第37話 シンギュラリティ
「ォオオオオォ――!」
高音の雄叫びをあげる闇色の巨人――
損傷を修復し、より
「なんかわからねェが、嫌な気分だぜ……。上手く説明できねェけどよ」
「すみません、力不足でした。せめて
エルスの思考を
「気にすンなッて!――そうだ、これ使ってくれよ。無事に帰ったあとに、返してくれりゃいいからさッ!」
エルスは右手に持っていた
「ありがとうございます。お借りしますわね」
「ああッ! 白いウサギがついてるし、たぶん光魔法向けだと思うぜ」
「ええ、確かに……。でも、エルスこそ丸腰になってしまうのでは……」
「大丈夫だ! ちょっと試したいこともあるしなッ!」
心配そうなクレオールに対し、エルスは満面の笑みを浮かべてみせた。
「攻撃開始。
「ハッ! 発声練習は終わりってか? ヒュウゥ――」
叫びを
「――ヴィストォ!」
風の精霊魔法・ヴィストが発動し、放たれた風の刃が
「なッ!? 馬鹿な、俺様のヴィストが!」
「
「チィ!――フレイトォ!」
ジェイドは高速移動魔法を発動し、攻撃を
「はぁあーッ!」
「どーん!」
敵の着地と同時に、アリサとミーファが息を合わせた攻撃を繰り出す!――が、
「そんなっ、避けられた!?」
「回避完了。想定内デス」
「ううー! 細身になって動きやすくなっているのだー!」
ミーファの言う通り、明らかに
「下手に戦闘を長引かせるのは得策ではないな。また
離れた位置で交戦を続ける三人を
「クソッ! 何か、弱点があれば……!」
「魔法による攻撃ならば――と思ったが、それを防ぐ手も身につけたようだ」
「あの野郎、背中にも目がついてるみてェだしな……。不意打ちも効かねェ」
エルスは悔しげに、拳へ力を込める。やや
「……むっ?――ザグドか?」
不意にニセルは、その名を口にする。左耳を指しながらエルスに目で合図をし、三人は静かに走り出した!
――辿り着いた壁際には、
「あッ、生きてたのかッ!
「シシッ……。こっ……
「コア?」
「
そう言ってザグドは、右腕で台座を示す。
「ふっ、なるほどな。そういうことか」
「あの『お人形』が入っていた? じゃあ、やはり
クレオールの額から、冷たい汗が流れ落ちる。彼女は小さく首を振り、慌てて呪文を唱え始めた。
「セフィルド――!」
治癒の光魔法・セフィルドが発動し、杖の先から光の帯が伸びる! 光はザグドの
「やはり効きが良くありませんわね……。少しだけ我慢してくださいな」
魔族の血を引くゴブリン族には、光魔法による治癒効果が薄い。クレオールは息を整え、再度魔法を放つ!
「申し訳ないのぜ、お嬢様……。あんな真似をしておきながら……」
「あの『お人形』は、
そう言ってクレオールは、ザグドに微笑む。
「シシッ……。お見通しでしたか。面目ないのぜ……」
彼の大きな瞳からは、再び涙が
「なぁ、ニセル。要は
「ああ、そうだ。あの巨体のどこかに、今も埋まっているんだろう」
「へッ、なるほどな! 勝機が見えたぜッ!」
クレオールにザグドを任せ、交戦中の仲間へ近寄る。
「問題は、その位置だな。サイズ的に、頭では無さそうだが……」
「やっぱ、あのデケェ胴体のどこかだよな……。もう少し早く気づけてりゃ、
アリサたちは上手く連係しつつ攻撃を繰り出しているものの、あの形態へ変化して以降、まともに攻撃が当たっていない。すべてを回避、または無効化されているのだ。
「見切られた――いや、学習してやがるのか……」
「ああ。考えたくはないが、
彼の言葉に、エルスは恐怖にも似た不快感を覚える。あの生命体は必ず倒さなければならない。そんな気がするのだ。
「とにかく、その
「使うか? 武器が無いんだろう?」
ニセルは、
「いや、大丈夫だ! まだ魔法があるしなッ!」
――ルゥランの言葉が、エルスの脳裏を
『これからの戦いに必要となるでしょう』
おそらく、彼に教わった
「ふっ。切り札というわけか。――わかった。オレは
「ああッ! 頼んだぜッ!」
二人は軽く手を叩き、エルスは戦場へ向けて駆けだした――!
「はあっ……はあっ……! わたしたちの攻撃、完全に読まれてるみたい」
「ハッ……! お嬢ちゃんたち、もうバテちまったか?」
「ふふー! 正義の力を
徐々に劣勢に追い込まれているアリサたち。お互いを
「
三人の元へ駆けつけたエルスは、アリサとミーファへの
「エルス! ありがと、無理しないでね?」
「少しは魔力も回復したしな! 引きつけてくれて、助かったぜ!」
「なんだ? 勝算でも見つかったか!?」
「おうッ! 実は――」
――エルスは攻撃を
「おー! 承知したのだ!」
「ハッ!
「わかった! エルスはなるべく、温存しておいてね!」
「……無駄デス」
勝利に燃える四人に水を差すように、冷淡な
「――
「へッ、どうした!?
「無駄デス。駄目デス。
「なんだか、怖がってるみたい?」
アリサは炎の剣を構えなおす。彼女の言うとおり、
「恐怖?――恐怖など、
「ふふー! 正義は恐怖に屈しないのだ! ミーが正義を叩き込んでやるのだー!」
「
「負けるかよッ! やれるモンなら、やってみろ!――皆ッ、最終決戦だッ!」
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