第3話 優しさとは

居候魔女に「魔法系の才能ない」とはっきり言われてしまった俺。

正直に言おう。まあまあ悔しいもんである。

運動神経抜群で勉強もかなりできる自分であるが、できないことがあるという事実があるということが悔しくてたまらなかったけど、今はそんなこと言ってもどうしようもないのでいつか何とかなるさと考え吹っ切れた。

さて、そろそろ居候魔女を起こさねばならないんだけど、今日はどうやって起こそう。

昨日は確かリビングの机までズルズル引きずって連れてきて椅子に座らせてお箸を持たせてやって、「あれ?私なんでリビングの机で朝ごはん食べてるの?」と言わせてやった。

今日は椅子を寝室にもっていって椅子ごと天野を運んでやろう。

早速寝室に満面の笑みで「お邪魔しまーす」って入ってみると、身支度中。

「失礼しましたー。」

起きてるとは思わなかった。

お互い真っ青になった。

俺は逃げるようにリビングの机で飯を食べて何事もありませんけど何ですか?風を装った。

制服を着た天野が寝室から出てきてすぐに鞄を投げてきた。

鞄をキャッチして「かかかかか顔でも洗っていらっしゃいませ」と言ってその場をしのいだ。

天野めっちゃ怒ってる。

オーラが見える。天野の後ろに赤いオーラが見える。

その時俺は思った。いい人生だったと。

振り返ればいろんなことが・・・青春が・・・ない・・・。

高校一年生に成りたての自分はまだ青春もいろんなことも経験していない。

青春未経験で死亡。あーいやだ。すごく嫌だ。

天野が洗顔から帰ってくるなり土下座して謝った。

プライドより青春である。

「まあ、確かに君に毎日起こしてもらってるから、私も怒れない。」

目をそらしながら天野が自分の非を認めた。

助かったのか?

やったか?

「それはそれとして記憶は消しておくね。」

あー、いやだー。すごく嫌だ。絶対別の記憶も消える。

だって俺誰かに記憶消されたか知らないけど高校入学以前の記憶がないんだもん。

絶対誰か魔法使える奴の仕業だろこれ絶対。

「じゃあね。」

あーきえるー。きえるー・・・。

・・・

やはり・・・。

それは嫌だ。

「天野よ、一応聞くがそれはどこまでの記憶が消えるものなのだろうか。」

一応慎重に質問を。

「さっきの事故の記憶を消す・・・つもり。」

あー信用がない!

すごく怖い!

「つもり」っていう一番使っちゃいけない単語使った。

とりあえず、逃げよう。

用意した自分の分の朝飯を口の中に一気に突っ込んで、一瞬で制服に着替えて鞄を持って家を出て逃げた。

ジャンプして一軒家屋根に着地し、一軒家の屋根からアパートの屋根に着地し、アパートの屋根からマンションの屋根に着地し、マンションの屋根からビルの屋上に着地し、ビルの屋上からモバイルカイトで学校の方向に飛んで行った。

よし逃げれた。

さて、学校にいる間に解決方法を考えておくか。

2時間後、学校の教室にて。

俺の後ろの席に天野。

そうだった。

同じ学校じゃん。

同じ教室じゃん。

出席番号俺1番天野2番で近いじゃん。

絶対後ろから記憶いじられるじゃん。

よし、謝ろう。

「えー、天野さん。いえ、天野様。この度は誠に申し訳ございませんでした。今後このようなことがないよう、もう起こしません。」

「・・・許すから起こして。」

こうして俺は助かった。

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breaker @eno702

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