第32話 強き心に集いし者たち
「くっ……ジェイド!
背後からの
「ハッ! 俺様は受けた恨みは忘れん主義だ! 覚悟してもらうぞ、ゼニファー!」
――この声の主の
「ラヴィストォ――!」
風の精霊魔法・ラヴィストが発動し、質量ある風の塊が通路を
――広間には砕けた金属の破片と共に、満身創痍となったゼニファーが投げ出される……。
「がはっ……。やるじゃないのん……」
いたる
展開していた結界に加え、
「――でも、
「ハッ! その小賢しい結界さえ破れば、上等よ!」
通路から現れた男は緑色のコートを纏い、右の肩から先は緑色に塗装された
「あっ、やっぱり緑の人。ジェイドさんだっけ?」
見知った顔の登場に、思わずアリサから戦意が抜ける。
「久しいな、嬢ちゃん! そっちの小さいのは新入りか?――エルスはどうした?」
「ミーは正義の賞金稼ぎ・ミーファなのだ! ご主人様は卑劣な罠に
「――えっと、エルスは捕まっちゃって。この最低な人たちにっ……!」
ミーファの言葉を
「まったく、心外ですね。いずれ
ボルモンクは
「――彼の犠牲は、いわば新時代の第一歩。心配せずとも、後世の神話には名を刻んで差し上げますよ。尊き殉教者としてね!」
「ハッハッハ! コイツは大した悪役だ! 俺様は嫌いじゃない――」
ゆっくりとジェイドが手を叩くと、広間に鈍い金属音が響く。
「――が! つまり、おまえこそが俺様をハメた張本人ってことだな?」
「ならばどうだと言うのです?
「ごめんなさいねぇ……、
冷笑を浮かべるゼニファー。だが、顔面は
「まあ良いでしょう。結果的に貴重なデータが手に入りました。セフィルド――!」
治癒の光魔法・セフィルドが発動し、ボルモンクの杖から帯状の光が伸びる! 治癒の光は包帯のようにゼニファーを包み、瞬く間に彼女の傷を癒した!
「ふむ、ふむ。
「ありがと、
「ハッ!
「そうよん? だからこそ、
「――そこまでです。ゼニファー」
「彼らの役目はここで終わる。――そうですね、その
「ペラペラと熱心なことだな! 貧弱な二人と悪趣味な目玉野郎どもだけで、この俺様を
「この場のモノだけがすべてではないと言ったはずです。――ああ、失礼。
「あれだけ倒したのに……。いったい
アリサは声を荒げる。明らかに、これまでの彼女とは
「彼らは新人類として生まれ変わったのです。
「うううー! まさに極悪非道! 諸悪の根源め、覚悟するのだー!」
「ええ、そうですね。そろそろ頃合でしょう」
ボルモンクは口元を上げ、背後の
――すると、聞き慣れない音と共に、その裏側からゴブリン族のザグドが現れた!
「シシシッ! これは賑やかですのぜ。――準備完了です、博士」
「ヴィ・アーン。逃げた素材どもの
「いいえ、そちらの方は……。イシシッ。申し訳ないのぜ」
「まあ良いでしょう。これから最後の段階へ入るところです」
ボルモンクは再び、クレオールが囚われた
「シシッ! 博士……。お約束通り、どうかクレオール様は……」
「何ですか? 自らの立場くらいは
「シシッ……。失礼いたしましたのぜ……」
「
アリサは怒りに震える眼で、ボルモンクを
「ええ。ご覧の通り、もう完全に
「では実験開始です! ザグド、すべての
「承知しましたのぜ……」
「おおっと! させるかよ!」
ジェイドは右手に
「――フラミト!」
寸前で発動したゼニファーの魔法が、ジェイドの行動を阻害した!
「バレバレよん? 昔の
「何が仲間だ! お前など、裏切り者ですら無いわ!」
水の触手に絡まれながら、ジェイドは一心不乱にゼニファーに恨み言を投げ続ける! アリサとミーファにも、部屋中の魔導兵が迫りつつあった――!
「もう茶番は結構。ザグド、早くしなさい!」
「いえ、それが妙なのぜ……。すべての
「なんですって? この
「――ヘッ! 残念だったなッ! あのガラス玉の中身なら、もう全部ブッ壊しちまッたぜ!」
その待ちわびた声に、アリサは即座に振り返る!
「エルスっ――!」
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