第36話 救いきれぬものたち
ディークスの魔術を破るべく、大魔法・ティルトヴィストを放ったエルス。
大魔法の天と地を
「すごかったねぇ、さっきの魔法。エルス、何ともないの?」
「へへッ、ちょっと頭がクラつくけどなッ! まッ、いつもの
エルスは笑って言いながら、自らの額を隠すかのように手で押さえる。しかし〝魔王の
烙印の効果か。それとも〝あの声の主〟のおかげか。あれだけの大魔法を使ったにもかかわらず、エルスが〝軽い
エルスは心配そうなアリサに対し、「大丈夫」とばかりに親指を立ててみせた。
「あの
「うー、悪の親玉も滅んだのだー?」
周囲に敵の気配は無いが、ティアナは
さきほどまでの激戦が
他の仲間たちも警戒を
「軍曹閣下……。ううっ、申し訳ありません……」
そんな一同の中で、いつの間にかエルス側に避難していたユリウスだけが、手で顔を覆いながら涙を流していた。そんなユリウスを慰めるかのように、カリウスが小刻みに震える背中を、ゆっくりと
同胞を
ゼレウスは
*
完全な無風状態となった
「何も起きねェな……。とりあえず、ここを離れようぜ? あっちから奥に――」
「エルス! 盾を構えろ!」
ニセルの声に即応し、エルスは
「シィッ! 防がれただと!?」
ディークスの下半身、すなわち腹から下は失われ、その断面からは
「ディークス! あんたは、いったい……」
「ホーリーシィット! テメェさえ
困惑を隠しきれないエルスたちをよそに、ディークスは残った
「なぁ、もうやめようぜ? 俺の仲間が
「ファック! 主人公ぶるんじゃねぇ!
恨みの込められた怒声と共に、ディークスはエルスに対して銃を放つ!
しかしエルスは盾で攻撃を難なく防ぎ、跳ね返った銃弾がディークスの左肩を
《まだあの人、エルスと戦うつもりみたい。気をつけてね?》
《ああ、ここは任せてくれ。なんか、この〝盾〟が俺を
エルスは
「あんたがどんな目に
襲いくる弾丸を盾で防ぎつつ、エルスはディークスとの距離を
「シャタップ! こちとらデク人形と話すような、イカレた趣味は
心の底から嫌悪するかのように、ディークスはエルスの顔面へ銃を向ける。それでも
「俺たちはデク人形じゃない。〝血〟の通った
「それだよ! それこそが〝創り物の証〟だろうがっ!」
「へッ……?」
エルスが疑問を浮かべた
傷口からは赤い血液が流れ、黒いコートの
「人間にはなぁ? そんな不気味な液体は入って
「ディークス……。あんたは何を言って……」
「ID:YT026-AC0F86-TYPE-W29-USNA003129-1A344E-DX――これが俺様に与えられた
ディークスは謎の呪文を
《うー? あの者は何を言ってるのだー?》
《わからんな。
まさに別次元。ディークスから
*
相容れぬ者同士の
不気味な静けさと緊張感だけが、両者の間で静かに張りつめてゆく。
「もう充分だろうが、銀髪野郎。さあ、一対一で決着をつけようぜ」
重々しい
「
「当たり前だ。俺様は生きるために戦争をする。テメェをブチ殺し、最強の軍国を手に入れ、盛大に戦争をおっ
エルスには――。
もう掛けられる言葉が残っていなかった。
「わかった」
渋々ながら、エルスは腰の剣に手を伸ばす。――その時、彼の後方から走ってきたユリウスが両腕を広げ、二人の間に割り込んできた!
「まっ……、待ってくれエルス! お願いします、軍曹閣下! どうか今は
「ユッ……、ユリウス……?」
彼の必死な表情に
「僕は
「ユリウスよ……。おぬしは、そのように……」
ゼレウスは手にした剣を納め、必死に訴えている息子を見つめる。彼の真剣な様子に感化され、カリウスとティアナも静かに武器を下ろしてゆく。
だが、そんな彼らとは裏腹に――。
ディークスはユリウスの背中へ向け、迷いもなくトリガーを引いた!
「ユリウス!」
「なッ……!? ゼレウスさん――ッ! うッ……、うおぉ――ッ!」
再び長銃を構えるディークスを目がけ、エルスは真っ直ぐに突撃する! そして右手に
すくい上げるような斬撃の
「ファック――! 邪魔しやがって!」
上半身だけのディークスは
「もう終わりだッ! ディークス! 降参しろッ!」
「あぁ……。どのみち、この〝
ディークスは破損した長銃を大穴へ投げ捨て、
「何を……、する気だッ……!」
「勝負はお預けだ。エルス、必ずテメェを殺してやる!」
そう言い終えるや――。ディークスは指に力を込め、自身の頭を撃ち抜いた!
彼の
やがてディークスの肉体からは白い霧が噴き出し、そのまま
「どうすりゃ……。よかったんだ……」
ただ
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