【エッセイ】「女性の買い物」について

進藤 進

お買い物は楽しいですね

前回、「駅前のメンズショップ」で書きましたが。


僕の買い物は、極端に早いようです。

ウチの奥さんに言わせると。


瞬時、だそうです。


でもでも。

店員さんの前で。


何度も試着する度胸は。

僕にはありませんでした。


好みの色やタイプは変わらず。

いつも瞬時で決めてしまいます。


いやいやいや。

奥さんは納得しません。


あれやこれやと。

色々、選んでくれるのですが。


僕には最初に選んだ服が一番。

あまり、変わらないのです。


一応、僕は芸大出身で。

審美眼はあります。


まして、僕なんかの平凡な男には。

そこそこで良いのです。


かえって、迷った方が。

後から、後悔します。


だから、僕の買い物は。

超、早いです。


店員さんには。

最高の客かもしれません。


※※※※※※※※※※※※※※※


話、変わって。

ここから本題です。


相変わらず長いマクラで恐縮です。


初めての奥さんとのデート。

銀座のど真ん中。


田舎出の僕には、チンプンカンプン。

有楽町のマリオンを起点に。


色々、御店を廻りました。


ヘタレな僕は。

女性と買い物したのは初めてで。


しかも僕の買い物は。

だいたい、五分以内。


カクヨミの女性陣には。

信じられない!


そう、思われていることでしょう。


だけど、辛いのです。

店員さんに待たれているプレッシャーが。


だから。

ウルトラマンのカラータイマーのように。


僕の買い物は。

五分以内がほとんどでした。


そして、彼女(今の奥さん)とのデート。

初めての女性とのお買い物。


それなりに、胸がときめいていました。


「靴を買いたいの・・・」


可愛い表情に僕は頷きました。

当時はバブル前とはいえ、景気は良くて。


僕も青天井の残業代で貯金も増えていて。

特に無駄遣いしなかったので、靴くらいプレゼントしようと思ってました。


一件目。

赤いハイヒール、1万円くらい。


自分の靴は量販店の5千円でしたが。

それくらいならプレゼントOK。


「いいんじゃない・・・良かったら・・・」

「次・・・いきます・・・」


(ええっ・・・?)


この時、僕は想像もしていませんでした。

女性の買い物の概念を。


二件目。

ブルーのパンプス。


彼女は背が高く、僕と同じくらい。

ハイヒールより、こちらの方が良いか。


「1万5000円・・・でも、良いんじゃない・・・良かっ・・・」

「次っ・・・」


鬼軍曹は、まだまだ序の口とばかりに店を後にします。

今から思うと、銀座って、どのくらいファッションのお店があったのでしょうか?


何十年後の今でも、自分の考えの浅さにあきれる想いです。


「お買い物」

それがどんなに凄まじい単語だと、僕はあの時、思い知らされたのでした。


十件目。

紫とベージュのヒールを比べながら、既に三足のヒールを試着した彼女(今の奥さん)は、すっくと立ちあがり宣言したのでした。


「次っ・・・いきます」

彼女は決して我がままの性格ではなく、むしろ謙虚な方で、それが好きだったのですが。


「お買い物」という概念が当時の僕を、「ヘタレなボウヤ」にしてしまうほどのインパクトを持ってました。


結局、プレゼントしようと身構えていた僕をあざ笑う様に彼女(今の奥さん)は言いました。


「今日の下見は終わり・・・フフッ・・・楽しかったぁ・・・」

そして、僕の腕をとって嬉しそうに歩くのでした。


それ以来。

「お買い物」の意味の深さを思い知った僕でした。


※※※※※※※※※※※※※※※


何十年たっても。

彼女(今の奥さん)の買い物は変わりません。


●クロや、●むらでも。

慎重に、そして。


「今日の下見は終わり・・・」


いつか、僕の「エロ小説」が出版されて。

彼女(今の奥さん)をブランドショップで買い物させるのが。


僕の夢です・・・。(^o^)

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