第34話 異世界からの悪意
ガルマニアの帝都にてユリウスを追い、巨大な城門を
開け放たれた門の内側には、赤い
「どうなってんだ? こりゃ」
「入ってきた門も消えちゃったねぇ」
「
周囲には円を描くように
カリウスを加えたエルスたち七人は、この闘技場の中央部へと送り込まれていた。
「よォ、待ってたぜぇ? この反逆者どもが!」
「ディークス軍曹。もはや貴公を玉座に就けるわけにはいかぬ。数々の暴虐のうえ、我らの同胞を手に掛けた貴公に、もはや皇帝の資質は無い!」
「あぁ? 勝手なジジイだな、オイ。俺様は最初から、戦争をしに〝この世界〟に来たっ
「この世界だって? どういう意味だッ! あんたは何者なんだよッ!?」
エルスの問いかけに舌打ちし、ディークスは拳銃を発砲する。しかしエルスは攻撃を予測していたようで、銃弾を〝クィントゥスの盾〟で難なく防いだ。
「この銀髪野郎が……。テメェが現れてから、どうにも
「質問に答えたらどうだ、軍曹どの? お前さんの正体は
ニセルの言葉が気に障ったのか、ディークスは彼に対して銃口を向ける。それに
「なんだ? テメェの
「ふっ、会話にならんな。使い方は恩人に習ったものだ。詳しい由来など知らんさ」
一触即発の空気に、アリサら仲間たちも次々と武器を手に身構える。対するディークスの周囲でも、奥側の入口から現れたガルマニア騎士たちが陣形を組み始めた。
*
「
「知るかよ!……まぁ、そう呼びやがるヤツも居たっけなぁ? 俺様は〝別の世界〟から来た。戦争も出来ねぇような、腐りきった地獄のような世界からなぁ!」
「別の……、世界だって?」
ディークスの弁が正しいのならば、
「あのクソ世界ではなぁ? 人間は徹底的に管理され、ただ生かされるのみだ。イカレた政府の連中に頭ん中をファックされ、ワケのわからねぇ番号を割り振られ、人間らしい名も与えられず――あげく、勝手に死を選ぶことさえも許されねぇ!」
「だったら! それが本当なら、ここで平和に暮らしゃ良いじゃねェかッ!」
「馬鹿かテメェは! 戦いが! 戦争が! この〝
ディークスは再び、エルスへ向けて銃を放つ! しかし放たれた弾丸は、アリサの大型剣によって地面へ
《エルス、油断しないでね? あの人いきなり攻撃してくるし》
《ああ、
エルスはディークスを
「テメェらみてぇなデク人形に、俺様が教えてやるよ。世界中を巻き込んだ戦争を通じ、本物の生命の重さってヤツをなぁ!」
「俺たちは
ディークスはエルスに向けていた銃口をずらし、ティアナに向けて不意打ちの弾丸を発射する。乾いた炸裂音と共に飛び出した銃弾も、ニセルの魔銃から放たれた雷撃によって、空中で
さきほどから
「なぜ俺様の銃が……。テメェら、いったい何なんだ? これまでのデク人形とは、〝モブ〟どもとは明らかに違う……! 気に入らねぇんだよ!」
「なぁ、ディークス。あんたの苦労も別の世界ッてヤツも、俺には理解も想像できねェけどさ……。もう無駄な戦いはやめようぜ?」
「クソが……! まさか、こいつが〝主人公〟だってのか? いや、そんな
戸惑いを振り払うかのようにディークスは雄叫びを上げ、額の汗で金色の短髪を逆立てる。次に彼は背負っていた大型銃を外し、エルスに向かって狙いをつけた。
「ディークス軍曹、エルス殿の言うとおりだ。武器を下ろしたまえ。決して
「そっ……、そうです! 軍曹閣下! 父上は――騎士団長は、きっと悪いようにはいたしません! 僕たちが間違っていました……」
父・ゼレウスの言葉に続き、ユリウスも
「どいつもこいつも銀髪野郎に
ディークスは怒りの形相を浮かべ、ユリウスに対して銃口を向ける。
するとユリウスは
「絶対に認めねぇ……。この俺様こそが主人公だ! エルスとか言ったな? テメェをブチ殺し、それを証明してやる!」
ディークスは
砕け散った玉からは
すると間もなく、
*
「どうだ、モブには
「こいつらは〝
「
ディークスの弾丸は
「反逆者どもを
「やらせるかよッ! いくぜ
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