男同士の恋愛相談-2

 正人の元嫁と隠し子の出現によって美葉と正人はギクシャクしている。この状況で正人の元嫁に惚れてしまうとは。万が一付き合うようになったら、正人にとって元嫁が親友の彼女ということになる。正人と美葉がよりを戻してからも、気まずいしこりが残るだろう。


 分別のある大人であれば、そう言う相手に惚れるべきではないのだ。


 「……まだ、告ってねえの?」


 錬は薄目を開けて健太に問う。健太はのろのろと首を横に振った。


 「告白なんて、そう簡単にできねぇベ。アキにその気がなかったら、お互いに気まずくなっちまう。下手したら、アキはそれを気にして出て行っちまうかも知れねぇ。あの親子がまた路頭に迷うかも知れないんだ。簡単には動けねぇよ。」


 ほお、と錬は唸って健太を見る。


 「相手のことを、思いやれるようになってんじゃん。」


 二ヒヒ、と笑う錬を健太は睨んだ。しかし言い返す言葉が見つからない。本来はこれくらい相手の気持ちの在処を見定めてから告白するものなんだなと、これまでの直球過ぎた自分を反省する。


 「そっか。そんだけ、健太も本気なんだな。」


 錬はぐいっとビールを飲み干した。健太もそれにならい、二人でジョッキのおかわりを頼む。錬はザンギを口に放り込み、ゆっくりと咀嚼した。時間を掛けて味わってから、一つ頷く。


 「いいんじゃねぇの?健太が本気なら、その気持ち大事にしなよ。本当に好きな相手なんて、簡単に出会えるもんじゃないぜ。」


 運ばれてきたジョッキを捧げ持ち、健太のジョッキにコツンと当てた。


 「健太のマジ恋に乾杯。」

 「お、おお。」


 健太は若干戸惑いつつも、来たばかりのジョッキを煽る。中身は一気に半分ほど空になった。


 「どうせ恋愛するんなら、あんま色んな事気にせずに、幸せになれや。で、あの子のどこに惚れたのさ。」


 水を向けられて、健太の脳裏にアキの姿が次々と浮ぶ。


 「エクボが、可愛いんだよな……。大人しくて、でも何にでも一生懸命でさ。子供には優しいし。ちょっと抜けてるところも、可愛いんだ。子供みたいにちっこくて細いくせに案外胸はあってさ、ちょっと色っぽいのさ。ところが凄く初心うぶで、ちょっと身体が触れただけでもびっくりしちまうようなところもあってさ……。」


 色々なアキを思い浮かべながらそこに浮んだ言葉を並べていると、錬が大声で笑い出した。なんだよ、と健太は錬を睨む。錬は笑いを堪えながら言った。


 「いや、健太のドストライクで、めっちゃ受けた。」

 「そ、そうか……?」


 錬はなおもくっくと笑う。


 「エクボがあって、物静かで、色っぽい女。昔っから変わんねぇな、お前の女の趣味。」

 「そうか、な?」


 今まで好きになった女性を思い浮かべると、確かにその傾倒の女だった。健太は恥ずかしくなってビールを煽る。


 「まぁ、お前の佳音一筋には負けるけどな。」


 少しくらいは反撃しておきたくなり、話題の矛先を錬に向けた。だが大して反撃にもならないらしく、錬は素直に鼻の下を伸ばす。


 「そ、俺幸せ者。」


 しゃあしゃあと言ってのけるので、悔しくて仕方がない。健太は残りのビールを飲み干しておかわりを注文する。

 

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