第37話 シンギュラリティ
ボルモンク
損傷箇所を修復し、より
「なんかわからねェが、嫌な気分だぜ……。上手く説明できねェけどよ」
「ごめんなさい、
エルスの思考を
「大丈夫だ、何とかなるッて! そうだ、
エルスは右手に持っていた
この〝
「ありがとう。お借りするわね」
「ああッ! 白いウサギがついてるし、たぶん光魔法向けだと思うぜ」
以前にクレオールが話したとおり、白いウサギは光の
「ええ、確かに……。でも、エルスこそ丸腰になってしまうのでは……」
「大丈夫だ! へへッ、ちょっと試したいこともあるしなッ!」
心配そうなクレオールに対し、エルスは満面の笑みを浮かべてみせる。どうやら彼には今の彼女が知らないような、何らかの秘策があるようだ。
*
「セルフアクティベート・適用完了。
「ハッ! やれるモンならやってみやがれ! ヒュウゥ――」
これまでの〝棒立ち〟状態とは違い、
「ヴィスト――ォ!」
風の精霊魔法・ヴィストが発動し、放たれた風の刃が
「んな――ッ!? 馬鹿な、俺様のヴィストが!」
予想だにしない光景に
「
ジェイドに攻撃を宣言し、
「チィ――! フレイト――ォ!」
ジェイドは
「はぁあーッ!」
「どーん!」
敵の着地した瞬間を狙い、アリサとミーファが息を合わせた攻撃を繰り出す――が、
「そんなっ……!
「回避完了。想定サレタ動作の範囲内デス」
「ううー! あやつめ、細身になって動きやすくなっているのだー!」
ミーファの言う通り、明らかに
空間が
「下手に戦闘を長引かせるのは得策ではないな。また
交戦を続ける三人を
戦いをアリサたちに任せ、エルスとクレオールもニセルの側へと近づいてゆく。
「困りましたね……。何か、弱点でもあれば……」
「魔法による攻撃ならば、とも思ったが。それを防ぐ手段も身につけたようだ」
「アイツ、背中にも目があるみてェだしな……。もう不意打ちも効かねェ」
エルスは苦々しげに言い、奥歯と
「とにかく、今は――。ん? 待て、この声はザグドか?」
何かを言いかけたニセルだったが、不意にザグドの名を口にする。そして彼はエルスとクレオールに視線で合図を送るや、三人が静かに走り出した――。
*
ニセルたちが
「ザグド! 良かった、生きてたのかッ! でも
「シシッ……。こっ……、
「コア?」
ザグドの言った聞き慣れない単語に、エルスが思わず首を
「
「なるほどな。そういうことか」
ザグドの言葉の意味を理解したのか、ニセルが「ふっ」と息を
「あの〝お人形〟が入っていた? じゃあ、やはり
「セフィルド――!」
光魔法・セフィルドが発動し、
「やはり効きが良くありませんわね……。もう少しだけ我慢してくださいな」
魔族の血を引くゴブリン族には、光魔法による治療効果が薄い。クレオールは手を止めて呼吸を整えた後、再びザグドにセフィルドの魔法を
「申し訳ないのぜ、お嬢様……。あんな真似をしておきながら……」
「あの〝お人形〟は、
ザグドに杖を
「シシッ……。お見通しでしたか。面目ないのぜ……」
そう言った彼の大きな瞳から、大粒の涙が流れ落ちた。
*
「なぁ、ニセル。つまりは
「ああ、そうだ。あの巨体の
「へッ、なるほどな! やっと〝勝ち〟が見えてきたぜッ!」
エルスたちはクレオールにザグドを任せ、交戦中の仲間の
「問題は
「やっぱ、あのデケェ胴体のどッかだよな……。もう少し早く気づけてりゃ、
アリサら三人は互いに上手く連係しつつ、流れるように攻撃を繰り出し続けているものの――。あの形態へ変化して以降、まともに攻撃が当たっていない。
「アリサたちの攻撃が見切られた? いや、学習してやがンのか……」
「ああ。考えたくはないが、
ニセルの口にした単語に、エルスは恐怖にも似た不快感を覚える。あの生命体は必ず倒さなければならない。――彼にはそんな気がしていた。
「とにかく
「使うか? 武器が無いんだろう?」
ニセルは
「ありがとなッ! でも大丈夫だ! ちょっと試したい魔法があるんだ」
そう言ったエルスの
『これからの戦いに必要となるでしょう』
おそらくは彼に教わった
「切り札というわけか。わかった、ではオレは
「ああッ! 頼んだぜッ!」
軽く互いの手を叩き合い、ニセルはクレオールとザグドの
*
「はあっ……、はあっ……! わたしたちの攻撃、完全に読まれてるみたい」
「ハッ……! お嬢ちゃんたち、もうバテちまったか?」
「ふふー! 正義の力を
「
エルスは戦場へ駆けつけるなり、アリサとミーファの
「エルス! ありがと、でも無理しないでね?」
「大丈夫だ、おかげで
「おう、なんだ? 勝算でも見つかったのか?」
「ああッ! 実は――」
「おー! 承知したのだ!」
「ハッ!
「わかった! じゃあエルスは、なるべく温存しておいてね」
「無駄デス――」
活路を見出したことで、勝利の確信に燃えるエルスたち。しかし彼らに水を差すように、冷淡な声が四人の会話を
「
「へッ、どうした!?
「無駄デス。駄目デス。……エラー。
「うーん? なんだか怖がってるみたい?」
アリサは首を傾げながらも、剣を握る手は
「コワイ?
「ふふー! 正義は恐怖に屈しないのだ! ミーが悪を滅ぼすのだー!」
「
「へッ、簡単に滅ぼされるかよッ! さあ
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