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 僕は力の行使を続けた。


 完全に決着するまで、気を緩めるわけにはいかない。洞窟に入ってから緊張の糸が張り詰めっぱなしで、精神的にも肉体的にも限界が近いけど、負けてたまるか!


 むしろやっとタックさんの試練にまで辿り着いて、しかもあと一歩というところまで来ているんだ。力の最後の一欠片さえも振り絞って、試練を乗り越えてみせるッ!


 …………。


 ……あれ? 僕ってここまで粘り強かったっけ?


 もしかしたらこれもミューリエの特訓の成果なのかな。体力だけじゃなくて、根性というか粘り強さも少しは身に付いたのかもしれない。


『……僕の想い……届け……』


「マズイっ! このままだと……オイラ……コントロール……が……っ!」


『……届け……届け……届けっ!』


「なんなんだ……よ……っ? この変な力はっ! 断続的に流れ込んで……くはぁっ!」


 ついにタックさんはその場に片膝を付き、ガックリとうなだれた。そして肩で荒く呼吸をしつつ、苦痛に歪んだ顔を辛うじて上げる。


「アレス……逃……げろ……」


「えっ?」


「逃げろ……。ぐっ……!」


「タックさん、それはどういう意味ですか?」


「鎧の騎士はオイラの制御下から……外れた……ッ! ヤツは今、暴走状態だ。オイラたち全員を本気で殺しに来るぞ!」


「えぇっ!?」


 驚愕した僕は慌てて振り向いた。


 すると鎧の騎士はゼンマイが切れかかっているおもちゃのような不規則な動きをしつつ、体のあちこちから金属の擦れる音が響いてきている。明らかに様子がおかしい。敵意と憎悪が宿ってそれが膨れあがりつつあるような、そんな感じがする。


「ギガガガガァ!」


 鎧の騎士は咆哮を上げ、こちらへ体を向けた。そして全身を震わせながら、ゆっくりとした動きで近寄ってくる。その響く足音と振動があの世へと誘うレクイエムのような感覚がしてくる。


 そんな感じで僕が呆然としていると、タックさんが弱々しい仕草で僕の肩を叩いてくる。


「早くこの洞窟から脱出しろ……。お前を……勇者をここで失うわけには……」


 彼の瞳に宿る光には迫るものがあった。今まで時折見せていたおちゃらけた感じは一切ない。



 ――さて、どうする?



●今すぐに洞窟から脱出する……→11へ

https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556075102014


●タックも連れて逃げる……→3へ

https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556074796630


●鎧の騎士と戦う……→32へ

https://kakuyomu.jp/works/16817139556074419647/episodes/16817139556075979151


 

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