第27話 瘴気の森を抜けて
かつて、アルティリア王国の辺境都市トロントリアとガルマニア帝都との境界には、シエル大森林という名の美しい森が広がっていた。
森は近隣で暮らす人々に資材や食料といった、豊富な恵みを
だが、七十年前のガルマニア滅亡の後――。帝都の周囲一帯は高濃度の
樹木の
そして、いつしかこの地は〝
エルスたち〝特攻部隊〟は〝帝都奪還作戦〟の総司令官であるディークスの命令によって、一足先にトロントリアを
そして、今まさに――。
*
「うげェッ……。話には聞いてたけど、これはかなり手ごわそうだな……」
エルスの目の前にあるのは〝闇そのもの〟といった
「すごい瘴気だねぇ……。エルス、大丈夫?」
「いざという時は、ミーの
体内の
「ああ、ありがとなッ。とはいえ、これは……。どちらかというと体力だな……」
「エルスが一番、体力ないもんねぇ。――あれ? ティアナちゃん、どうしたの?」
アリサはパーティの後方で、ひとり赤面しているティアナの方を振り返る。どうやら彼女はミーファの言葉を曲解してしまったらしい。
エルスは
*
「オレたちは
「うむ……。諸君らに危険な役を任せることになり、誠に心苦しいが……。どうか、よろしく頼む……」
ニセルの確認に対し、騎士団長ゼレウスは丁寧に頭を下げる。本日は
「後方支援は、私にお任せをっ! 休憩用に、こまめに
「ああッ。頼んだぜ、ティアナ! それじゃ
一同は
何もない空間から
「よしッ! それじゃ、突入だ――ッ!」
エルスは気合いと共に、〝闇〟の中へと足を踏み入れる。
そして分厚い瘴気の壁を突き抜けると――。
そこには薄暗い迷路のような、奇妙な森が広がっていた。
完全に視界を
「なんだ、この森? 瘴気のせいもあるけど、なんか変だな……」
「あっ、この感じ――! もしかして……」
ティアナは
「マピクト――!」
探査の光魔法・マピクトが発動し、ティアナの持つ
「やっぱり! この森、
「おおッ、すげェ!――ッていうか
世界に
「こりゃ、下手に突っ込むと迷ッちまいそうだな……。なぁ、ゼレウスさん。どっちに行きゃいいか、わかるか?」
「ああ……。以前と比べ、
ゼレウスは慣れた手つきで地図を操作し、描画が消滅しかけているポイントを指でさす。その位置を確認し、ティアナはアルティリア式の敬礼をしてみせた。
「わかりましたっ! それじゃ、
「さすがは
ティアナを称えるミーファに続き、アリサも彼女に同意を示す。
「うんっ! これでわたしたちは、魔物に集中できるね」
道中ではエルス、アリサ、ミーファの三名が前衛となり、ニセル、ティアナ、ゼレウスが後衛へと回る。
「あっ、分かれ道。ちょっと待ってね!」
ティアナはエルスの前へと走り、今度は右手に
「マルポルト――!」
光魔法・マルポルトが発動し、杖の先から光の
「これでよし! あとから来る
「やるなぁ、ティアナ! なんか、順調に行けそうな気がするぜッ!」
*
「いかにも出てきそうな感じだな……。よし、行くぜッ」
エルスは覚悟を決め、細道から広場の中へと突入する。
すると案の定――。
「なッ……!? なんだ、コイツらは……」
「
出現した魔物たちの正体は、力尽きた騎士らの遺体が高濃度の瘴気に
すでに肉体は崩壊し、自我は
今度は人類の敵である、魔物の一員として。
「おお、誇り高きガルマニアの騎士たちよ――。諸君、もはや遠慮はいらぬ。二度と動かぬよう、粉々に打ち砕き、焼き払い、大いなる闇へと
「……わかった。それじゃ
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