第17話 不思議な旅立ち
エルスたちがランベルトスにて、仲間同士の
「さてっ、これで準備完了かな!」
「おおっと、忘れちゃうとこだった……」
アルティアナは机の上に並べられた、三通の封筒を冒険バッグへ入れる。これはとても大切な、三人の小さな友達へ向けた別れの手紙。
彼女がバッグを愛おしげに
「姉上……。アルベルトです」
「はいはーい! いま開けるね!」
王族らしからぬ返答と共に、アルティアナがドアを開く。
「あっ……。お母様もいらしたのですね。失礼いたしました」
「いえ。……最後くらいは
そう言ってエイチェルは
「えっ? うん、わかった! じゃっ、二人とも入って入って!」
アルティアナは二人を招き入れ、そっと静かにドアを閉める。
室内に入った二人は立ったまま、部屋の主と向き直る。もうすぐ王女は
「あはは……。ごめんね。私、本当に追放されちゃった」
「姉上――。ティアナ姉さん……」
昼間の
その内容は、共に戦った冒険者から聞かされた〝
「なーんとなく、私も怒られるんだろうなーってことは、覚悟してたんだけどね。あまり出歩くなって、何度も注意されてたし……」
その後、父である国王アルヴァス・アルファリス・アルティリアから、
「こんな
「大丈夫大丈夫! 今日は泊めてもらうアテがあるから! ちゃんと〝友達〟にも、お別れしておきたいからね」
「城下の教会ですか……。また孤児院へ
母の言葉に、アルティアナはバツが悪そうに
『あの施設には、非道なる砂漠エルフも居るのですぞ? 王女殿下も王家の者ならば、あれとの深き因縁を存じておられるはず』
『
自身が責められるだけならば、いつものように軽く受け流すことができる。しかし、大切な友人を中傷されることは何よりも
純白のドレスを
「まぁー、悪いのは私だし! きっとお父さ――陛下にも、深いお考えがあってのことだと思うから! ほら、ベル。もう
アルティアナは、泣きじゃくるアルベルトを抱きしめる。彼は自身よりも二つ年下の十四歳。すでに姉よりも背は高く、立派な大人の男といえる。
「あなたには建国の王アルファリスの――。偉大なる〝継承者の名〟がついてるんだから。何があっても、その名前が守ってくれるから。ねっ?」
アルティリア王国は代々、性別を問わず〝人間族の王〟によって統治される慣わしだ。現王の
「こんな……。こんな名前なんて……。姉さんの方が、ずっと強いのに……」
「ベル、悲しいことを言っちゃだめよ。この国のこと、しっかりと守ってね?」
アルティアナは弟の頭を
「それで……。教会を出た、その後はどうするの?
「じつは、ちょっと旅してみたい
不安げな母に
すでに行き先は決めている。しかし、それを話せば無用な心配をかけてしまうだろう。この繊細で心優しい母に、これ以上の心労をかけさせるわけにはいかない。
「そう……。わかりました。――どうか幸運を、アルティアナ。いつでも
娘の気遣いを感じたのか、母・エイチェルも深くを
*
エイチェルとアルベルトに別れを告げ、アルティアナは
まだ事情を知らされていないのか、すれ違う兵士らは普段どおりの敬礼をするのみで、特に別れの言葉をかけられることもなかった。
「あはは……。やっぱり、ちょっと寂しいね」
アルティアナは振り返り、魔法の灯りに照らされた城の姿を両眼に焼きつける。〝王族〟という地位には未練はない。――だが、〝生家〟を失うとなると話は別だ。
「恵まれてるよね、私は。これでも、まだまだ恵まれすぎてるくらい」
王都の
「よし! 頑張ろっ!」
悲しみ・後悔・罪悪感――。心を
まずは教会へと
「いざっ、〝不思議〟と仲間を追いかけて! 会えるかなぁ、エルスたちに……」
彼らは傭兵として、ガルマニアの〝帝都奪還作戦〟に参加すると言っていた。二人とは今日知り合ったばかりの関係であるが、アルティアナは言葉では表せないような、不思議な運命めいたものを感じたのだ。
*
そして、その翌日――。
アルティアナは名実共に〝不思議な
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