第31話 交わる真相
いったい〝はじまりの遺跡〟で、何が起こっていたのか?
昨日、エルスたちが
そして自警団による夜を徹しての調査結果などを、カダンは丁寧に説明する。
自警団の魔術士・ザインが騒動の
最後に、すでに彼は〝この世に存在していないこと〟を、カダンは二人に話した。
「ザインさんって、あの〝びゅーん〟ってしてくれた人ですよね?」
「そうです。高度な魔法の使い手である彼の入団を、我らも喜んでいたのですけどね……」
カダンは悲しそうに口を曲げながら、昨日と変わらずボサボサの頭を
どうやらこれが、彼の標準的な髪型のようだ。
「ザインの正体は盗賊。それも近ごろ我々の手を
「とッ、盗賊だってッ!?」
「はい……。ザインの飲み仲間の話では、彼は酒が入ると人が変わったかのように、自らの〝武勇伝〟を
そうした
それらの事実を話し、カダンは申し訳なさそうに頭を下げた。
「でもあの人って、わたしたちと一緒に遺跡に向かったはずじゃ?」
「ええ。どうやら一度現場へ行ったあとに魔法で街へ戻り、我々と合流したようです。これで〝風の
あくまでも状況証拠ではあるが――自警団所属の魔術士らの調査により『術者
「アイツはなんだッて、そんな面倒なことを?」
「今となっては……。もう……本人は存在しませんので……」
「団長さん……」
ザインをよほど信頼していたのか。カダンの表情は、見るからに暗い。
「……さて、本題です。遺跡で出会った
「ああ、知ってる……。実は、それを売ったのが俺なんだ……。だから……」
「ええ、そのようですな! なんとかファスティアを
カダンは笑いながら、バッグから取り出した紙束を誇らしげに
それは彼ら自警団員の、徹夜によって
「やっぱり……。俺のせいで店を……?」
「エルス殿、何か勘違いをされておりませんか? あの店は、昨日いっぱいで
「えッ? 閉店……?」
カダンの言葉に、エルスは冒険バッグから、昨日の依頼状を取り出した。
そしてアリサと共に、
「あッ。『店番求む 閉店打ち合わせにつき 至急』ッて書いてある……」
「もー。エルス、報酬の
「もしかしておまえ、知ってたのか……?」
エルスはアリサに疑いの視線を向けるが、彼女は
「ううん、知らない。だってエルス、すぐに隠しちゃったもん」
「そういやそうだった……。ははッ、朝イチで眠かったし……。報酬だけを見て、急いで
エルスがそう言うなり、アリサとカダンからは呆れたような
その後一息を置き、カダンは話を〝杖〟に戻した。
「――その打ち合わせの中で。つまりエルス殿が店番をしていた間に、例の〝杖〟も含めて、店を引き払う交渉をしていたようですな」
「そういえば『全然売れないから処分するつもりだった』ッて言ってたっけ」
「ええ。どうも その引き取り業者も、
「あっ、それって……」
アリサが気づいたように言うと、カダンは大きく
「おそらくは、ファスティアに
杖を購入した商人は、ランベルトス行きの
「例の異変が起きる少し前――ちょうど〝霧〟が出ていた頃ですな。例の隊商が盗賊に襲われ、積荷が奪われました。その襲った連中こそが、
「なるほど……。俺が酒場で、ラァテルと
エルスの脳裏に昨日の敗北の映像がよぎる。思えば彼は冒険者になってからというもの、自身が納得のいく成果を挙げられていない。
「なぁ団長、その盗賊ッてのは強いのか?」
「ハハッ。少なくとも、この辺りの魔物よりは間違いなく手強いですな! それに
「風か……。そういや、ザインも風と契約してたッけ……」
人類が〝精霊魔法〟を使うためには
「連中には風の魔法を扱える幹部が、少なくとも三人は居たようです。一人はジェイド、もう一人がザイン……。あとの一人は、不明ですな」
「そうか。じゃあ、俺たちに任せてくれよ!」
「ああ! それには
カダンにあっさりと申し出を断られ、エルスは一歩、彼の前へと身を乗りだす。
「ええッ、なんだよッ!? そこは任せてくれてもいいじゃねェか!」
「そ……そう言われましても……。ううむ……」
メラメラとやる気を
カダンは困惑の表情を浮かべながら、建物の方を振り返った。
「おい、聞いていただろう? どうする……? ニセル……」
すると扉の
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