第29話 アリサの決意
不気味な研究所での戦い。ボルモンク
「何だッ! 次は何を始めようッてんだ!?」
「さぁて? クックック……」
眼前で身構えるエルスを無視し、ボルモンクは身振りでゼニファーに合図をする。すると
「ふふ、さすがは
水の精霊魔法・フラミトが発動し、エルスの足元に
「しまッ!? これは
エルスは
「あぶないっ!」
アリサは素早く剣を構え、エルスを
「はあぁ――っ!」
「ウォオオン……!
刃が通らなかったことで、アリサは敵から離れて間合いを取る。相手の力を利用した一撃さえも、有効打にはなりえない。頭部の〝目玉〟を狙うことも考えたが、かつて
「
「ああッ、たぶんな……! 下手に試すのはやめたほうがよさそうだッ……」
まずはゼニファーから受けた、この
「カレクト――ッ!」
土の精霊魔法・カレクトが発動し、エルスの
「おー! ご主人様、よくやったのだー!」
「へッ、ミーファと戦ったおかげさ!」
離れた位置での交戦を続けながら、ミーファが
「よしッ、アリサ! コイツで反撃だッ!」
エルスは右手に
「レイリフォルス――ッ!」
炎の精霊魔法・レイリフォルスが発動し、アリサの武器が炎の魔法剣と化した。
「ありがとっ――! やあぁーっ!」
剣の性能にアリサの腕力、さらにエルスの魔力が合わさったことにより、魔導兵の鋼鉄の
「ルォオオ……! シャッ……。ダウ……」
断面から大量の
「はあぁーっ!」
「ゥルオォォン……! ダメッ……。ジジッ……!」
「おお、おお! 実に素晴らしい!」
目の前の戦いを
*
「うッ……。数は減ったけど、瘴気のせいで削られちまったな……!」
エルスは
精霊の力を秘めるエルスは常人と違い、マナの減少と共に身体能力が
「おや? 不調のようですね? 今です、彼を捕らえなさい!」
直後、魔導兵らが
「ぁがあッ……!? うッ……、動けねェ……ッ!」
得体の知れない力によって
魔導兵らに見つめられたまま、エルスはゆっくりと空中をスライドし、ボルモンクの立つ〝大広間の中央〟へと運ばれてゆく。
「エルスっ!」
「だめよん、お
エルスの救出に向かおうとするアリサを、ゼニファーが魔法で
「にッ……、逃げろッ。アリサッ……!」
「こっちは大丈夫っ! ちょっと
とはいえアリサは決定打を失ったうえに、動作も制限されている。彼女は防戦一方となりつつも、どうにか魔導兵らの攻撃を
*
「ふぅむ。どれどれ」
空中で
「どんな
本人の言うとおり、かつては魔法学校で教師をしていた経験があるのだろう。
「つまり、これは天性の才能。まさか複数の
「さっきからッ……! あんたは何を言ってやがるッ……!」
「ほう? 自らの〝
ボルモンクはエルスの
「
クレオールが閉じ込められた
*
「へッ! よくわからねェけど、あんたの好きにされてたまるかよッ!」
エルスは立ち上がり、
「あッ……? へえぇェ――ッ!?」
「エルスっ――!?」
アリサが手を伸ばしながら駆け出すも、その手が届くはずもなく。落とし穴は獲物を
「ご主人様! いま助けるのだ!」
ミーファはその場で
「エルスっ……! えっ……?」
駆け寄ったアリサが穴の底を覗き込むも、そこにエルスの姿はなく。中には砕けた岩石や、金属の残骸があるのみだった。
*
「ふぅ、ミーファ様が
「むー! ならば、すぐに追いかけるのだ!」
「やれ、やれ。その手段を今、
「エルスを捕まえてどうする気っ!?」
ミーファとボルモンクの問答を
「まずは研究を終え、その後は〝素材〟にします。我輩の野望を叶えるためのね!」
「どういうことっ!?」
剣を構えることも忘れ、アリサがボルモンクに対して怒鳴り声を
「偉大なる古き神々が
「そんなの、エルスと関係ないじゃないっ!」
アリサはボルモンクに感情的な言葉をぶつけ、彼の言葉を力いっぱいに否定する。そんな
「ほう? では、彼の正体は何だと?」
「しらっ……、どうでもいいもんっ! エルスはエルスだしっ!」
「知らないようですね? どうです?
エルスは〝普通の人間族〟ではない。
ファスティアでの一件でなんとなく〝予想〟はついてはいるが、まだアリサには〝確信〟が無かった。いくら彼女が知りたくとも、知っている者は
「まあ、研究が終われば教えてさしあげますよ。生き残ることが可能ならば!」
「もう魔導兵も残り二体なのだ!
「おや、おや。ここに配備されているものなど、ほんの一部に過ぎません」
ボルモンクは余裕の笑みを浮かべ、大きく両手を叩いてみせる。すると大広間の左右にある通路から、さらなる
「エルス……。こんなことしてる場合じゃないのにっ……!」
「大丈夫なのだ! ご主人さまは強いのだ! 今は戦いを切り抜けるのだー!」
「ミーファちゃん……。うん……、そうだねっ……!」
ミーファの言葉に
「ほう、まだ戦意を失いませんか! それでは、実験の続きといきましょう!」
「もうッ……。絶対に許さないからね――ッ!」
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