第10話 好奇心を追いかけて
「ソルクス――っ!」
まずはアリサが照明の光魔法・ソルクスを発動し、周囲の空間を照らす。
ここの通路は人間族の大人が、五人は並べるほどの幅はあるようだ。また、森に開いた〝穴〟に
「サンキュー、アリサ! こいつを
エルスは宙に浮かんだ光球に
「わっ、手馴れてますね! では、お次は私の番です!」
アルティアナは自身の冒険バッグから、両手ほどの大きさをした、長方形の〝
「マピクト――!」
光魔法・マピクトが発動し、アルティアナの
「おおッ、すげェ! 地図じゃねェか!」
「はい!
アルティアナは二人に対し、
「こうやって見てみると、
エルスは地図を指さしながら、即席の作戦を練る。子供は時として、予想外の行動をとる。三人で散開して探すよりも、しらみつぶしに調査をした方が賢明だろう。
「見落としちゃいけねェし、分かれ道で待機する奴と、探す奴に分かれようぜ」
「そうだね。ティアナちゃん、子供たちは
「ええっと……。ミケル君、ベランツ君、あとはナディアちゃん。孤児院の子たちの話によると、この三人ですね」
どうやら三人の児童は、アルティアナよりも先に〝宝〟を見つけるべく、秘密裏に計画を練っていたらしい。
「一応、装備やアイテムは準備したらしいんですけど……」
「準備ッて言っても、
「とにかく、急いだほうがよさそうだねぇ」
アリサの意見に、二人は
また、肉食の動物が入り込む可能性もあれば、空腹や
*
三人は
「ここだな。アリサとティアナは待機で。明かりは持ってくけど、問題ねェよな?」
「はい、もちろん! ソルクス――!」
アルティアナは
「えへっ、真似しちゃいました!」
「いい感じだなッ! ンじゃ、行ってくるぜ! フレイト――ッ!」
風の精霊魔法・フレイトが発動し、エルスを風の結界が包み込む。風を
*
「ううっ……。私が、もっと考えて行動していれば……」
「きっと大丈夫だよ。ほら、顔を上げよっ?」
アリサは
「そうだね……。うん! ありがとう、アリサちゃん!」
「うんうん、その意気だよ。エルスもいるし、頑張って探そっ!」
アルティアナはアリサに対し、はにかんだような笑顔を浮かべてみせる。それに応じるかのように、アリサも彼女に嬉しげな笑みを見せた。相性が良いのか同年代であるためか、彼女たちは早くも打ち解け合ったようだ。
こうして二人は
*
「あっ、帰ってきたみたい」
アリサの声でアルティアナが通路へ目を
エルスは二人と合流し、フレイトの魔法を解除する。
「だめだ、誰もいなかった。次に行こうぜ」
「はい! 急ぎましょう!」
エルスらは地図を頼りに、さらに
「うーん。大声で呼んだりしたほうがいいかなぁ?」
「いや、何が
エルスの言葉どおり、この
「そっか。それじゃ、探してくるね」
「俺も行ってくる。ティアナの
*
しばしの捜索を終えたあと、アルティアナの待つ地点へと戻った二人。すると、そこには一人の幼い少年がおり、
「ただいまッ! おッ、見つかったのか!?」
「はいっ! この子はベランツ君。やっぱり、三人でここまで来たそうです」
「ごめんなさい……。冒険者さんにも、ご迷惑をかけました……」
ベランツ少年は震える声で謝罪を述べ、礼儀正しく頭を下げた。彼の姿に過去の自身を重ねたのか、エルスが反射的に身震いをする。
「そッ……、そんな気にすんなッて! 俺らが友達も見つけるからさッ!」
「はい……。ごめんなさい……。よろしくお願いします……」
「おうッ! 困ってる人を助けンのが、冒険者の役目だからなッ!」
エルスはベランツの頭を軽く
ベランツ少年を加えた
「奥から怪しい声がして……。ぼくは帰ろうって言ったけど、ミケルは〝勇者〟になりたいって……。うう……。ナディアも〝聖女〟になるって言って聞かないし……」
ベランツは涙声になりながら、途切れ途切れに事情を説明する。
内容を要約すると、ベランツが奥から聞こえた〝声〟に恐怖を感じて帰還を提案するも、冒険心あふれる二人は彼を置き、先へと進んでしまったとのことだった。
「声って、どんな感じだったの?」
「ええっと……。男の人たちが下品に笑ってるような……。だから怖くて……」
「なッ!? これは、急いだ方がいいな」
エルスの声に驚いたのか、ベランツが立ち止まり、その場で
「
「うん。わたしたち、先に行って見てくるね?」
アリサは少年を
「二人とも、お願いします。どうか彼らを救ってあげてください」
「ああッ! 任せとけ! よし、行くぜアリサ!」
*
アルティアナに少年を任せ、エルスとアリサが通路を駆ける。
ならず者となった冒険者か、それとも盗賊か――。いずれにせよ子供たちは、
エルスが足元へ注意を向けると、風化した石レンガや土の上に、食後の生ゴミや
「ここに〝誰か〟が居るのは、間違いねェようだな……」
「やっぱり悪い人かなぁ?」
「わからねェ……。
エルスは自らの
やがて、ゆるやかにカーブした通路の先に、ゆらめく炎によって照らされた〝広間〟があるのが確認できた。
「そこに居るな……。アリサ、戦闘準備だ」
彼女が
「このクソガキが! いい加減に
どうやら広間内は、エルスが
「へッ……? なんだ……? どういうことだ……?」
自身の視界に映った光景を理解できず、エルスが間の抜けたような声を出す。
広間の中に居た者は、人質にされた幼い少年と、彼を人質にしている男。さらに剣を手にしたもう一人の男と、彼と
そして、彼女の周囲に
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