決死の共同戦線

「今度はぼくが助ける番だね!お姉さん!!」


「え!?あなたは!」


「お姉さん大丈夫?」


「アーサーくん....だっけ?なんでこんなとこにいるの!?」


「薬草採取をしてたら怖い声が聞こえたんだ。様子を見に来たらお姉さんがいたから。助けなきゃと思って。」


「そうなんだ....。でもあなたじゃ、あの魔獣たちは厳しいと思う。だから逃げたほうがいいわ」


「ぼくはお姉さんを助けたい。だからそのためにお姉さんも僕に協力して!!」


「でもあなたを巻き込むわけには.....」


「大丈夫!!ぼくはいつも泣いてばかりだけど今は不思議と勇気が湧いてくるんだ。何か妙な自信が湧いてくるんだ。」


そう言うアーサーの身体は少し光っているように見えた。


「.....ふっ、本当に面白いことを言う子ね。分かったわ、二人でここを生き残りましょ!!」


「うん!」


「さあ、来るわよ!!」


魔獣たちが再び陣形を組みアーサーに攻撃を加える。


「お姉さん!!」


「任せて!!」


アーサーが引き付けた魔獣をリナが蹴り落とし確実に気絶させる。初めての共闘だが長年連れ添った夫婦のようにリナとアーサーの息はぴったりだった。


「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


再び魔獣が叫びリナに襲い掛かる。


「遅い!!」


リナは襲い来る魔獣の下あごに蹴りを入れるとそのまま流れるように回し蹴りを顔面に打ち込んだ。


「よし!この調子なら!」


魔獣の数も3体ほどになり一瞬気が緩んだリナ。その隙を見逃がさなかった魔獣の魔の手がリナに迫る。


(はっ!!避けきれない!!)


リナがそう感じた瞬間アーサーがリナと魔獣の間に入った。


魔獣の攻撃を代わりに受けたアーサーは左肩から左腕にかけて深い傷を負った。


「アーサーくん!?何で!ってか大丈夫!?」


「うん。平気!!」


口ではそう言うもアーサーが受けた傷は決して軽くはなくアーサーは動きにくそうにしていた。


「でも......このままじゃちょっとまずいかも」


アーサーが左腕を抑えながら言った。


アーサーが怪我をしたことにより今まで優勢だった状況が一気に劣勢になる。


(このままじゃ......せめてこの子だけでも。)


リナがそう思った瞬間、魔獣が三体同時に襲い掛かる。


なんとかいなそうとするも全ての攻撃はいなせずリナも背中に大きな傷を受けてしまう。


魔獣はすぐさまリナと距離を取り次のチャンスを伺う。


「お姉さん!!」


「これくらいなら大丈夫。まだまだいけるわ!」


リナも強がってはいるが状況は最悪であり、これから襲い来る魔獣を止めるのは不可能だった。


「お姉さん!!逃げて!!」


「嫌よ!!二人でここを生き残るんでしょ!」


そんな問答をしているうちに魔獣が襲い掛かってくる。


もう間に合わないとリナが思ったその時、魔獣に向かって無数の矢が飛んできた。


無数の矢は魔獣たちを貫きリナたちのピンチを救う。


矢が飛んできた方向を見ると白い髪と長い耳が特徴的な種族がいた。


「っ!?あれは・・・、妖森人エルフ!?」


妖森人エルフって?」


「滅多に人前に現れず森の中で暮らしているっていう種族よ。本当に実在していたなんて!」


「助けて....くれたんだよね?」


「たぶん....。」


アーサーが妖森人エルフの方を見るとそのうちの一人と目が合う。


「助けてくれてありがとう!!」


アーサーとリナは思い出したかのように感謝を伝える。


その妖森人エルフは意味深にアーサーを見つめると何かを呟やき他の妖森人エルフと共に去っていった。


「とりあえず助かったね!」


「そうね、あなたのおかげで助かったわ。ありがとう」


「僕は借りを返しただけだよ。」


目の前の脅威が去り安心したアーサー達はその場に座り込む。


「それよりお姉さん、傷は大丈夫?」


「私は大丈夫、見た目ほど痛くないから。あなたの方が重症よ。早く手当てしないと」


「うん。でもその前にちょっと。」


アーサーはそう言うと左腕を庇いながら魔獣の死体に近づきその傍に屈んだ。


「どうしたの?」


魔獣の死体を意味深に見つめるアーサーにリナは問いかける。


「この魔獣.....見たことがある気がする。」


「へえ~どこで?」


「ぼくが住んでた場所で何回か見たと思う。その時はこれほど狂暴に見えなかったけど......」


「この魔獣、名前とかあるの?」


「わかんない。お兄ちゃんはパプって呼んでた気がするけど。」


「パプ.....、可愛い名前ね」


「また襲われるかもしれないから、早く帰らないとね。」


「そうね。でも帰れるかしら.....?」


「大丈夫!!ギルドに応援を頼んでおいたから。そろそろ来ると思う」


「助かるわ」


それから程なくしてギルドからの応援が到着しアーサー達は助かったのであった。


「こいつは異常だな......。どう思う?」


魔獣の死体を見ながらギルバートが隣にいる魔導士に問いかける


「そうですね....。ギルバートさんがおっしゃる通りこれは異常だと思います。血液中に含まれている魔力量が通常の個体の3倍ほどにまで増加しています。加えて外部の者、それも高度な技術によって手が加えられた形跡があります。」


「何か嫌な予感がするな......。」


「一応エルザ様にも解析を頼んでみます。」


「ああ。頼んだ。」


次回に続く。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最強家族の憂鬱~最愛の弟が冒険者になると言い出したので全力で脅威を排除します~ 悪魔の証明 @akumasuuhaisya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ