エピローグ

 私とカケルは気付けば大人になっていた。二人は結ばれ、後に生まれた子どもには『さゆり』という名前をつけた。


 さゆりはすくすくと育ち、今は警察官として必死に働いている。


 もしかしたら、あの時の『さゆりお姉さん』は『さゆり』だったのかもしれない。さゆりが幼い私を助けてくれたのかもしれない。


 そんなことを考えながら毎日を過ごしていた。ただ一つだけ、ずっと気になっていることがある。私が地上に降りる時に、二つの光となった首飾り。


 そして美穂が言った『カケル兄ちゃんとお姉ちゃんやっと帰ってきた』と泣きながら言ったあの言葉。もしかして美穂は気付いていたのでは。

 

「カケル、美穂元気にしてるかな」


「美穂か、連絡してみるか」

 カケルは早速スマホを取り出し美穂に電話をかけた。


 美穂は仕事中らしく、お昼休みに会いに来てほしいとのことだった。場所はみんなのひまわり教室。


「島袋さんにも会えるといいな」

 お昼に近くなって私とカケルはひまわり教室に向かった。


「島袋さん」

 私は島袋さんに駆け寄った。


「久しぶりだなリナ、元気にしてたか。カケル、リナを困らせてないだろうな」

 島袋さんは嬉しそうだった。


「困らせてないよ、たぶん」

 カケルは口を尖らせた。


「カケル、リナ」

 後ろから私たちの名前を呼ぶ声がした。


 美穂だ、美穂の後ろに続くように真美と卓郎も走ってきた。


「みんな久しぶり」

 私とカケルは嬉しくなりみんなと抱き合った。


 昔に戻った気分だった。


「すぐにご飯の支度をしよう」

 島袋さんの声でみんなはひまわり教室に入ると、オムライスを作った。


 みんなで生活していた時のことを思い出しながら、オムライスを食べる。島袋さんは今でもひまわり教室に子どもたちを招いていてるが、丁度昨日最後の子を見送ったらしい。今は新しい子を待っているのだとか。


 真美は相変わらずしっかり者で今は高校の教師をしているそうで、卓郎は不動産の営業をし、ひまわり教室の改築工事を来年にも行うようだ。そして美穂は結婚し、主婦をしながらスーパーでパートをしている。


 みんなあの頃とはすっかり変わっていたが、変わらないものが確かにあった。食事が終わると私とカケルは美穂を中庭に呼び出した。


「美穂、聞きたいことがあるの」


「どうしたの」


「実はあの時の言葉が気になっていて」


「あの時の言葉…」

 美穂は顎に手をあてる。


「私たちが二人でいなくなったあの日『やっと帰ってきた』って言ってたでしょ」


 美穂は思い出すのに少しの時間を要したようだったが話しはじめた。


「ああ、あの時か。あの時はカケル兄ちゃんが突然いなくなったのに、みんなカケル兄ちゃんを知らないような事を言っていて怖くなっちゃったの」


「やっぱり、美穂は知っていたんだ」

 私は美穂に全てを話した。


「そんなことがあったんだ。実は私、あの時中庭の水溜りで綺麗な石を拾ったの。これなんだけど」

 美穂はネックレスにされた綺麗な石を私の手にのせた。


 私の心臓は強く鼓動し、カケルは私の方を向き頷く。深く息を吸うとその綺麗な石を空に透かしてみせた。

 

 End.

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