第37話 賢者の招待
多くの疑問と
「ゼレウスさんの具合は?」
エルスはゼレウスの元へと静かに近づく。彼は
《どうにか一命は取り留めたようだ。だが、油断はできないな》
ニセルは
ゼレウスが受けた銃弾は彼の右胸を貫通しており、傷は当然ながら体内にも及んでいる。ティアナらは一般的な冒険者が扱える最高位の治癒魔法〝セフィルド〟を使用しているものの、こうした重傷を完治させるまでには至らない。
これ以上の奇跡を得るためには、〝
*
ティアナとカリウスによる治療が幸いし、多少なりとも傷が癒えたのか、やがてゼレウスはゆっくりと目を開けた。そして涙を浮かべているユリウスを見るや、安心したように
「……すまぬ、心配を掛けたな」
「父さん……! 気がついたんだね!」
「ユリウスよ。ここは戦場、それに皆の前だ。
「ごめ……。失礼しました、父上……」
ゼレウスは携帯バッグから
「エルス殿。ご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ない」
「いや……。俺は結局、何もできなかった。それより大丈夫なのか?」
「
エルスたちが
ゼレウスは真っ直ぐに大穴の向こう、
その時、門の奥から小さな人影が現れ、小走りでこちらへ近づいてきた。
*
「シシッ! ようやく決着がついたようですね? おやおや、これはまた。ド派手にやらかしましたなぁ」
すると穴の
そして謎のゴブリンは修復された地面を渡りきり、エルスに一礼してみせた。
「ようこそ、勝者となられた
「もしかしてザグドか……? いや、さすがに人違いだよな?
エルスは頭を
「おやおや、
「なッ……、なんだッて!?」
ダズドと名乗ったゴブリンは、なんとザグドの弟だった。そのことにも驚かされたエルスだったが、彼が最も反応した単語は〝リーランド〟という名前の方だ。
「なぬっ!? リーランド
リーランドといえば、はるか古代の
その偉大なる名に興奮を示したゼレウスが、激しく
「ええ、ええ。あっしは新入りゆえ、あれが〝存命〟と呼べるのかは判断しかねますが。確かに
ダズドは「イシシッ!」と息を
ゴブリン族特有の
「ともかく、会ってみるッきゃねェよな……」
エルスの言葉に、仲間たちはそれぞれに同意を示す。そして八人はダズドの案内に従い、
*
城内には
「わぁー! いいなぁ、これ! 不思議の国のお城みたい!」
「なんだかすごい
「おー! まさに
見たこともないような空間に、三人娘は目をキラキラと輝かせる。そんな少女たちを尻目に、エルスら男性陣はゼレウスを気遣いながら、慎重に
「シシシッ! 皆様。足元が悪いですので、どうかお気をつけを」
ダズドの言うとおり、城内には不自然な段差や壁があり、思いのほかに歩きづらい。どうやらこの場所は、複数の空間を繋ぎ合わせて形成された場所のようだ。
「父上、傷は大丈夫ですか?」
「ああ。……それよりも見よ。この様式こそ、我がガルマニアの王城。こうして最期に目にすることが叶うとは」
懐かしき光景を目に焼きつけるかのように――。
ゼレウスは大きく目を見開いたまま、ゆっくりと首を動かしている。
「ゼレウス様……」
カリウスは槍の穂先に
彼の槍には
《リーランドか……。なんかダズドの言い方だと、
エルスは
《絵本に出てた魔王だっけ? うーん、今度は戦いにならないといいねぇ》
《ああ……。そう……、だな……》
ディークスが選んだ結末を自身の責任だと感じているのか、エルスは
《そういえば、腕の傷。いまのうちに治そっか?》
《いや、もう治っちまった。――ほら》
そうアリサに伝え、エルスは
《昔から治るのは早ェからな。ガキの頃に落としちまった指も、すぐに治ったし》
《あれって、
《いつも言ってるだろ? 放っときゃ治るッて。
エルスが幼少の頃――。彼が父親の剣で遊んでいた際に、誤って自身の指を切り落としてしまうという事故があった。
その後、泣きながらアリサの家まで駆け込んだエルスだったが――アリサの母が手当てをしようと確認した時には、彼の指は何事もなく元通りになっていたのだ。
当時のエルスは『
*
エルスらが
ダズドが
「ささ、どうぞ。
「……ダズドよ。余計なことは言わんでよい」
扉の奥に見える部屋から、
エルスたちは互いに顔を見合わせた後、静かに室内へと立ち入った。
一同が入室した場所は、机や
エルスたちは頭に本棚をぶつけないよう、注意を払いながら室内を真っ直ぐに進み、ひときわ巨大な
「ようこそ、
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