第24話 その名を知るもの
ドミナの工房にある
そんな彼の〝左耳〟と〝左眼〟を
「ふっ。どうやら、ギルドで動きがあったようだ」
「
ケーブルの先に接続された、
「ああ。鮮明とは言えないが。だが、
「耳の良さは、師匠のお
ドミナは作業の手を止め、ニセルの頭から装置を取り外す。彼女は
「負担の方はどうだい? 気分は?」
「まっ、あまり良くはないな。
ニセルは右手で両目を
「ははっ、それはすまなかったね」
「だが、情報は充分だ。連中は、クレオール
ニセルの言葉に、ドミナは
「お嬢を? まさか、やったのは……?」
「ああ、ザグドだ。今は〝
「そうかい……。あいつ、なんてことを」
ドミナは深い
「明日――。エルスたちを誘い出し、成果の〝お
「ボルモンク
自問のようなドミナの問いに対し、ニセルが「ふっ」と息を吐く。
「さあな。だが、今のところは
「言動? そんなモンでわかるってのかい?」
手元に視線を集中させたまま、ドミナが小さく首を
「ああ、ファスティアで会った。――オレのことを『マークスター』と呼ぶ奴にな」
「そういえば、ニセル君の名前を
おぼろげにしか思い出すことのできぬ、存在したはずの師の記憶。彼女の声が頭にフラッシュバックしているのか、ドミナは険しい表情をする。
「そうだ。あとは、
「太陽?」
「どうやら〝
「ああ……。そういえば……」
ドミナは天井に設置された、巨大な
「聞き覚えがあったような気がするね。……なんとなくだけどさ」
そう言って大きく
「時々、頭の中に
「懐かしいな」
「やめとくれ。ニセル君は
照れた様子のドミナに対し、ニセルは「ふっ」と息を
「すまない。――だが、急いだほうがいいかもしれんな」
「もう
「ああ。……オレは
ニセルからの回答に、ドミナは残念そうに頭を
「そうかい? まぁ、
「む? どういうことだ?」
その疑問には答えず、ドミナは黙々と作業を再開させた。
*
一方、酒場から二階の宿へと戻ったエルスたち。エルスはアリサと同じ寝室へと入り、
「まさか、街の下に洞窟があったなんてな! 今度ゆっくり探索してみたいぜ」
「うん。そうだね」
鏡の前で長い髪を
「そういや、あの地下の〝変な部屋〟はなんだったんだろうな?」
「うん。そうだね」
「どうしたんだ? さっきから。――
そう言ってエルスが振り返ると、彼のベッドでうずくまるように横になっている、アリサの姿が目に入った。彼女は真横を向いたまま、どこか遠い目をしている。
「なんだ? 今日は最初から
「だって、わたしの場所だもん……」
アリサは
「わかってるッて。それじゃ、寝ようぜ! おやすみ、アリサ」
「うん。おやすみ、エルス」
疲労に加えて、珍しく頭を使いすぎたためか――。いつもの就寝の挨拶を交わすや、エルスが早くも寝息をたてはじめる。
「さみしかったんだからね……」
アリサは彼の腕にしがみつき、そう小さく
*
眠りに就いたエルスは、夢を見た。
真っ暗な〝闇〟が支配する空間。そこに、ただ独り。
『またか……』
これまでにも、何度か見たような記憶はある。
そして、これから〝何が起きるのか〟も理解できる。
そして案の定――。エルスの目の前に、焼け焦げた
『やっと会えるよ……』
『はぁッ?
『いつでも力を貸してあげる……』
『いらねェッて言ってんだろッ! 大体、おまえは誰だッ!?』
暗闇の空間に浮かびながら、エルスが
『僕は、エルス……』
『なッ!? エルスは俺だッ!』
エルスは叫び、拳を握りしめようとする――が、どうにも体が動かない。そんな彼を
その少年の額には〝
『それはッ……。まさか、魔王メルギアスの……!?』
『リーランド……。アインス……』
『あぁ!? 何を言って……』
『いまは……。エルスだ……』
少年は再度そう名乗り、エルスに向かって手を伸ばす。そして、こちらを向いたまま後方へと下がり、そのまま闇の中へと消えてしまった。
『おいッ! 待ちやがれッ!――クソッ、まだ動けねェ……!』
エルスは闇の中で独り、必死に
しかし、
*
次にエルスの意識が戻った時には、すでに次の朝が訪れていた。
いつも通りに床で目覚めたエルスだったが、
「わわぁ……。ご主人様ぁ……。らぁめなのだぁ……」
「へッ? ミーファ……!? ッていうか、降りろッ……、てッ……!」
エルスは寝巻き姿のミーファをなんとか
「ふぅ……。さすがに死んじまうッ……。ぐげッ!」
エルスは手早く首の関節を戻し、
「あれは……。やっぱ、魔王……。なのか……?」
鏡に映る顔を眺め、エルスが前髪をかき上げるも――。当然ながら自身の額に、不気味な〝
あのまま夢から覚めなければ、どうなっていたのだろうか。エルスは何気なく、二人の少女が眠っているベッドに目を
「まさか……。アリサたちは、俺のために……?」
彼女らの
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