第51話 暴風警報
「エルス!――大丈夫? いま、
ニセルとジェイドが一騎打ちをしている隙に、アリサはエルスの元へと駆け寄る。彼は全身に切り傷や打撲を負っているが、幸い、深い傷は無さそうだ。
「イテテ……なんて奴だ。あの風のせいで、何も出来ねェ……」
「いいなぁ。どうやったら、あんなに魔法撃てるんだろ?――セフィドっ!」
ドワーフ族と人間族の混血であるブリガンド族は、高い身体能力を持つ代わりに
「ふぅ……。ちょっと休憩しなきゃだ。待ってね――」
アリサはポニーテールを
「――はいっ、とりあえず。痛いのは我慢してね?」
「そこまでしなくても……。ッていうか、おまえの方が痛いだろうしよ」
アリサの首元へ目を
「大丈夫だよ――。中途半端に治すと、逆に痛くなっちゃうから」
「そうか……。無理はしないでくれよ?――ありがとな」
アリサは小さく頷き、
「とにかく、ジェイドの動きを止めねェとだ……」
風の魔法に対しては、炎の魔法が有効だ。しかし、ニセルにも警告された通り、閉鎖された洞窟内で使うには危険を伴う。
「……仕方ねェ、水で試すか」
エルスは水の精霊魔法・ミュゼルの呪文を唱え、距離を取りつつジェイドの側面へ回り込む。そして、二人の間合いが離れた瞬間、ジェイドに手をかざす――!
――その瞬間! ジェイドがこちらへ鋭い視線を向けた!
「ハッ! サイフォ――ッ!」
風の精霊魔法・サイフォが発動し、エルスの周囲の〝風〟が動きを止める!
エルスは口を動かすが、一切の声が出ない――風の精霊に
「そう何度も同じ手は食わんさ!――少年よ!」
ジェイドは、
「ええい、しつこい野郎だ!――ヴィストォ!」
ジェイドは彼の攻撃を体術で
ニセルも瞬時に側転し、飛来する魔法を素早く
「ハッ! いつまで
「ふっ。しつこいのは、お互い様さ」
ニセルはニヤリと口元を上げ、
次々と襲い来る疾風を、延々と避け続けた――!
「――ソッ! ジェイドの奴、詠唱なしで撃ってるッてのか!?」
風の
「いい加減に観念しろ! ニセラァ!」
ジェイドは怨念を込め、ニセルに向かって左腕を伸ばす――!
「エンギル――っ!」
――その腕に、アリサが発動した
しかし、アリサの放った光輪は――ジェイドの体に触れた途端、
「ハッハッハッ、お嬢ちゃん!――人類は皆、光の神・ミスルトの加護を受けている。ゆえに、光魔法の攻撃は効かんのよ!」
「あっ、そうなんだ?――ありがとうございますっ」
勝ち誇るように言い放ったジェイド対し――
アリサは
「ハッ!……礼には及ばんさ」
ジェイドは緑色の前髪を整え、やや
「あッ! その指輪――精霊石と一緒に、呪文を刻んでやがるなッ!?」
エルスは昨日の店番で見かけた銀のナイフを思い出した。ジェイドは
よく見ると――
彼の両手にたくさん
「正解だ、少年! だが――」
ジェイドはコートのポケットに手を入れる。
「――気づいたところで同じことよ! さあ、第二ラウンドといこうか!」
かざした彼の両手には、再び指輪が輝いていた――!
「ぐッ……! まだ持ってんのかよ――ッ!」
「よう、ジェイド。その前に――」
「何だナセラ!? お前の話なんか、聞くつもりは無いぞ!」
「――ふっ、なら
ニセルが指さした先では――頭にバンダナを巻いた小太りの男が通路の
「マーカスか。ゼニファーの奴はどうした!」
「い、いや……。それがッスね、ボス。言われた通り
「何だ?――落ち着け!」
「――まものッ! 魔物を呼び出し始めたんスよぉー!」
「なッ……? 何だとォ――!?」
手下・マーカスの話を聞くや否や――ようやくの平穏が訪れたかに思われた室内に、またしてもジェイドの怒号が響き渡った――!
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