第36話 誰がための決戦か
「敵性存在、増加確認。排除シマス」
闇色をした一つ眼の巨人。創造主により
「
「エルス、目立たないように気をつけてねっ!」
念動波による攻撃を警戒し、アリサが彼に注意を
「ああッ!
「ふふー! いざとなったら、ミーの後ろに隠れるのだ!」
「おうッ、ありがとなッ!」
エルスは隣に立つクレオールに目配せをし、彼女と小さく
「あの目玉野郎の親玉というわけか! おい、ニセル! 足手まといになるなよ!?」
「ふっ、任せておけ。左腕まで喰われんようにな?」
「ハッ! 盗賊が何度も奪われてたまるかよ!――ヴィストォ!」
旧友と軽口を叩き合い、ジェイドが風の魔法を放つ。風の刃は
「攻撃ヲ確認。優先排除シマス」
「ハッ! そう来るだろうよ!」
ジェイドは軽いステップで刺突を
しかし
「攻撃ヲ確認。
挑発とも報告とも
「ハッハッハ! お前は相手にもされていないようだぞ?」
「そのようだな。――
「あっ。じゃあ、直接攻撃しても平気そう?」
「おそらくは。だが、何を仕掛けてくるかわからん」
以前に相対した〝
*
「ふっふー! 攻撃が効くなら、こっちのものなのだ! どーん!」
「わたしもッ! はあぁ――ッ!」
「えっ? 手ごたえが無い?」
異変に気づいたアリサは
「アリサッ! 大丈夫か!?」
「うんっ! でも、わたしの攻撃はすり抜けちゃうみたい」
「わかった! それならッ!」
エルスは
「レイリフォルス――ッ!」
炎の精霊魔法・レイリフォルスが発動し、アリサの剣が炎の魔法剣と化した。さらにエルスは呪文を唱え、今度はミーファへ魔法を掛ける。
「ミーファには
「おー! 助かるのだ、ご主人様! ではアリサ、共にゆくのだー!」
「うんっ!」
「警戒。被害、予測。――演算終了。迎撃ガ必要デス」
感情のない言葉を発し、
「もー、気持ち悪いッ!」
不規則な軌道で迫る触手の群れを斬り払い、アリサは
「あっ……!」
「ハッ! ヴィストォ――!」
しかし間一髪。ジェイドが放った風の魔法が、触手の群れを斬り飛ばす。そんな彼はアリサに対し、親指で敵をさしながら、ニヤリと口元を上げてみせた。
「ありがとっ、ジェイドさん! やぁあぁーッ!」
アリサは気合いを吐き、闇色の右脚を炎を帯びた剣で
「こっちはミーがもらったのだー! どーん!」
「おおッ! 二人とも、よくやったぜッ!」
エルスは巨人を見上げながら拳を
しかし両脚を失ったにも関わらず、
「危ねェ! 逃げろ二人とも!」
「ご主人様、アリサを頼むのだ!」
ミーファが唱えている呪文に気づき、エルスも
「リカレクト――ッ!」
闇の巨体が彼女らに
「アイツ、自分の
触手は周囲のみならず、内部の二人へ向けても伸ばされている。それらを武器で斬り払うも、
「ハッ! 俺様を忘れてもらっては困るな! ヴィストォ――!」
「ふっ――。今だ二人とも! 走れ!」
ジェイドの風魔法に続き、ニセルのクロスボウが触手の檻に風穴を開ける。ジェイドが
「危うく〝悪の触手〟の
「ありがと、みんな!」
闇の檻から抜け出した二人は礼を述べ、手にした
*
「今度は
しかし光は何事もなく闇の中へと吸い込まれ、周囲に
「あっ……。これ……、って……?」
「チッ……。効くのは〝精霊魔法〟だけッてことか……」
エルスは
「クレオール? 大丈夫か?」
「えっ……? ええ、大丈夫ですわ……。それよりも、エルスこそ顔色が……」
「ああ、俺は問題ねェ。ちょっと魔力を使いすぎちまっただけさ」
立て続けに魔法を放ったためか、エルスの額には
「対抗レベル上昇。破損部位ヲ修復シマス」
闇の塊は胴体部分を伸ばし、二股に分かれた下半分を〝脚〟として再構成する。さらに細い触手を束ねた〝腕〟の先端部分には、五本の〝指〟が形成されている。
頭部こそ〝
「ぐッ……! 仕切り直しッてことかッ……!」
「でも、さっきより小さいね。ちょっとは効いてるのかも」
「ハッ、上等よ!
エルスたちは互いの顔を
「修復完了。ソレデハ、戦闘ヲ再開イタシマショウ」
「へッ、望むところだッ! みんなッ、いくぜ――ッ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます