第7話愛煙家の最期

久保田がガンで死に、喫煙同盟は消滅した。

残された神谷はそろそろ自身も禁煙するか迷っていた。

重度のニコチン中毒者の神谷は、禁煙外来を受ける事を決意し、病院へ行く。

「ネット検索で、こちらの病院で禁煙外来を知り禁煙したいのですが」

受付の女性は、

「現在、当院では禁煙外来を中止しています。チャンピックスが製造中止になってしまいましたので」

「他の病院もですか?」

「はい、どこの病院も同じだと思います」

神谷は、肩を落とし病院を後にした。


昼下がり、神谷は公園のベンチに座り缶コーヒーを飲みながら喫煙していた。

「おいっ、オッサン」

振り向くと高校生らしき少年が詰めよった。

「何だ?ガキ」

少年は一歩近づいた。


ドンッ!


神谷に少年の身体がぶつかった。少年は去って行く。

神谷が少年を追いかけようとすると、脇腹に鈍痛を感じた。

触ると、手のひらが深紅に染まる。

脇腹を見るとナイフが深々と刺さっている。

神谷は崩れ落ちるように倒れた。

そして、胸ポケットからタバコを一本取り出し、火をつけた。それが、神谷の最期の一服であった。

近くには、公園内、喫煙禁止の看板が揺れていた。


(終)

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愛煙家の悲劇 羽弦トリス @September-0919

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