最終話 いざ、新たなる冒険の旅へ!
アルティリア北方の高山地帯。
勇者ロイマンの
その時、
「オッ? なんだ?」
ゲルセイルは手で
「ミルセリア大神殿からの
銀髪の少女が語った内容は、ランベルトスのギルド制度が全世界へ適用されるというものだった。少なくとも、今の彼らには価値の無い情報だ。
「フン。ペテン師め」
「うふふっ……」
ロイマンは一笑に付し、構わず雪山を進む。
ハツネは物憂げな目で空を見上げたあと、ロイマンの背中に続く。
「チェ。ランベルトスか。
「いいなー、あたしも銀髪にしたかったかも! あっ、待ってよゲルっちー!」
ロイマンらの後をゆくゲルセイルを、アイエルが
そんな彼らの最後尾で、ラァテルだけが静かに空を見つめていた。
「銀髪か……」
ひとり
「エルス――。貴様の〝
*
「ふぅむ。どうやらザグドは失敗したようですね。――まあいいでしょう。どのみち
「
「ええ。もうランベルトスは用済みです。
ボルモンク
「銀髪……。そう、あの時もそうだった……」
ゼニファーは足を止め、窓の外を
「じゃあ、やっぱりエルスって――」
「何をしているのです? ゼニファー。急ぎなさい!」
「ごめんなさい、
「これは……。まだ黙っておいたほうがイイかもねん……」
はるか前方を
*
魔法王国リーゼルタに
校舎の窓から外を眺め、ジニアが
「銀髪かぁ。誰かさんを思い出すわね……」
あの彼女はさきほどから、なにやら小難しい話をし続けている。
「ランベルトスかぁ。エルスたちが行ってるんだっけ。元気かなぁ、ニセルさん」
どうにか理解できる単語を拾い上げ、ジニアが再び大きな息を吐く。
「ジッニアー! お昼だよー! 一緒に買出しに行こーぜー!」
「うふふふ。ジーちゃん、いそご? ほら、いそいで? ね?」
「ちょっ!? 二人とも、いつからいたの!?」
頭の中で甘美な妄想が広がりかけた矢先――。
不幸にもジニアは学友たちによって、現実へと引き戻されてしまったのだ。
「って言うか! ジーちゃんは
「ええー? かわいいのに。ねぇ? ほら、かわいい。うふふふふ……」
「なんで壁に話してんのよっ……! わかったから! はやく行くわよっ!」
ジニアはズレた眼鏡を正し、二人の少女を引き連れて購買部へと向かう。よほど〝宣託〟が珍しいのか、屋外の浮遊岩の上では、多くの生徒が弁当を広げていた。
*
世界中に〝宣託放送〟が行き届き、
「よーッし! みんなお疲れさんッ! さぁ、乾杯だッ!」
仲間たちと
「あーッ!
「ふっ、これが冒険者の
「うんっ。それにしても、すごい金貨の山だねぇ」
テーブルの中央には今回の報酬として受け取った〝金貨〟が
「ふっふー! 黄金の力は聖なる力! つまり、正義の証なのだー!」
ミーファは皿に盛られたカラアゲにフォークを突き刺し、次々と口へ運ぶ。エルスも負けじと手を伸ばし、
「おッ? これって、ツリアンで食ったヤツじゃねェか?」
「ほう……。気づいたかい? やるもんだ……」
「じつは今ぁ……。ツリアンから来たシェフに、料理を教わっていてな……」
「こんばんは! 皆さん!」
「あッ、あン時の姉さん! ッていうか、その服ってミーファの……」
「おー! まさに正義のメイド服なのだー!」
「そうです! あまりにも可愛らしくて、私も頑張って作ってみました!」
メイド服を着たロマニーが嬉しげに、その場でくるりと回ってみせる。
「すごいなぁ。みんな器用だねぇ」
「ああ。よく似合っている」
「皆さんのおかげですっ! ありがとうございました!」
アリサとニセルに応えるように、可愛らしくポーズを決めた後、再びロマニーは厨房へと戻っていった。いつもは
「ウチの
「街道沿いのッて……。まさか……」
「あっ……。あの時の、正義の道」
「ふふー! ミーたちの正義は、見事に継承されたのだー!」
ツリアンを出たエルスたちが林を抜け、ランベルトスへと向かう際。魔物と共に多くの木々を粉砕していた。結果的に、それが新たな〝通行路〟となったようだ。
「アンタらの仕業かい? 俺からも礼を言うぜ……。おかげさんで、ウチにも
*
「そっか。ツリアンにも人が増えるといいなぁ」
「とりあえずは戦争の心配も無さそうだしなッ!」
「ご主人様、つまるところ〝商人ギルドの
ミーファが疑問を口にするも、彼女の料理を
「あー、それな……。念のために
なぜか声を
「あの悪趣味な人形を大量に作って、世界中に売りさばくことだってさ……」
エルスが
まずは、より
「なるほどな。下手に兵力を持つよりも、恐ろしいかもしれんな」
「そうなのか……? 馬鹿らしくて、上手くいくとは思えねェけど……」
「ふっ……。まぁな」
ニセルは含みを持たせるように言い、静かにグラスを
*
「そういえば、次の目的地は決まったかい?」
「ああ、それなんだけどさ――」
エルスは食事を中断して食器を置き、仲間たちの顔を見回す。
「こっから東にあるっていう〝ガルマニア〟に行ってみてェなッて」
「おー! ミーは賛成なのだ! あの地からは強烈な悪の気配を感じるのだー!」
「あの〝魔王に滅ぼされた〟っていう国?」
アリサは二セルの顔を
彼女からの視線を受け、ニセルが静かに
「そうだ。今は近隣のトロントリアに、帝国の残党騎士たちが集まっている」
「じゃあ、魔王を?」
今度は一同の視線が、エルスへと集中する。
そんな仲間たちの顔を見回したあと、エルスが満面の笑みで握り拳を作る。
「ああッ! 倒しにいくぜッ!」
「そうか。それが、お前さんの目的だったな」
ニセルは「ふっ」と息を吐き、改めてエルスに向き直る。
「だが、ガルマニアは謎が多い。魔王が生み出した壁と結界によって、近づくことも出来んそうだ。下手をすれば、残党騎士団と戦闘になる可能性もあるぞ」
「上手く説明できねェけど、まだ
エルスは言いかけた言葉を慌てて修正する。
「じゃなくッて。……まだ
数十年前、魔王によって滅ぼされ、今なお〝闇〟の中に封印されているとされるガルマニア帝国。エルスは
「わかった。――かなり危険な旅になるな。充分な準備をしておこう」
「そうだね。わたしも次の冒険の前に〝準備したいもの〟があるし」
「ふふー! あの
エルスの熱意が通じ、仲間たちからの同意を得ることもできた。
そこで彼は立ち上がり、気合いを入れるべく拳を高々と突き上げる。
「ありがとな、みんなッ! よしッ、次の冒険はガルマニアに決定だ――ッ!」
新たなる目的地を定め、エルスたちの冒険は続く。
彼らの物語は、まだ始まったばかりなのだ――!
ミストリアンクエスト:第2章/ランベルトスの陰謀 【終わり】
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