第11話 霧の海に潜むもの
カルビヨンの秘宝こと〝オディリスの
天上の
「二人とも、勝手に決めちまッてすまねェな……」
「ううん。わたしも行くつもりだったし」
「おそらくはオーウェルどのも、オレたちが向かうことを期待していたんだろうさ」
ニセルは「ふっ」と息を吐き、停泊中の小型船へ視線を移す。
目の前の
それがまるで、最初から誰かが〝海賊島〟へ向かうことを想定していたかのように、すでに出航の準備を終えていたのだ。
「でも久しぶりに、この三人での冒険だねぇ」
「だなッ。なんか、ファスティアを出発した頃が懐かしいぜ」
エルスは出発に際し、
「まッ、俺たちも頑張ろうぜ! 覚悟だけはしとくけど、なにも
エルスは手にしていた〝ろいまんまんじゅう〟の箱を防水・防腐用の
「どうも、勇者の皆さんがた。準備はよろしいですかい?」
三人が船を
「あっしはデスアーミー
「おッ、よろしくな船長! 俺たちは準備完了だ! 頼りにさせてもらうぜ!」
エルスたちはフェルナンドと握手を交わし、互いに簡単な自己紹介を済ませる。定期船の運航が停止してしまったことで彼をはじめとする多くの漁猟団員たちが、
「承知いたしやした。――よぉーし! 気合いを入れろ野郎ども! 出航するぞ!」
「アイアイサー!」
フェルナンドの号令で、周囲の団員らが
*
海上には冷気を帯びた空気が漂ってはいるが、波風は
冷めた
そんな彼らの周囲では十数名の船員らが
「真っ白だねぇ。なんだかゆらゆらしてるし、別の世界に来ちゃったかんじ」
「ああ。それに
現在、エルスとアリサが着ている服は、ギルドの仲間たちが用意してくれた特別な
「エルスはオレたちよりも、
ニセルは黄色の瞳を細めながら、周囲を包む霧を見渡す。
カルビヨンの周辺は年中を通して温暖な気候に保たれており、通常であれば浜辺で海水浴を楽しむ観光客も訪れるほどだ。しかし謎の霧が発生して以来、海上の気温は低下しており、そうしたレジャー目的での客足は遠のいてしまっていた。
「む? エルス、アリサ。来るぞ――!」
ニセルの言葉の意味を察し、エルスは左腰に下げた
*
「敵襲ー! 総員、配置に就け!
船長フェルナンドは
「
緊張の走る船上に、若い男の大音声が響く。どうやら
その直後――。渦巻状の
「オレは船尾へまわる。エルスたちは
「了解ッ! いくぜアリサ!」
「うんっ!」
ニセルの指示に従い、エルスとアリサは船の左右へと分散した。
手早く
「おおっと勇者さん! そいつから離れてくだせえ!」
船員の警告に従い、エルスは反射的に後方へ跳ぶ。直後、目の前のシーマイマイの殻が大きく破裂し、鋭利な破片が周囲へ向かって
「うへェ……! 助かったぜ、ありがとなッ!」
「へい! こいつらは
漁猟団制式の
「わかッた! 情報感謝するぜッ!」
エルスは船員に礼を言い、周囲の状況に気を配りながら
「はあぁーッ!」
カエルの鋭利な舌を
首を失ったカエルは力なく
《こりゃ、なかなか
《ああ。それに霧の中には、まだ後続が潜んでいる》
「第二波! 来ます!」
魔海獣たちの襲撃を乗り切ったのも束の間。ニセルの言葉を裏付けるように、
「ここで
激戦の中、フェルナンドは
そんな船長の指示を受け、青いバンダナをした数名の男たちが、帆に向かって両手を
「ラジャー! 風ならオイラに任せるッス! ヴィスト――ぉ!」
風の精霊魔法・ヴィストが発動し、男の
「この馬鹿野郎ッ!? おい、マーカス!
「うひぃッ!? つつつッ、ついウッカリ……! これは事故なんスよぉー!」
フェルナンドに
「訓練をサボりおって、あの
「アイアイサー!」
勤勉な船員らは
《なんか、さっきの奴……。どッかで会ったような気がすンだよなぁ》
《そうだっけ? わたしは知らないかも》
《ジェイドの
《あー! あそこから逃げてッた奴か! あいつ、
エルスがファスティアでの出来事に思考を
《余計なことを考えてる場合じゃねェや。どうにかこいつらを乗り切るぜ!》
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