第21話 闇の夜空に封じられし心
自警団からの
「私はもう少し、ここで治療を手伝ってから帰るわね。あとでエルスに渡したい物があるの。宿で待っててちょうだい?」
リリィナは
魔法を使うことで消耗した魔力は、周囲の
「そうか……。考えてみたら、今から歩いて帰るンだよな……」
「来る時は魔法で〝びゅーん〟だったもんね。エルス、あれできない?」
「一応やり方は見てたし、やれなくはねェけどよ。アレは万全だったとしても、今の俺にはキツイぞ……」
「仕方ないわね。――はい、これ。エルスなら使えるわね?」
リリィナは
「げッ!? それは、風の
「安心なさい。属性は風に限定されているし、間違っても暴走しないわ」
「やったぁ。じゃあエルス、早く帰って美味しい物食べよう?」
「わッ、わかったよ! チクショウ……この二人が
エルスは渋々ながら、風の
「お二方! 今から、お帰りですかな?」
帰り
「ああッ! 団長は、まだ残ンのか?」
「この異変の調査が、我らの任務ですので! 今から現場へ行き、
カダンは手にした二本の棒切れを、
「そうそう、大事なことを忘れるところでした! 報酬は明日お支払いしますので、自警団本部までご足労頂けると幸いです!」
「わかった! じゃあ団長も気をつけてなッ!」
二人にアルティリア制式の敬礼を決め、カダンは数人の団員らと共に扉の中へと入っていった。魔物の
カダンらを見送ったエルスは、何か引っかかるものを感じたのだが――。
まだその正体を、ハッキリとは
「エルス、さっき団長さんが持ってたのって、なんか見たことあるような?」
「うーん……。なんか、俺もそんな気が……」
「とりあえず、わたしたちも帰ろっか。お腹
「だなッ!――ッて、まだ俺には
エルスは深く息をを吐き、リリィナから手渡された小さな石を取り出した。これは術者の契約した精霊の力を増幅する、いわば〝
魔法を扱う者にとっては極めて貴重な品である
遺跡から出たエルスは
「失敗しても恨まないでくれよ……?」
「大丈夫だよ。お姉ちゃんが危ないもの渡すとは思えないし」
「……リリィナのヤツ、俺とアリサじゃ態度を変えやがンだよ……」
エルスは風の精霊石を握りしめ、静かに石へと念を込める。続けて増幅の言葉と風の呪文を唱えると――
「我が風の力よ、
風の精霊魔法・マフレイトが発動し、エルスの足元に緑色の魔法陣が浮かぶ。
同時に風の結界が二人を包み込み、わずかに地面から浮上させた。
そして二人を乗せた結界はファスティアの方角へ向け、高速で飛行を開始する!
「わぁ! すごいねエルスっ――速い速いっ!」
高速で過ぎ去って行く景色を
「あ……危ねェから、あんまり話しかけンなよッ!? 今日見たばっかの高位魔法を、いきなり使ってンだから……」
震えるエルスの腰にしがみつきながら、アリサは暗黒の夜空を見上げる。
「よく見ると
「いッ……いつも、見てるじゃねェかッ……」
「うん。でも、いつもはゆっくりと見てられないから。今は特別なの」
「よッ……よくわからねェけどッ……。危ねェから……、黙ってしがみついてろよなッ……!」
アリサは小さく「うん」と
そんな彼女の眼から涙が
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