その少女の名は
「あの!ぼくの仲間になってくれませんか!?」
「は?」
少女は助けた少年の発言に戸惑いを見せた。
「いきなりごめんなさい。ぼくはアーサー。アーサー・ビルフォード。助けてくれてありがとう!」
「どういたしまして。私はリナ・バルバティーノ、で仲間ってなに?」
「ぼく、冒険者なんです!て言ってもさっきなったばかりなんですけど.....。で仲間を探しているんです。」
「.......冒険者。何で私なの?」
「それはお姉さんがすっごくカッコよかったから!」
「悪い気はしないわね。」
「お願いします!僕と一緒に広い世界を冒険してみませんか?」
「広い世界......。考えておくわ」
少女はそう言うとアーサーの言葉を待たずに飛び去っていった。
「ああ....行っちゃった.....。....薬草採取にでも行こ。」
リナはアーサーの言葉を頭の中で繰り返していた。
(広い世界を冒険か........。ふっ、いいかもね)
リナが家に帰ると怒号が飛んできた。
「リナ!!どこに行ってたんだ!!お前はいつもいつも遊んでばかり!」
「・・・。」
「大体お前は
「お父様、私は....」
「お前はローベルトの跡取りとしてしっかり働いてもらわないといけないんだからな」
「わかってます」
「それならばいいんだ。明日はヴィオレット家との会合がある、お前も来るように。」
「はい。お父様」
リナはそう言うとその場を離れ自分の部屋に向かった。
リナはベットに横になるとあることを思った。
(どうして.....誰も....私の事を分かってくれないの........。一回しかない私の人生、もっと自由に生きたい。)
「いっその事逃げ出そうかしら.....なんてね。」
リナは部屋の電気を落とし眠りについた。
次の日.....。リナたちはヴィオレット家との会合のためヴィオガイド帝国に向かっていた。
「ローベルト卿、今からヴィオガイド帝国に入ります」
「わかった。では予定通りヴィオレット家まで頼む。」
「了解しました」
しばらくすると大きな屋敷に辿り着いた。
屋敷の門に近づくと門が開いた。そこには執事服の男がいた。
「フィリップ・ローベルト様ですね?
「ありがとうございます。」
リナたちは男に一礼をすると言われた通り中に入っていった。
「ようこそ、我が家へ。私はアシリタ・ヴィオレット。皆さん歓迎します。」
「アシリタ殿、この度はお招きいただきありがとうございます。」
「いえ、以前からローベルト卿とはお話したいと思っておりました。ここでは何ですので、中へどうぞ。美味しい料理も用意してあります。」
「ありがとうございます」
リナたちは言われた通り中へ入り料理が用意してある机に座った。
「では改めまして、私はヴィオレット家の現当主、アシリタ・ヴィオレット。どうぞよろしくお願いします。」
「私はフィリップ・ローベルトです。こちらは娘のリナ・ローベルト,
アシリタ殿、今後ともよろしくお願いします。」
「リ、リナ・ローベルトです。初めまして。アシリタ・ヴィオレット卿」
「リナ殿はしっかりしておりますなぁ!私の息子にも見習ってもらいたいくらいです!」
「あ、ありがとうございます。」
「さてローベルト卿。本日あなたをお呼びしたのは他でもないフラーリア王国とヴィオガイド帝国、両国の関係についてなのですよ。」
「ほう、それはとても興味深いですね。」
「はい。知っての通り両国の関係はあまり良ろしく無くくだらない小競り合いを今日に至るまで続けています。そして我がヴィオガイド帝国の陛下も気難しいお方なのです。」
「だから私たちを通じて両国の仲を取り持とうと?」
「話が早くて助かります。」
「ですがそれは難しいのでは?」
「その通りです。だからこうして協議の場を設けたというわけです。」
「なるほど。」
「私は親善試合などが最適だと思うのですが、ローベルト卿はどう思いますかな?」
「親善試合!中々いい案ですな。ですがその親善試合で両国の溝が深まらないか心配ではあります」
「私もそこが不安ですが・・・」
両者の議論は白熱しあっという間に時間が経過した。
「ありがとうございます。ローベルト卿、とても有意義な時間でしたぞ。」
「こちらもです。アシリタ殿またこのような機会があるのを心待ちにしております。」
「ありがとうございました。未熟な私ですが色々勉強になりました。」
「リナ殿もお気をつけて。最近ここらで珍しい魔獣の目撃が相次いでおりますので」
「はい。お気遣いありがとうございます」
ローベルトは別れを済ませると馬車を発進させた。
「アシリタ殿はどうだった?」
帰りの馬車内でローベルトが口を開く。
「すごい聡明な方だと思いました。」
「そう。彼はとても優秀で尊敬に値するお人だ。彼とはぜひとも仲良くしていきたいものだ。」
(珍しい.....。お父様がこんなに人を褒めるなんて.......)
「アシリタ殿には息子さんがいるんだ」
「そういえば言っていましたね。」
「すごく手のかかるお子さんらしくて、大変だと言っていたよ。」
「そうなんですね」
森に入ったころ....突然大きな爆音と共に馬車が揺れた。
「ローベルト卿!魔獣の群れです!!ここは我らに任せてお逃げを!」
外を見ると黒い毛並みの魔獣が護衛の冒険者と戦っていた。
「お父様!冒険者の方々が!」
リナは目の前で戦っている冒険者たちの援護に向かおうとする。
「リナ!どこへ行く!?」
「どこって、助けに行くんです!」
「彼らの言葉を聞いていなかったのか!?彼らの犠牲を無駄にしないためにも私たちは逃げないといけないんだ!愚かなことはやめろ!!」
「ですが!!」
「彼らは自分の役目を全うしているんだ。ならば私たちもそれに報いるべきだ。」
二人が問答を続けていると次の瞬間、馬車が大きな揺れと共に倒れた。
「お父様!大丈夫ですか!?」
転倒時の衝撃からリナを庇ったローベルトは額から血が流れていた。
「リナ....逃げるんだ....。」
「お父様.....私は戦います!」
「馬鹿な....ことを....」
その言葉を最後にローベルトは気を失った。
覚悟を決めたリナが外に出るとそこには目も当てられないような光景が広がっていた。
狂暴な魔獣に蹂躙されるB級冒険者。必死の抵抗も虚しく冒険者たちは次々と倒れていく。
「私が相手よ!」
震える声と恐怖心を抑えリナは叫んだ。
その黒い毛並みの魔獣はリナの方を見ると臨戦態勢に入り即座に間合いを図った。
そして周りの仲間と連携を取り確実にリナを追い詰めていくのであった。
「くっ、このままじゃ!」
魔獣の猛攻を何とかいなし、反撃をするも長くは続かない。そして次第にその均衡は崩れていくのであった。
「GARUUUUUUUUU!!」
魔獣が狂ったような鳴き声を上げリナに近づいていく。
「はっ!」
魔獣がリナに襲い掛かったその瞬間リナの背後から何者かが現れ魔獣を吹き飛ばした。
「今度はぼくが助ける番だね!お姉さん!!」
「え!?あなたは!」
次回に続く。
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