最終話 いざ、新たなる冒険へ!
アルティリア北方の高山地帯。
勇者ロイマンの
――その時、
「オッ? なんだ?」
ゲルセイルは手で
「――ミルセリア大神殿より
銀髪の幼い少女が語った内容は、ランベルトスのギルド制度が全世界へ適用されるというものらしい。少なくとも、今の彼らには価値の無い情報だ。
「フン。ペテン師め」
「ふふっ」
ロイマンは一笑に付し、雪山を進む。彼のすぐ
「チェ、ランベルトスか。
「いいなー、あたしも銀髪がよかったかも!――あっ、待ってよゲルっちー!」
興味なさげに歩き始めたゲルセイルを、アイエルが
彼らの最後尾で、ラァテルだけが空を見つめていた。
「銀髪か……」
そう
「――エルス。貴様の
「ふぅむ、やはりザグドは戻りませんか。どのみち、あれの弟はとうに逃げ出していましたがね」
「
「ええ。もはやランベルトスは用済みです。
ボルモンク
「――銀髪。そう、昔見た時と同じ……」
ゼニファーは足を止め、窓の外を
「じゃ、やっぱりエルスって――」
「――何をしているのです? ゼニファー! 急ぎなさい!」
「ごめんなさい、
「……まだ黙っておいたほうが、イイかもねん……?」
「銀髪かぁ。誰かさんを思い出すわね……」
魔法王国リーゼルタ・王立魔法学校。
校舎の窓から外を眺め、ジニアは
空に浮かんだ少女の幻影は、なにやら小難しい内容を説明しているようだ。
「ランベルトス? エルスたちが行くって言ってたっけ。はぁぁ……。元気かなぁ、ニセルさん……」
理解できる単語を拾い上げ、ジニアは再び大きく息を吐く――
「――ジニアー! お昼だよん? 買出しに行こーぜー!」
「うふふふ。ジーちゃん、いそご? ほら、いそいで?」
「ちょっ! 二人とも、いつから居たの!?」
頭の中で妄想が広がりかけた矢先、ジニアは学友たちの声で現実に戻される。
「――って言うか! ジーちゃんは
「ええー、かわいいのに。ねぇ? うふふふふ……」
「なんで、いつも壁に向かって話してんのよっ! ほらっ、行くわよ!」
ジニアはズレた眼鏡を正し、二人の少女と共に購買部へ向かう。
「よーッし!
仲間たちと宴席を囲み、エルスが飲み物を
「あーッ、
酒場にて合流した四人は報酬を山分けし、早めの祝杯を挙げることにした。
「ふっ、それが冒険者の
「うんっ! それにしても、すごい金貨の山だったねぇ」
「ふっふー! 黄金の力は聖なる力! つまり、正義の証なのだー!」
ミーファは皿に盛られたカラアゲにフォークを突き刺し、次々と口へ運ぶ。エルスも手を伸ばし、一口かじる。
「おッ? これって、ツリアンで食ったヤツじゃ?」
「へぇ……、気づいたかい? やるもんだ……」
厨房から現れた
「実は今、ツリアンのシェフに料理を教わっていてな……」
「こんばんは! 皆さんっ!」
続いて姿を見せたメイド姿の女性が、丁寧にお辞儀をする。彼女はツリアンの宿で出会ったロマニーだった。
「あッ、あン時の姉さん!――ッていうか、その服ってミーファの……」
「おー! まさに正義のメイド服なのだー!」
「はい! あまりにも可愛らしくて、頑張って作ってみました!」
ロマニーは嬉しそうに、その場でくるりと回ってみせる。
「すごい、みんな器用だねぇ」
「ああ。よく似合っている」
「皆さんのおかげですっ! ありがとうございました!」
可愛らしくポーズを決め、ロマニーは再び厨房へと戻っていった。早い時間にもかかわらず、心なしか店内も賑やかだ。
「ウチの
「街道沿いのッて……。まさか……」
「あっ。あの時の、正義の道!」
「見よ! ミーたちの正義は、見事に継承されたのだー!」
エルスたちが林を抜けてランベルトスへ向かう際、魔物と共に木々を粉砕していた。結果的に、それが新たな開拓道となったようだ。
「アンタらの仕業かい? 俺からも礼を言うぜ……。おかげさんで、ウチにも
「そっか。ツリアンにも、お客さんが増えるといいなぁ」
「だなぁ。とりあえず、戦争の心配は無さそうだしなッ!」
「そういえば、『商人ギルドの陰謀』とは何だったのだー?」
ミーファは疑問を口にする。彼女の料理を
「あー……。それな、念のため
エルスは一度
「――あの悪趣味な人形を大量に作って、世界中に売りさばくんだってさ……」
より
その後、人形の魅力によって骨抜きにされた彼らから重要な情報を抜き取り、ランベルトスが介入することで内側から支配するというものだった――。
『これぞ、ワシの「少女細工による征服計画」なのぢゃ!』
『なんだそりゃ……。怪しい
『その通り! 各国の「
「――なるほどな。下手に兵力を持つよりも、恐ろしいかもしれんな」
「そッ……そうなのか? 馬鹿らしくて、上手くいくとは思えねェけど……」
「ふっ。まぁな」
ニセルは含みを持たせるように言い、静かにグラスを
「そういえば、次の目的地は決まったか?」
「ああ、それなんだけどさ」
エルスは食器を置き、仲間たちの顔を見回す。
「――ガルマニアに、行ってみてェなッて」
「おー! ミーは賛成なのだ! 強烈な悪の気配を感じるのだー!」
「ガルマニア? あの、魔王に滅ぼされたっていう国?」
「そうだ。今は近隣のトロントリアに、帝国の残党騎士たちが集まっている」
「じゃあ、魔王を?」
一同の視線を受け、エルスは満面の笑みを返す。
「ああッ! 倒しに行くぜッ!」
「そうか。それが、お前さんの目的だったな」
ニセルは目を閉じ、エルスに向き直る。
「――だが、ガルマニアは謎が多い。魔王が生み出した壁と結界によって、近づくことも出来んそうだ」
「上手く説明できねェけど、まだ
エルスは言いかけた言葉を、慌てて修正する。
「――じゃねェや……、まだ
数十年前。
魔王によって滅ぼされ、今なお封印されているとされるガルマニア帝国。
魔王の
「わかった、それでいこう。ただ、かなり危険だ。油断は禁物だぞ?」
「うんっ! しっかり準備しないとだね」
「ふふー! 新たなる地に、正義を刻むのだー!」
「ああッ!――ありがとな、皆ッ!」
エルスは立ち上がり、気合いを入れるべく拳を突き上げる!
「――よしッ、次の冒険はガルマニアに決定だッ!」
――新たなる目的地を定め、エルスたちの冒険は続く!
彼らの冒険は、はじまったばかりなのだ――!
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