迷いの森にて

 どうしたの、ぼうや?

 こんな所にやってきて………

 ここは迷いの森。その奥も奥なのよ?

 よくここまで無事にこれたものだと感心してしまうわね。

 それとも、よくそこまで迷えるものだと呆れるべきなのかしら?


 帰り道?

 ああ、やっぱり迷った挙句ここまで来てしまったの?

 出口は知っているけど、何か書くものは持っているの?

 案内はできないわね。

 だって私は、この場に呪縛されているの!


 動くことはできないのかって?

 できないわ、わたしは今存在が確立しつつある真っ最中だから。

 精霊になるか………その中でも何の精霊になるか。

 もしくは悪霊になってしまうか。

 今は大事な時だから動けないのよ。


 だから、自力で森を出なさいな。

 え?モンスター?いるに決まってるじゃない。

 怖いの?ヘタレね。

 男なら、モンスターをなぎ倒してでも生還してみせなさいな。


 今日はここに泊まって良いかって?

 構わないわよ、ここに居る間だけは守ってあげる。

 朝になったらやさしく起こしてあげるわ………

 おやすみなさい、ぼうや。


 おはよう、旅立つ覚悟はできた?

 できてないけど行く?器用な子ね。

 私の位置は変わらないから、何かあったら戻って来ていいのよ?

 戻り方が分からないと思うって………まあ、普通そうかしら。

 なら、私のかけらをあげるわ。

 この紅い石よ。

 これを持っていれば、どこに居ようと私の居場所が分かるわ。

 戻ってこない事を祈っているわよ。


 ………ああ、戻って来てしまったのね、やっぱり出られなかったの?

 同じところをぐるぐるぐるぐる回ってる感じがしたって?

 それは多分、そのまんまだと思うわよ。

 坊やが私のかけらを持っているから、ある程度居場所は分かったのだけれど、同じ場所を行ったり来たりしていたもの。

 え?今日はもう寝る?

 ふて寝は良くないわよ、ぼうや?


 起きたけど、喉が渇いて限界?めまいがする、頭痛に吐き気もある?

 ………まあ脱水症状ね。

 わたし、純水は出せないけど、血液なら出してあげられるわよ?

 何の血液かって………あえて言うなら人間かしら。

 飲みたくないなら、そこで寝ているといいわ、悪化しかしないと思うけど。


 ああ、もう限界が来たのね。血を飲む?はいはい。

 じゃあ口を開けて、ぼうや。口移しで飲ませるから。

 え?やっぱりいいって?

 遠慮はいらないわ、真っ赤よぼうや?


 結局ちゃんと飲んだわね。偉い偉い。

 飲んだらしばらく休んでいなさい、脱水症状がなくなるまでね。

 確かすぐには治らないはずよ。

 え、この森に川か泉は無いのか、ですって?

 言われてみればそういうものは無いようねぇ


 ところで一度聞いてみたかったのだけど、あなたから私はどういう風に見えるの?

 私自身が自覚しているのは、女の姿だろうという事だけなの。

 ぼうやには私はどういう風に見えるの?

 妖艶な×××の女性………×××って何なのよ。

 は………か?ああ、裸ね!

 私はそれでも別に構わないのよ?

 目のやり場に困るですって?

 うーん、ぼうやにはなぜか、私を直視してもらいたいと思うわね。

 えいっ!これで、服が出たかしらね?

 あら、私を直視する事ができるようになったのね。成功かしら?

 でも、そういう風に私が感じるという事は、今まではチラ見だったのね。


 じゃあ、もう一度聞かせてちょうだい………私はどんな姿なの?

 髪は?色は?長いの、短いの?

 色々移り変わっているけど黒が多いのね。

 ぼうやは私が黒髪がいいと思う?そう思うのね。

 そう、じゃあ私も黒髪がいいわ。

 瞳は?これも移り変わっているの?ぼうやが一番魅力的だと思う色は何?

 紅色………そう、じゃあそうしましょう。

 固定化したって?

 私は存在が確立している最中だもの、あなたの意志の影響を受けたのよ。

 うふふ、ぼうやの色に染めてちょうだい。

 あなたの色ならいいわ、そんな気分なのよ。


 体調は楽になってきたのね。

 なら、私の肌の色も聞きたいわ。

 あら、なんてこと、透けていて分からないだなんて。

 あなたの想像を私にぶつけて来てちょうだい。

 あまり難しく考えなくても強く思うだけでいいのよ。

 え………白くなった?


 あら、自分で自分の手や、体が見えるようになったわ。

 まだ触れるようにはできないけれど。

 そう言えば唇は重ねられたのに不思議ね?

 え?服にも色を付けてくれ?このままだとまた透けて見える?

 ならぼうやが想像してちょうだい。

 さっきと同じ要領でいいのよ。

 あら、くれないのナイトドレスになったわね。

 ぼうやの趣味がよく分かったわ。


 ああ、最後に、私の顔を教えてちょうだい。

 移り変わっている?ならぼうやが一番魅力的だと思った時に言って!

 いまだ?わかったわ!

 どう、ぼうや好みの顔に固定化できたのかしら?

 とても綺麗だ、って………。

 もう、私を照れさせてどうするのよ!顔が熱い気がするわ。


 物凄く好みだ?

 ぼうやがいろいろ選んだのだから当然だわ。

 でも、お礼をしないといけないわね。

 この森でぐるぐるぐるぐる回っていたら、食料が必要でしょう?

 血液はほとんど水だから、普通に食べるものが必要でしょう?

 色々固定してもらって力がついたようだから、使ってみるわね。

 栄養のある草や、野生のイモなんかを見分ける力をあげる。

 これでしばらくしのげるでしょうから、焦らないようにね。


 いってらっしゃい、ぼうや、出口に近付けるといいわね。


 おかえりなさい………というか、出たいのなら私の所まで戻って来てどうするの?

 先に進む道に、モンスターがいる?

 その場合は、それを倒さないと先には進めないわよ?

 ぼうやは、戦えるのかしら?

 実戦経験はないけど、訓練は受けているのね。

 だったら、私の存在がもっと強固になれば、武器や防具を作ってあげられるかもしれないわ。私はね、血のイメージと死のイメージと女の情念でできているの。

 だから血から鉄分をとって、死のイメージで固めれば、きっと武具が作れるわ。

 でも、どうすればもっと強固になるかしら。


 ぼうや、あなたは私に何になって欲しい?人間は無理よ。

 悪霊か、物の怪か、精霊か………。

 下等な順番から言ったわよ?私はその中のどれかになるのよ。

 だったら精霊がいい………そうなのね。

 なら、そのイメージを、常に私に向けていてちょうだい。

 多分だけど、きっともっと固定化されるわ。


 行ってきます?モンスターを倒せるの?

 え?そうじゃなくて根菜類や薬草を探しに行くの?

 よかったわ、ぼうやが無謀じゃなくて。

 ところでそのモンスターはどんなモンスターなの?

 武装した巨大な猪………ここのボスの中では一番弱いわね。

 希望はあると思うわ。

 まあ、取り合えず今は採取に行ってきなさいな。


 はいはい、おかえりなさい、大量ね。

 え、野兎をつかまえたけど、どう処理したらいいか分からない?

 血抜きなら私がしてあげるわ。

 う~ん、はい、抜いたわよ。

 これ以上どうにかするには、ナイフが要るわね。

 作れないか、試してみましょう………。

 う~~ん!

 手のひらサイズだけどできたわ。

 柄まで鉄製で悪いけどこれはどうしようもないの。

 ウサギのさばき方を教えてあげるわね。


 はじめてにしてはきれいにできたじゃない。

 え?焼いて一緒に食べよう?

 そういえばあなた、火のつけ方とか分かるの?

 キャンプでやっていた?なあにそれ。


 なるほど、軽い野外活動なのね。

 そこで火おこしとやらを教えて貰ったのね。

 なら、今が秋で良かったわね。乾燥した枝葉はたくさん見つかるわ。

 え?今までも夜は冷えてたけど、火事が怖くてつけてなかった?

 それもそうね。なら、この辺りにある燃えやすいものは私がどかしてあげる。

 ここに呪縛されているのだから、そのぐらいはできるわよ。

 じゃあお願いして薪拾いに行く?行ってらっしゃい。


 おかえりなさい、うふふ………。

 どうしたのかって?そうね、いけないことだけど………。

 ぼうやが帰って来てくれると、ほっとするのよ、嬉しいの。

 ぼうやは私の所に帰って来て、どう思う?

 ………ぼうやもほっとするの?私に会えて嬉しいの?

 うれしいわ、これが「両思い」というやつなのかしら?

 え、まだ違うって何よ。まだ、だなんて、期待を持たせないで。

 まあ、私はぼうや好みに外見を作ったから、そう思うのね。

 それだけじゃない?助けてくれた?

 ただの気まぐれよ………人間が珍しかったから………。

 本当にそれだけよ………。


 さあ、火をつけてみせて。

 う~ん、地道な作業なのね。あっ、煙が出て来たわ!

 火種を、燃えやすい焚火の、下にひいた落ち葉に移して………。

 やった!点火したわ!凄いわね、ぼうや!

 私は火を見るのは初めてよ、とっても綺麗じゃない。

 これでウサギを焼くのね?

 血の成分の中から、塩分を作り出してみたわ。

 要は塩ね。ウサギにかけてみればどう?


 ウサギが焼き上がったわ。

 私はたくさんは要らないわ。え?半分は食べて欲しい?

 ぼうやがどうしてもと言うなら、試しに食べましょう。

 私、物を食べるなんて生まれて初めてよ。

 実体化できたのも、ウサギを手に入れられたのも、ぼうやがいたからよ。

 貴方は私の中で、大事な人ね。


 ごちそうさまでした………でいいのよね?

 何だか私、力が沸いて来たわ。

 今なら何か作れそう………

 鉄製の物で、今何が欲しいか言ってちょうだい。

 武器と防具………もっと具体的に!

 ロングソード、チェインメイル、ラージシールド?

 訓練で使い慣れた物なの?坊やは正統派の戦士なのね。

 う~~ん!ロングソードができたわ!

 私の力ではこれひとつがまだ限界みたい。

 これで、魔物を倒せるかしら?


 ぼうや………戦いに行くのね。

 武装したイノシシは、アイアンボアという名なの。

 突撃攻撃だけは避けなきゃだめよ!死んでしまうわ。

 まだ私の力不足で、防具を作っていないのだから。


 ぼうや?アイアンボアは倒せたんじゃないの?

 あなたを示す私のかけらが、先に進んだ位置に行ったわよ?

 え、また他のボスモンスターが出た!?

 なんて運が悪いの、あなたは。

 あら、怪我をしているわね………って結構な傷じゃない!

 アイアンボアの突進を受けたのね!

 早く座りなさい、傷を見せて。止血はできるのよ、私。

 輸血はやったことがないけど………私が精霊に近づいているなら、できるはず。

 横になって………大人しくしていて………これで輸血できたはず。

 あとはそのまま横になっていなさい。

 私に回復の魔力があればいいのに。


 あれから3日。治療が功を奏したようでよかったわ。

 うん、普通に動き回れるようになったわね。

 え、傷を治すのに栄養がいる?

 そうね、水だけでは生きていけないモノね。

 でも、あなたはまだ、動き回れる体じゃないわ。

 訓練施設で教えて貰った、ウサギの罠を設置しに行く?

 お願いだから、ワンダリングモンスターが出たら逃げて来てね?

 モンスターが罠にかかる可能性があるか?

 ボーパルバニーがかかるかもね、気を付けて。

 どんなモンスターなのか?

 爪と鋭い歯で攻撃してくるのよ。

 首に入ると一撃死の魔力で死んでしまうから、首だけはガードしてね。


 あら、なあに、罠を作る前にボーパルバニーと遭遇したの?

 血抜きできるかって………確かにボーパルバニーは食べられそうだけど。

 分かったわ。試しましょう。………はい、血抜きしたわよ。

 さばいて、肉を丸ごと焼くのね。塩はまだ残っている?

 私も食べるの?そうね、この前みたいに力がわくかもしれないものね。

 ………おいしい。普通のウサギよりずっとおいしいわね、ぼうや。


 力が湧いてくるわ。

 今なら何か作れそう………チェインメイルができたわ。

 細部は調節するから、着てみてちょうだい。

 どうしてかしら、あなたにぴったりで直すところがないわ。

 きっとぼうやの事を考えて作ったから、こうなったのね。

 あらあら、照れちゃって、かわいいのね、ぼうや。


 どうも私は、お肉―――死んだもの―――を口にすると力が増すようだわ。

 狩りは体に響くでしょうから、罠だけにしてね、ぼうや?

 まだまだ傷は治ってないのだから。

 え、わたしが精霊になれるように、イメージに力を注ぐ?

 精霊になって呪縛を振り払って、それから――――。

 一緒に付いて来て欲しいと?本気なの?

 馬ッ………嫌な訳ないでしょうっ!

 絶対に精霊になってみせるわ!


 ぼうや、ところでもう一匹のモンスターはどんな奴なの?

 4mはありそうな、筋骨隆々の巨人、角が2本頭に生えているのね。

 それは多分、オーガだと思うわ。人肉を好んで食べるのよ。

 見つかったら必ず追いかけてくるから、傷が治るまで行っちゃダメよ?


 今日は罠でウサギが獲れたのね!

 さっそく下ごしらえをすませて焼きましょう。

 いただきます。

 うん、これで最後のラウンドシールドも作れそうよ。

 え?その前に弓が欲しい?どうして?

 私と一緒に森を出るために時間がいるから、狩りに使う物が先に欲しい?

 確かに私の精霊化はゆっくりだわ。

 でも、もう精霊になれることは確実だと思うの。

 ぼうやはそれを待ってくれるのね?

 分かったわ、あなたのイメージする弓と矢を作りましょう。

 ………できた!

 どうかしら、使い心地は。

 最高?ありがとう。

 私の作るものは全部あなた専用みたいね、ふふふ………。


 あれから10日以上は過ぎたかしらね、ぼうや?

 え、もっと経っている?30日ぐらい?

 精霊って時間間隔がおかしくなるのかしら?

 日に日に、1日を長く感じるようになってきたわ。

 精霊化が進んでいるということは、いい事なんでしょうけど。


 とうとうオーガと戦いに行くのね。

 私はまだ、ここに呪縛されたままだから、手伝ってはあげられない。

 それに、迷いの森の攻略は、まだまだなのよ、嬉しくないでしょうけど。

 オーガなんかでつまずいていられないものね。

 必ず生きて帰って来てちょうだい。

 ぼうやがいなくなったら、私は必ず悪霊に堕ちるでしょう。

 だから、逃げてもいいから無事に帰って来てね。

 ここで、神様がいるなら祈っておくわ。


 あっ!帰って来………酷いケガ!

 なんてことなの、落ち葉でベッドを作ってあるから、横になって!

 両肩に噛み傷、胸には何かに―――角かしら―――に刺された傷。

 急所からそれていて良かったわ。

 あとは切り傷が無数にあるわ!

 じっとしていてね、すぐに止血するから………。


 止血も、輸血もしたからね。動かないでいてちょうだい。

 布が欲しいけど、私は創り出せない―――いいえ、衣装があるわ。

 さあ、私の服で作った包帯を巻くわよ。

 細菌やウイルスなんて寄り付かないわ。

 私は精霊に近づいているのだから、きっと大丈夫。

 つきっきりで看病するわ、ぼうや。


 ああ、目が覚めたのね、よかったわ、ぼうや。

 この惨状はどういう事なの?なぜ逃げなかったの?

 いい勝負になってしまって、どちらかが倒れるまで逃げられなかった?

 男ってバカね。

 胸の傷は、致命傷になっていてもおかしくなかったのよ?

 でも、あなたがここに居るという事は、オーガは倒したのね………。

 それはすごいと思うわ、ぼうや………。


 ぼうやの傷は、何か食べないと治らないわ。

 私、短時間ならここを離れられるようになったのよ?

 だから、私が食糧を集めるわ。

 野草と、野生の根菜類になるでしょうけど、がんばって。

 ぼうやの見よう見まねで罠も作ってみるわ。

 だからお願い、元気になってね―――。


 ウサギが獲れたわ、ぼうや!

 大丈夫、わたしはもう完全に実体化できるの!

 ええ、精神生命体にもすぐに戻れるわ。

 だから私が、ウサギをさばくわね。

 初めてだからガタガタだけど―――できたわ。

 ぼうや、口移しで食べさせてあげましょうか?

 あら、いいの?じゃあよく噛んで食べてね。

 そうそう!私、血の成分がほとんど水だと言ったでしょう?

 そのつながりで純水が出せるようになったわ。

 これでぼうやの傷口を洗ってあげられるわね。


 服はどうしたのかですって?つまらない事を気にしないの。

 ちゃんともう一度具現化させているわよ。

 今度は包帯に仕えるように、白にしたわ。

 そうよ、傷口を洗ったら、布も交換しないといけないでしょう?

 包帯の必要性がなくなったら、ちゃんと紅色に戻してあげるから心配しないで。

 今はまだ必要よ。


 ぼうや、目のかすみはとれた?私が見えるかしら?

 なら、自分の状態を再確認して反省してちょうだい。

 大丈夫だと思うけど、変な菌に感染しないよう、この周辺から動いてはダメよ?

 この辺りはいま私が無菌状態にしているから大丈夫だけど。

 

 これを見て!そう、鍋よ。これで病人食が作れるようになったわ。

 あとは薬草と野草、根菜を根気よく煮て、塩で味付けするだけね。

 さあ、出来上がったわ!スープに薬効があるから、残してはダメよ?

 おいしい?良かった。


 今日は罠にウサギがかかっていたわ。

 蒸し煮にして、栄養分たっぷりで、消化にいいものを作るわよ。

 恋人に看病してもらってるみたいだ?

 あら、まだ恋人じゃなかったのかしら?

 え?いいのか、ですって?当たり前じゃない。

 あなたは私にとって特別な人、愛しいぼうや………いいえ、あなた。

 ダメ!まだ寝ていなさい!ハグなら後でいくらでもできるでしょう?


 ようやく、体が普通に動かせるようになってきたわね。

 かさぶたもはったし、包帯はなしでも大丈夫そう。

 え?動きたいから狩りに行く?弓と罠しか使わないから?

 仕方のない人ね、私もついて行くわ、それが条件。

 私が戻る時間になったら一緒に戻るのよ。

 とは言っても最近は、2~3時間なら、出ていられるんだけど。


 ねえ、見て!分かるかしら!?

 今日の私は、何故か輝いて見える、ですって?

 そうでしょうね、だって私、精霊化したのだもの!

 何の精霊か?血と死と女の情念を司る複合精霊よ。

 元から持ってたものとほぼ一緒ね。

 でも大きく変わるところもあるの。

 物を作り出すのは、いちいちエネルギーを補給しなくてもできるわ。

 それに、ここから完全に離れられるのよ!

 もっとも、精霊的にはここがわたしのホームグラウンドなのだけど。


 それに、魔法を自然と使いこなす事もできるようになったわ。

 ちゃんと攻撃魔法もあるから、あなたの役に立てるわね。

 相変わらず治癒魔法が使えないのは残念だけど………。

 あなたのかさぶたが全部とれたら、一緒に迷いの森から出ましょう!

 外の世界にいくのは緊張するけど、あなたと一緒なら………って思うの。

 きゃっ!もう、いきなり抱きしめるなんて、ビックリするじゃない。

 うふふ、この先は外の世界でね。


 体調は万全みたいね、愛しのあなた。

 さあ、迷いの森を攻略しましょう。

 迷うだけで、さほど広い森ではないから、オーガの所でもうすぐ出口だったのよ。

 私と一緒なら迷う事もないから大丈夫。


 あら、いやだわ、出口の所に何か居る。

 老人の頭にライオンの胴体、大きなサソリの尻尾。

 あれは「マンティコア」という怪物よ。

 厄介なのは暗黒魔法を使ってくること。

 いえ、より厄介なのはサソリの尾かもしれないわ。

 アレに刺されたら、毒を受けるの。

 私にはどうしようもないから絶対に避けてね?

 私が精神体になってサソリの尾を何とかするわ。魔法も妨害してみせる。

 だからあなたは、正面から切りつけて!

 行くわよ!


 何とかなったわね、あなた。

 あの光は出口よ。

 私には未知の世界。

 何があっても守ってくれると信じているわ。

 

 さあ、共に行きましょう、愛するあなた―――。

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「あなたの心を離さない“ピュアな”あの子」 フランチェスカ @francesca

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