第40話 冒険者のギルド
純白の石材と黄金と、
「そうですか。ようやく〝タイプ・リーランド〟の
「いやぁ、ワタシも自分の〝眼〟を疑いました! 魔王リーランドといえば、これまでの歴史の中でも、一番の暴君でしたからねぇ」
ルゥランが頭を
「十三年もの間、勇者ロイマンから新たな魔王実体が出現しなかったのは……」
「まさか〝
「ルゥラン……。
聖なる白布と貴金属で織られた法衣を
「しかし、その〝エルス〟という者。ヒュレインの身で、これほどまでの長期間にわたって〝
「それが、まったく! なぜ見落としてしまったのか、見当もつかないといった状況ですねぇ。――まぁ、ワタシの予想ですと〝女王の罪の証〟ではないかなと!」
「なんですって……?」
高い玉座に腰かけたまま、ミルセリアが再びルゥランを見上げる。すると彼はにこやかな笑みを浮かべたまま、彼女の〝銀色の髪〟を手でさした。
「銀髪だったんですよ。エルスさん!」
「では、その者はリスティリアの……?」
ミルセリアの問いに対し、ルゥランが笑顔で
「なるほど。彼女の子ならば、あり得ますね」
「しかしながら、あの〝烙印〟に
「不可能!――ですので、彼に〝闇魔法〟を教えてさしあげました! もしかすると、より〝活性化〟してしまう可能性もありますけどねぇ!」
「
ルゥランのペースに
「大丈夫ですよ! きっと〝神さま〟がついておられますから! はっはっは!」
「よもや〝神頼み〟に
「おやおや! アナタは神さまに一番近しい
「だからこそ――。救いは無いと
はるか古代の
「もはや我が身に
「ご
「再世神。かつての名もなき旅人。彼の活躍は、まだ〝私〟となる以前のこと」
「いやぁ、懐かしいですねぇ! 確か、ワタシがお会いした頃には〝アインス〟と名乗っておられましたっけ! ご立派になられたものです!」
ルゥランは笑みを浮かべながら、
「ほら、この〝
「
「ご名答!」
絵本をミルセリアに手渡し、ルゥランは小さく拍手をしてみせた。
*
ミルセリアが絵本に視線を落としていると、やがて一人の聖職者が〝旭日の間〟に現れ、
「失礼します。ミルセリアさま、〝
「わかりました。すぐに向かいます」
聖職者が下がったのを確認し、ミルセリアは〝絵本〟をルゥランに返却する。
「はぁ……。私が
「聖書ですよ! せ・い・しょ! ほら、ちゃんと〝神さま〟も出てますし!」
「口が減りませんね。――さて、もう行きますよ」
ルゥランの手を借りて玉座から降り、ミルセリアも〝旭日の間〟から退出する。そんな彼女の小さな姿を見送ったあと、ルゥランは静かに姿を消した。
*
ミルセリアとルゥランが会話を交わしていた頃――。激戦を終えて帰還したエルスたちは、ランベルトスの〝商人ギルド〟を訪れていた。
「でかしたのぢゃ! やってくれると信じておったぞ!」
商人ギルドの〝
「へへッ。こうやって成功したのは、仲間たちのおかげさ!」
「みんな頑張ったもんねぇ」
現在、左腕を損傷したニセルの
『素人にチョロチョロされても邪魔だからさ。早くお嬢の顔を見せてやりな!』
そう言ってエルスたちを追い出したドミナ。しかしながら、その言葉の
「あの〝
「そうだねぇ。本当によかった」
アリサは
「お待たせいたしました。――お父様、ただいま戻りましたわ」
エルスたちが報告を行なっていると、新しいドレスに着替えたクレオールが玉座の間へと姿を見せ、優雅な一礼をしてみせた。身に着けていた
「ををっ! 我が愛しのクレオールよ! さぁ、
「ひっ……!? おやめくださいなっ! まったく……!」
「ううっ、お気に入りの〝クレオール
「だっ……、誰が壱号ですか! 次に
全力で抗議を示すクレオールを
「やっぱ
「黙っておいたほうが、よさそうだねぇ」
そう
*
「ささっ! それはさておき、オヌシらに
シュセンドが合図の
「ありがとな、
「まだあるぞ! じつはもう一つ! とっておきの報酬があるのぢゃ!」
「えっ? なんだろ?」
アリサは自身の口元に指を当てながら、視線を天井へと向ける。
「ふふふ、驚くがよい。この度の素晴らしい働きに応えるため、
「へッ? 特命ギルド?」
首を
「それって、ただの雑用係なんじゃ?」
「いやいや! 特命ギルドはこのように、すぺしゃるな権力も持っておるのぢゃ! きっと諸君らの、これからの冒険にも役立つぞ!」
アリサの言葉を即座に否定し、シュセンドは分厚い紙束を取り出してみせる。
「へぇ? まッ、いいか! どのみち俺たちは世界中を冒険するつもりだしさ! 冒険者の
「決まりぢゃな! それに、この街に諸君らの〝ギルド商館〟も用意しておるぞ! このランベルトスを
「わかったッ! 色々と考えてくれてありがとな!」
エルスは別の人形が差し出ししてきた〝契約書〟にサインを記す。ぎこちない動きは相変わらずだが、これらの人形はすべて、メイド服を着用した姿になっていた。
その契約書と引き換えに、エルスは
「では
「んなっ!? なんぢゃと!?」
「ギルドである以上は、その運営に長けた者も必要でしょう? 別にランベルトスを出て行くわけではありませんし、時々は顔を見せますことよ」
「むうぅ、さすがはクレオール……。抜け目ないのぅ。仕方ないのぢゃ……」
いきなりのクレオールの宣言を受け、シュセンドは渋々ながらに承諾する。
「クレオール、本当にいいのか?」
「ええ。……どうか
クレオールは父を
「そういうことか……。わかったッ! よろしく頼むぜ!」
「クレオールさん、これからもよろしくねっ」
こうして〝冒険者のギルド〟を授かり、クレオールを仲間に加えたエルスたち。報告を終えたエルスとアリサは商人ギルドを
*
二人が商人ギルドの巨大な〝ギルド商館〟を出た直後――。
「んッ? これって、ロイマンが〝勇者〟になった時の……」
エルスは空を見上げながら、幼少時の
「ミルセリア大神殿からの
内容は、さきほど
「昔は気にもならなかったけどよ、あいつ
「
エルスの脳裏に、ボルモンク
『自らの特異性に自覚が無かったのですか?』
決して〝自覚〟が無かったわけではない。単純に、これまでのエルスにとっては気にするにも
「俺は……。いったい何者なんだ……?」
空に映る少女へ向けて、
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