第2話

 今日も一日が始まるんだ。そんなことを考えながら、通学路を歩きます。いつもより少しだけ早足なのは気のせいでしょう。少年に生き急ぐ理由はないのですから。

 学校に着くと、既にクラスメイト達は登校していて、談笑したり、宿題をしたりと各々好きな時間を過ごしています。そんな喧騒の中、少年は一人席につきます。その瞳には何が映っているのでしょう。 

 ふと、少年が視線を感じ取り、そちらを見てみると、廊下から一人の女子生徒がこちらを見ています。少年はその少女に見覚えがありました。確か隣のクラスの子だったはずです。彼女はどこか哀れむような目をしています。何故でしょう。少年はすぐにその理由に思い当たりました。

 ああ、僕が生きていることがバレているのだな、と。

 それはきっと、彼女が僕と同じだからだろうと思いました。彼女の表情の意味を、少年は正しく把握しました。少年はなるべく自然に振る舞おうと考えました。しかし、それは叶いません。

 少年の心が昨夜の焦燥の続きを始めてしまったからです。そんな中、いつの間にか朝礼は終わっていて、授業が始まりました。もちろん、その内容は入ってきません。少年の心は未だにあの女の子に占領されていたのです。

 少年は彼女に話しかけようか迷っていました。でも、それが出来ないまま放課後を迎えてしまいました。少年は勇気を出すことが出来ませんでした。

 その日の帰り道、少年は決心をします。

 明日こそ、彼女に声をかけようと。

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リスカ サトウ @satou1600

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