安産の心得-2

 錬の顔から血の気が引く。


 「このリスクを避けるためには、日頃から妊婦さんと私たち助産師と、医療機関との連携がとても大切なの。私たちは、妊娠中期と後期に妊婦さんの検診に付き添い、病院の先生と意見交換をして、自宅出産が可能かどうかを判断して貰います。そして、最も大切にしているのはね。」


 直美は錬に向かって身を乗り出した。


 「妊婦さんに、積極的に健康管理をして貰うこと。私たちはそれをサポートします。


 自宅出産のリスクを出来るだけ減らす。その為に出来ることは、栄養の管理や、ストレスと上手に付き合うこと、適度に運動して赤ちゃんを産むために必要な体力を付けること。そういった健康管理を妊婦さんとその家族が自分から進んで行なうことが大切だと考えているの。


 その方法や、正しく出来ているかどうか見守って、寄り添うのが助産師の仕事。そして無事に産まれたら、母乳のことや沐浴の仕方、赤ちゃんとの生活についてもサポートできるわ。」


 うーん、と錬は神妙な顔で唸る。しばらく腕を組み、天井を見上げる。どう受け取っただろうか。佳音はそわそわする気持ちを抑えてチラチラと錬を見ていた。


 「えっと、すごくざっくりとしたイメージなんだけど、結局助産師さんって、お産にめっちゃくちゃ詳しいお母さんみたいな人?」 


 「は、はぁ?」

 佳音は呆れた声を出したが、直美は真面目な顔で頷いた。


 「そう、受け取ってくれたら嬉しいわ。私たちは、妊婦さんとその家族と一緒に赤ちゃんを迎える準備をします。その主役は、妊婦さん自身。赤ちゃんの健康を第一に考えて生活をして貰います。それが出来れば、赤ちゃんは自然に生まれるもの。でも、やっぱりリスクはある。その時はできるだけ早く判断し、提携の医療機関にお任せします。」


 直美の声は力強く、錬は背筋を正した。

 

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