分からないけど、実際に人がいなくなっている以上、探さないわけにはいかない。
山の中、あの崩れた祠を、何日もかけて掘り返した。
だけど、兎口も根塚も、見つからなかった。
それらしい空間と、大量のネズミの死骸、逃走に使ったお米や小麦粉、祠の跡などは見つかったものの、肝心の二人はどこにも。
ただ、しばらくは小さな影や物音に恐怖していた僕も、半年もすればほとんど落ち着いていた。あるのか無いのか分からないものに怯えるよりも、目の前の期末試験の方を気にしないといけない。
坂木と中川さんとも何度も話し合い、お互いに無事な事も確認出来ていることも大きいかも。
そういえば、前に中川さんに、なんであの時お米や小麦粉を持っていたのか聞いたことがあった。
「あれはね、行方不明の人を探しに行こうとしてたでしょ。だからもし自分たちが同じように遭難でもして帰れなくなった時のために、非常食として持っていってたんだよ。出さなかったけど、鍋も一緒にね。一応行き先と、次の日までに帰らなかったら警察に連絡してくれって家族に知らせてあったし。川はあるって話だったから水は現地調達しようと思ってたんだけど、実際にあそこで閉じ込められてたらヤバかったね」
そう言って頭をかいていた。そういう事だったらしい。準備がいい割にどこか抜けてるところも中川さんの魅力の一つだ。そういえば。
「中川さん、頭、怪我でもしてるんですか? 最近なにかと触ってる気がしますけど」
「うん、なんかデキモノでもできたみたいで」
そう言いながら後頭部を向けてくる。
「あー……、確かにちょっと青くなってるところありますね」
「頭だから一応病院で診てもらったんだけど、ちょっとした打ち身だろうって。あの時、どこかでぶつけたんだろうね」
貪食の円環 i-トーマ @i-toma
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます