第13話 アセンション
初めての
「ふぅ……。ここでいいか。アリサ、手伝ってくれてありがとな」
「ううん。
暗闇への入口の
「中に置いてきちまうと〝
「うん。かわいそうだもんねぇ」
エルスは物言わぬ冒険者たちを一人ずつ、
やがて五人の
「じゃあな……。ダブレイの仲間たち。――神の霧と共にあらんことを」
エルスは目を
続いてエルスは〝五本の武器〟を、遺体のあった地面へと突き立てた。
「〝
「大丈夫じゃないかな? エルスの気持ちは伝わっただろうし」
すべての人類は生命が尽きたあと、白き〝霧〟へと還ってゆく。その際、死者と
「んじゃ、俺らも教会に向かうとすっか」
「そうだね。ティアナちゃんたち、無事に戻れたかなぁ」
冒険者たちの〝見送り〟を終え、二人はエルスの魔法で森の中を駆け抜ける。周囲の〝霧〟が
*
エルスとアリサは、続いて徒歩で教会へと向かう。この教会の歴史は古く、はるか
「教会に行くのも久しぶりだねぇ。ちょっと楽しみかも」
「俺はあんまし、いい思い出は
幼少時のエルスは〝光魔法〟を教わるべく、アリサと一緒に教会での〝儀式〟を受けた。しかし〝人類ならば誰でも扱えるはずの光魔法〟を、あろうことかエルス
「あン時のジジイの目ときたら……。俺をバケモンみてェに見やがってさ。かなりのジイさんだったし、別の
「ここの
苦い思い出の話をしながらも、二人は霧に包まれる王都を進み、街外れの教会へと到着した。広い敷地内には〝孤児院〟が
アリサが教会の扉を開き、二人は並んで中へと入る。質素な礼拝堂内ではエプロンドレス姿のアルティアナと、法衣を
「あっ、二人とも! よかったぁ……」
二人に気づいたアルティアナは小走りに駆け、エルスとアリサの手を交互に握る。
「ただいま、ティアナちゃん。どうだった? お昼に間に合った?」
「うん! エルスの魔法のおかげで、なんとか! 本当にありがとね」
「いやはや……。まさか扉を突き破ってこられるとは思いもしませんでした。幸い、この〝霧〟のおかげで
中年の聖職者は苦笑いを浮かべ、ゆっくりと三人の元へと近づいてゆく。そして伸ばした両手の指を組み合わせ、祈りのポーズを作ってみせた。
「ようこそ、教会へ。私は
「ああッ……。冒険者のエルスッで……、ござッ……。言いまッス……」
「はじめまして、
エルスは相変わらず
「ティアナさまより、詳細を拝聴いたしました。エルスさん、アリサさん。あなた方が〝我が子ら〟を救ってくださったのだとか……」
「うーん……。俺らが着いた時には、ほとんど終わってたッていうか――」
「……エルスっ!……」
アリサはエルスを
「ああ、お気を
「いやぁ、なんていうか……。すげェな、あいつの
「ナディアは〝砂漠エルフ〟の一族ですからね。やはり、
マルクトは悲しげに
街の外などといった、いわゆる〝
こうした係争地を移動する際には、自らの安全は自分自身で守る必要があるために、護衛や用心棒といった〝
「まぁ……。元々はダブレイたちが〝人さらい〟をやってたせいでもあるし。あいつらは
「おお、そうですか……。神に代わって感謝を。ありがとうございます」
マルクトは丁寧に頭を下げたあと、
「将来は〝聖女〟になりたい――。
「ミチア様?」
「ええ。我が教会に伝わる〝伝説〟のひとつです。お聞きになりますか?」
マルクトの言葉に、エルスとアリサは思わず顔を見合わせる。しかしながら、彼の話したがっている様子を察し、
「ははっ。お時間は取らせませんよ。はるか昔、
伝説の内容は単純明快で、若者に連れられたきた〝少女〟が神に一生を捧げ、
「うーん。伝説ッてわりには……。なーんか普通ッていうか……」
「エルス、失礼だよ? でも、この石像。あんまり
「それ、おまえだッて失礼だと思うぞ……」
二人の率直な指摘を受け、マルクトが声を出して笑う。彼の話を聞いている間に、どこかへ去ってしまったのか、気づくと周囲にアルティアナの姿は無い。
「ええ、そのとおり。このお姿は、まだ孤児だった
「へッ? 復活?」
思いもよらぬ単語を耳にしたエルスが、前のめりに聞き返す。
「そうです。ミチア様は、当時の〝自由都市ランベルトス〟にて
「人が……、生き返った……?」
わかりやすく
「復活されたミチア様は、
「アッ、アインスだって!?」
思わず大声をあげたエルスに驚き、マルクトが目を丸くする。
「ああ……。申し訳ねェ。――ほら、絵本とかでよく見る名前だったからさ」
「なるほど。確かに、有名な絵本の登場人物と
またしても登場した、アインスなる者の名前。
その後もマルクトとの会話は続き、取り留めのないやりとりが続いたが――。
今のエルスの耳には、なに一つとして届かなかった。
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