第2話 お盆

「暑い日が続いてるね?また来てくれてありがとう!!」


「えっ?就職した会社で嫌なことがあった?どれどれ話してごらん?」


「ふむふむ…………上司がすごく厳しい人なんだ……!!」


「でも、厳しくするって事は逆に考えると君の事を認めてるってことじゃないかな?」


「えっ?会社を辞めたい?!ダメだよ!!1度決めたら突き進まないと……!!君がどれほど悲しんでも私は応援する……君がどれほど傷ついても私は君を癒してみせる!!時は遡れないし、止まって一緒にうれいてもくれない。だから顔を上げて?」


「泣かないで?私まで泣きたくなっちゃうじゃん!!」


「えっ?ここに帰って私の家と同じ農業を始める?!お願い。そんな事言わないで?お願いだから!!」


「えっ?私が恋しい……?私も同じ気持ちだよ?君が恋しい。出来るなら早くこっちに来て欲しいとも思ってるけど、そんなに早く来たら私、前にも言ったけど泣いちゃうよ?だからもう少しだけ待ってて?!」


「本当に?考え直してくれるの?ありがとう!!やったー!!私、嬉しいよ!!」


「それにしてもセミの声がうるさいね!!知ってる?蝉って土の中でほとんど一生を過して生きてるんだよ?そう考えると人間って蝉みたいだよね?土の中でひたすらもがいて……そして大人になったらあっという間に死んじゃう…………まるで夏に鳴く蝉みたいに人間ってはかない生き物だと思うよ?」


「なんか湿っぽくなっちゃったね……!!ごめんね?えっ?蝉のぬけがらを見つけたから置いておくねって?」


「ありがとう!!珍しいなぁ…………!!ねぇ、覚えてる?昔、子供の頃朝早くに起きて一緒に虫取りに行ったらアブラゼミが孵化してる様子を一緒に眺めたね?」


「その時、私が物珍しくてつい、掴もうとした時に君は怒ってたね。誰かの生まれ変わりかもしれないから可哀想だって…………あの時の君……すごく可愛かったよ?」


「そうだね。私も君と一緒になれたらどこかでまた会えるのかな?」


「また湿っぽい話になったね……本当にごめんね?」


「えっ?今度は冬に来るって?分かったよ!!待ってるね?ありがとう!!」


男は去っていった。墓地には沢山の蝋燭ろうそくが立っており、その中の1つの墓地。

時宮家之墓と言う石碑の前にセミのぬけがらが風に揺られていた。


お盆にあなたは大切な人に会いに行ってますか?

もし、行ってないのならどうかお願いです。時間を作って行ってあげてください。死人だろうが生身だろうが想いはきっと届くと思うから…………。

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彼女は最後にこう言った 古屋気ままに小説投稿 @Furuya1230

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